短い怖い話 （怖い話、ホラー、短編集）

彼女

　
　家に帰ると彼女が今日もアパートの玄関で迎えてくれた。


　「お帰りなさい！！」

　元気な声に癒された。
　「ただいま！」

　「ご飯できてるよ！」


　赤のチェックのエプロンがとっても似合う。素敵だ。

　長い髪を後ろに束ねて服の袖を肘まで折り曲げている。

　何かいい香りがする。


　帰ってくるまで、料理を作ってくれてたんだろう。
　

　着替えもせずに、すぐにご飯を食べた。
　豚の生姜焼きに味噌汁。それから、ほうれん草のおひたしだ。

　「美味しいね」

　そう言って彼女の料理を褒めてみた。

　「でしょう！おかわりもあるよ！」

　にんまり笑った彼女は、お米と生姜焼きのおかわりを台所から持ってきてくれた。

　ご飯を食べ終わった後、すぐにお風呂に入った。


　

　風呂場のすりガラスを何の考えもなしに開ける。







　すると天井から彼女がぶら下がっていた。





　あ、いつものやつだった…

　




　ハッとした。


　またあいつに見せられた。

　いつもの幻。



　私は、25歳の独身女性



料理上手な彼女なんていない。