短い怖い話 （怖い話、ホラー、短編集）

あれは人間じゃ無いと思うんだ

　通勤で田舎道を車で通っていた。


　会社に行く時には左手にはみかん畑、右手には山。そんな感じの片側一車線の道だ。
　
　仕事が早番で朝7時前にその道を通っていた。

　一台も車がいない道。しかもまだ薄暗い。


　そんな中を、腰がかなり曲がったお婆さんがのっしのっしと歩いているのが見えた。足を重そうに運びながら手を後ろに突き出すような変な姿勢。田舎ではよくある光景。
　田舎のお婆さんがよくしてるほっかむりにエプロンという格好だ。
　
まぁそれは不思議じゃ無い。近くに民家も点々とあるし。


　でも、なんかおかしい。
まず、お婆さんなのになんか歩くのがとても早い。走ってるのか？いや、それにしてもこの動きで？早すぎる…
　

　歩くと同時に頭がおかしな動きをしている。

　右足を出せば頭がぐりんって感じで右肩まで転がっている。左足を出せばまた、ぐりんって。
　頭、動きすぎじゃ無いか？



　段々、おばあさんに近くなってきた。



　頭がぐりん、ぐりんと動く。違和感しかない。


　お婆さんに近づいた時、車のスピードを落とした。

　と言っても、車なのでそんなにちゃんと見えない。

　
　でも、明らかに頭が首から離れてぐりん、ぐりんって肩の上を転がっている。


　追い越してすぐにルームミラーを覗いた。


　ぐりん、ぐりん、ぐりん、ぐりん、ぼとん。



　頭が地面に落ちたのが見えた。


　あれは、人間じゃないと思うんだ。