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廃墟に取り憑かれた友人
しおりを挟む英子と同じ会社に入社した山田くんから、英子の様子が最近おかしいって連絡があった。
英子は、私と小学校から付き合いのある親友で、山田くんは英子と私の高校の同級生です。
仲の良かった私たち。2人はたまたま、地元の企業に就職して、私は隣町の美容専門学校に通っている。
高校を卒業して半年くらいがたった。
英子と私と山田くんはお互いに連絡を取り合っていた。なかなか時間が合わないので会ってはいなかったけれど。
山田くんから英子の様子がおかしいと連絡があった時、私は就職して英子は疲れているんじゃないかと思った。山田くんに、具体的に栄子のどこがおかしいのか、と尋ねても返ってくる返答は「なんとなくおかしい気がする…。具体的にはわからない」と言う曖昧なものだった。
LINEや電話をする限りでは、英子の様子におかしいところは無い。だから、山田くんの思い過ごしだと思っていた。私は、英子の異変に気がつかなかった。
でも、しばらくして私も英子の異変になんとなく気がつき始めた。英子から送られてくる自撮りの写真が、カフェや自宅だったのが見知らぬコンクリートの壁の前で撮られた写真が送られてくるようになった。(しかも結構薄暗くて顔がはっきり写っていない写真)
私は、山田くんに英子から送られてくるおかしな自撮り写真を転送した。すると、英子は山田くんにも似たような写真を送っていることがわかった。
英子は、最近キャンプにハマっており、山田くん曰くここは英語がよく通っているキャンプ場であるらしい。確かに私も英子から最近キャンプにはまっていると聞いたことがあった。
確か、そのキャンプ場にイケメンの係員働いているらしい。英子はそのイケメンに会うためにもうしょっちゅうキャンプに通っていると、少し前に話していた。
こんな薄暗い場所がキャンプ場…? 私はあんまりキャンプに詳しくないのであまりその事には、突っ込まないことにした。
やがて高校を卒業して間も無く一年が経とうとしていた頃、英子が失踪した知らせを山田くんから受けた。
2日前から無断欠勤、音信不通、実家にも戻っていないので英子の両親が警察に届けたそうだ。
山田くんからの連絡に私は驚いた。しかしなんとなく英子の居場所を知っている気がした。それは山田くんも同じだったようで、山田くんは私に一緒に英子が通っているキャンプ場に猫を探しに行かないかと誘われた。私はもちろん了承した。
山田くんは、英子からキャンプ場の場所なんとなくだが聞いたことがあるらしい。私は、山田くんから知らせを受けた翌日に山田くんの家を訪ねた。山田くんは、昨日のうちにGoogle マップで近くの山の中にキャンプ場らしい建物を見つけたと言う。
私と山田くんは、山田くんの運転する車でそのキャンプ場に向かうことにした。
キャンプ場まで車で20分位で着いた。
山道の途中にそのキャンプ場はあった。
いや、とてもキャンプ場とは言えないものだった。
車を降りた私は、自分の目を疑った。
そこにはキャンプ場ではなく、もともとは体育館か何かの建物らしいコンクリート造りの廃墟があった。
外から見ても結構広い。昼間なので意外と明るくはあるが、夜は街灯がないのできっと周りは見えないだろう。
「中も入るか…。」
山田くんがつぶやいた。私は絶対に嫌だったが、でもここに1人で取り残されるのも嫌なので何も言わずに山田くんの後についていくことにした。
正面の窓から懐中電灯を持った山田くんが中に入っていった。
中は、思っていた以上に明るくて懐中電灯なしでも十分に周りが見渡せた。というのも、建物の後ろが壊れて太陽の光を取り込んでいた。中はほぼ何もないコンクリートの床が広がる。
「なんもないね…」
私は山田くんに言った。しかし、返答はない。私の声が響いただけだった。おかしいなと思って山田くんを見た。
そこでは、山田くんが一点を見つめて固まっていた。その視線の先を追う…。
「ぎゃーーーーーーーーーっっっっ!」
思わず叫んだ。
そこには、マネキン?に抱きつく笑顔の女の子の姿…
英子だった。
私の叫び声で我に帰った山田くんは、ハッとして英子の名前を叫んだ。英子の視線がこちらに向く。目は虚な感じで明らかにおかしいことがわかった。
全ての動きがなんとなくおかしくて気持ち悪かった。
まるで生気がなかった。
山田くんは英子に近づき、マネキンから英子を引き離した。
英子はされるがままだった。
英子を連れて帰るために、山田くんは抱えて英子を車に乗せて病院に運んだ。
結論から言うと、英子は既に亡くなっていた。マネキンに抱きついて亡くなっていたのだ。正気はなかったけれど、死んでいる感じはなかったのに。
死因は、心不全と言われたが若くて健康な英子が急に死ぬなんて理解できなかった。
後日、山田くんは廃墟について教えてくれた。
あの廃墟は、元は金持ち夫婦の別荘だったが、ある日気が狂った夫が別荘で愛人たちを殺害し自身も自害したと言う曰く付きの廃墟なのだそう。
だからといって、英子はなぜあんなところに通い詰めていたのか意味がわからないし、なんで死んだのかもわからない。
そもそもどうやってあの場所を知ったのだろうか?
英子は、何かをきっかけに廃墟の霊に魅入られてしまったのだろう。
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