モテたかったが、こうじゃない 魔力ゼロになったおれは、あらゆるスパダリを魅了する愛され体質になってしまった

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第二章

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聖女さんとの謁見についての説明と、暫く隠す事になった兄貴との関係をどう誤魔化すかについて話し合う事になった。

テーブルに移動して…と促したけど、ベッドで抱きついたままアレク王子がどうしても離してくれなくてそのまま話す事に。

頬の腫れた兄貴が側で立ってるのがなんともシュールで居た堪れないが、本人も立ったままでいいそうなのでそれ以上は言わなかった。

「先ず連絡事項から伝えるね。聖女との謁見だけど、明後日の午前11時頃に決まったよ。父上や母上、大臣達とはここまでで、後は兄上を中心に交流を兼ねて食事会って流れ。出来ればここにマシロちゃんも参加して欲しいんだけど…」

「おれも?」

「怖かったら無理にとは言わないよ。でも確実に聖女はこのまま王宮で面倒を見ることになるだろうからマシロちゃんともいずれ会うだろうし、だったら先手で釘刺しといた方がいいんじゃないかって」

「釘刺すって…女の子相手に何する気なの?可哀想だよ」

「大丈夫、手荒な事はしないよ。俺達の可愛い恋人を紹介するだけ」

俺達の可愛い恋人…って、え゛。

「それって、聖女さんにおれ達の関係をバラしちゃうって事…?」

初対面のしかもとびきり美少女らしい聖女さんに全部言うって、正気か…?

難色を示すおれの様子にアレク王子の表情が少し曇る。

「…マシロちゃんは知られたくない?俺達が恋人だって」

「いやそこは別に本当のことだし」

「そ、っか…。じゃあ何が引っ掛かるの?」

明らかに嬉しそうな様子のアレク王子とは逆におれはじわじわと湧き立つ羞恥心に顔を覆った。

「だって、初対面の女の子にみんなとえっちしてるの知られちゃうなんて…、恥ずかし過ぎる…っ!」

「…ん?」

「おれの体質の説明もするんだよね?お願いだからおれが尻で気持ち良くなってる事言わないで…っ、あ、あとちゅー好きなのも!」

「お尻で気持ち良く…」

「キス好き…、て、いや!そんなとこまで言うわけ無いだろアホか!」

ぱしんっと頭に兄貴のツッコミが入る。

「でも恋人だったらえっちするじゃん」

おれの返しにうっと顔を赤らめて押し黙る2人。

「おれが魔力貰わなきゃ死んじゃう事言うんでしょ?それで5人揃いも揃って超イケメンだよ?面食い平凡尻軽男が第一印象だなんて嫌過ぎる…っ」

第一印象はなかなか覆らないんだぞ!
おれはどんな態度で聖女さんと接すればいいんだ。ただでさえ嫌われてそうなのに。

「大丈夫だよマシロちゃん。体質は説明するけど魔力はキスで貰えるって事にするし、もし聞かれたら身体の関係はまだって事にするから。それならいい?」

ちゅー、ちゅーだけ…、だったらまだ健全か?いや、恋人が5人…それも全員男って時点で健全と遠いのでは…?

