短い怖い話 （怖い話、ホラー、短編集）

おかしな顔

　



　高校生の時。

　塾の帰り道。21時過ぎに雨の中を1人歩いていた。
　歩道橋を渡る時にすれ違った人の顔に違和感を覚えた。多分男の人。おじさんってほどの年齢でもなさそうだった。

　普通の人…
　
　でも何かが、おかしかった。

　ちょっと考えた。
　顔になんだか違和感があることに気がついた。


　そうか、わかったぞ。
　両目が上下逆さまなんだ。
　

　気がついた時には、おじさんから10メートルくらい離れていた。歩道橋の上の直線部分。

　僕は、振り向く。
　
　相手も振り向く。


　にたり。こちらを見て笑っていた。
　上下逆さまの目を細めて。

　口がぱくぱく動いた。


　「よ・く・わ・か・っ・た・ね」