短い怖い話 （怖い話、ホラー、短編集）

アパートの物音

　二階建てのアパートに住んでる。
　ちなみに103号室だ。アパートは、そこそこ古い。築30年は超えてる。だから、結構物音とか響く。



　結構空室が多い。あと、住んでるのは大体高齢者とかでその人達はあんまり家にいないっぽい。介護施設のっぽい車が高齢者をよく連れて行くから多分デイサービス的なのに通ってるんだと思う。逆に俺は、在宅の仕事だからいつも家にいる。






　よく上の階に住んでるおじさんは、物を落とす。たまにアパートに響き渡りそうなズドーンってすごい音がする。
　音がしてしばらくすると、おじさんが「すみません！ちょっと片づけしてて棚を倒しちゃったんです。」って謝りにくる。
　俺は、あんまり音とか気にしないから「大丈夫ですよ。」って言って許す。それに、おじさんはいい人でアパートに住んでる若者は俺だけなんでよくお菓子とかくれる。なんでも、息子さんが俺と同じ歳らしい。だから、俺にはめっちゃ優しい。




　ある日、またズドーンってすごい音がした。いつもは、10分後くらいにおじさんが謝りにくるけど今日は来なかった。
　普通なら赤の他人だし気にならないけれど、おじさんは仲良くしてくれてたし心配だから上の階に様子を見に行った。おじさんの部屋に行くのは初めてのことだ。

　おじさんは元気だった。謝りに行けなくてごめんって言われた。

　おじさんと話してて部屋がおかしいことに気がついた。1ルームの部屋は玄関を開けると部屋全体が見渡せる作りなんだけどおじさんの部屋には何もなかった。古いアパートなのでクローゼットなんか一切ないのに。物が何にもないんだ。

　おじさん、いつも何を落としてるんだ？