「…別の方法で釘を刺すって言うのは?」

「恋人でも無い複数の男とキスする方が印象悪くない?」

確かに。

「わかった、それで手を打とう」

「…俺改めてマシロちゃん好きだなって思った」

「えっ、どの辺で…?」

相変わらずポイントが分からない。

ぐりぐりとアレク王子が頭を擦り付けてくる。地味に痛いんだけど。

「お前ってぐだぐだ考える割に思い切りがいいよな」

「…すみませんねぐだぐだ考えて」

「ばか、褒めてんだよ」

「本当、チョロくて可愛い。最高」

アレク王子は絶対褒めてない。

「じゃあ当日はそんな感じで。あとは…この瞳をどうにかしないとね」

不満そうなアレク王子に至近距離で覗かれる。

後ろめたさからさっと目を逸らす。面目ない。

「ま、方法は1つなんだけど」

「・・・・・」

兄貴が厳しい表情でおれ達を見ている。

いやおれだって分かってるよ?瞳の色は注いでもらった魔力属性で変わるんだから、今の色を変えるには別の属性魔力を注いでもらう必要がある。

火属性以外の魔力を入れること。
つまり、アレク王子とえっちするしかない。

「うんと優しくするからね♪」

おれの頭に頬擦りしながら上機嫌のアレク王子。おれとのえっちにそんなに喜ぶなんて、恥ずかしい筈なのに退ける気にはならなかった。胸の奥がなんかさわさわする。

「…そんなに喜ばなくても」

「だってマシロちゃんとまたそういう事が出来るなんて夢みたい。マシロちゃんを傷つけた事、本当に反省してるんだ。名誉挽回させてよ」

「だから覚えてないし、もう気にして無いって」

「尚更さ。今度こそ覚えててもらわないと。トロトロに甘やかして俺から離れたくなくなるくらい気持ち良くなって貰わないとね」

何されるんだおれ。

「明日の昼まで一緒にいられるから、ゆっくりたっぷり色々しようね♪」

マジで何されるんだおれ。

「普通でいいよ」

「んふふ♪楽しみ♪」

「あの」

今まで黙って見ていた兄貴が口を開いた。

わわっ、兄貴の目の前でなんつーやり取りを…っ。今更我に返って恥ずかしくなる。

熱の集まる顔に手を宛てて誤魔化すおれの様子に、さっきまでの機嫌の良さなんてどこいったのってくらい不機嫌な声でアレク王子が兄貴に言う。

「なに?そういうわけだから早く出て行ってくれない?貴方の為でもあるんだから明日の昼過ぎまで帰って来ないでね」

しっしっと邪険な態度を取られても顔色一つ変えずに兄貴がとんでもない事を言い出した。

「私も手伝います」

「「え?」」

手伝うって何を?え、ナニを…?

「私が原因で殿下のお手を煩わせるわけですから、ぜひ手伝わせて下さい」

「いやいや…っ、いらない!手伝いって…俺とイグニス殿で!?いや、本当にいらない…っ!」

「殿下に丸投げするわけには参りません」

「余計なお世話だよ…っ!いいから出ていけ!」

「嫌です」

「嫌です!?」

なぜか譲らない兄貴にアレク王子がイライラしてるのがわかる。兄貴どうしちゃったの?

「あのさ、俺はマシロちゃんを共有することはもう仕方がないって納得してるけど、だからって行為まで共有するつもりは無いんだけど。今から明日の昼まではマシロちゃんなの。恋人(仮)はでしゃばるなよ」

見たことないくらいキレているアレク王子に怯むことなく兄貴が言い返す。何故か兄貴もキレている。

「マシロは恋人でもあります。殿下が認めてくださったでしょう?自分の恋人が他の男に抱かれると分かっているのに残して行けるわけがない。だったらまだ一緒にいた方がマシです」

「他人のプレイを見たいって?だいたいマシロちゃんの為に嫌々認めてやっただけだって分かってる?それとも今からでも王子の恋人に手を出した罪で牢屋にぶち込んでやろうか」

「恋愛に王子の立場を持ち込まないと平民出身の俺にも勝てないって事でしたらどうぞ牢屋でも国外でも好きなところに追いやればいい」

「は?調子に乗るなよ」

「殿下こそ、黙ってれば目の前で人の恋人に卑猥なこと言いやがって。大体くっつき過ぎなんだよ、セクハラで訴えんぞ」

バチバチバチバチ…っ!!!

2人の間に火花が見える。マジで怖い。

突然始まった喧嘩に目を白黒させてビビるおれ。いや、なんの喧嘩なのこれ。

兄貴なんてキレ過ぎて王子相手に素が出てるし。

「セクハラじゃありませーん。マシロちゃんは嫌がってませーん。ね、マシロちゃん。このおじさんに言ってやりなよ、アレクとラブラブえっちしたいから邪魔者は早く出ていけって」

「え゛っ」

「マシロ我慢することねぇ、テク無しなガキの愛撫じゃイけねぇって言ってやれ」

「ちょっと…っ」

「は?誰がテク無しだって?前した時のマシロちゃんのトロトロ具合知らないからって適当な事言うなよ」

「はんっ、それだってマシロは覚えてねぇんだろ?殿下が勝手にそう思ってるだけじゃないんですか?」

バチバチバチバチバチ…っ!!!

ねえ、マジでなんの喧嘩なの!?
間に挟まれてるおれの身にもなってよ…っ!

「2人共ちょっと落ち着こう…」

堪らず声を上げると、2人の視線が一斉におれに向けられた。あまりの迫力にビクッと肩が跳ねる。

目が、目が怖いんですけど…。

「そこまで言うなら分からせてやるよ。マシロちゃんがどれだけ蕩けるのか、現実見て後悔しろおっさん」

マシロの方が万倍やべぇがな」

「ちっ、言ってろ。そう言う事だからマシロちゃん、沢山気持ち良くしてあげるね」

「え?」

「物足りなかったら直ぐに言えよ。天国見せてやる」

「えぇ?」

アレク王子にベッドに押し倒され、その横に兄貴が座る。

色気ムンムンな目でおれを見下ろす2人。

喧嘩してたんじゃないの…?

展開が早過ぎて状況が飲み込めない。

頭の中がハテナで埋め尽くされているおれを置いてけぼりに、アレク王子の唇が降ってきた。



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