モテたかったがこうじゃない

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第二章

25

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「では場の準備が整い次第、聖女と面会するとしよう。王にも報告しなければならないし、詳細は追って知らせる。教会側はセシル司教殿に、出来れば聖女の動向も注意頂けると助かります」

「お任せ下さい」

「殿下、昨日捕らえた者達はいかが致しますか?今朝様子を見てきたところ正気に戻っている様子でしたが油断は出来ません。かと言って教会の人間を捕らえたままというのも…」

「あぁ、彼等は私が連れて帰ります。あの後1人叩き起こしてみましたが、暴動を起こしていた時の記憶がない様でした。…まるで洗脳が解けたような。ですので、聖女に会わなければ大丈夫でしょう。孤児院はいつも人手不足ですから」

「ありがたい。マシロ君には悪いが、王宮側としても教会と何かあったと表沙汰にはしたくないからな。では私とアイリーンは失礼する。何か分かり次第知らせるように」

王太子様が立ち上がるのに続いてアイリーン様も席を立った。

するとさっきまで感じなかった張り詰めた空気が一瞬プチンと切れた感じがした。アイリーン様が魔法を解いたんだ。

そのまま部屋を出ていく王太子様。アイリーン様も一礼して続こうとしていたけど、くるりとおれの方を向いて満面の笑みで言った。

「マシロ様は完璧な総受けなのですから、ドンと構えていれば無問題モーマンタイですわ」

では、と可憐に去って行ったアイリーン様。あれスキップしてなかった?

完璧な総受け、ね。全然嬉しく無い。

つかモーマンタイってどう言う意味?

「さて、堅苦しい話も終わりましたし、そろそろマシロ君について教えて下さいカール。昨日の変貌ぶりや瞳の色が違う事など詳しくお願いします」

「あ、俺も聞きたい…です」

うきうきしている変人と少し気まずそうな兄貴に、カール様が本当に嫌そうに今までの経緯を説明していた。

魔力供給の仕方だけ王宮の人達に言った様にキスで、って事にしてくれた。

昨日おれがカール様にキスを強請っていたのもあって兄貴は納得してくれたけど、変人は全然腑に落ちていない様子でカール様に問い詰める。

さすがカール様、しつこい変人の追求も上手くかわしている。慣れてる感じ、流石幼馴染。

というか何でそんなにそここだわるの?キスでよくない?

あ、そう言えばおれコイツとキスしてたわ。うげー、思い出すんじゃなかった…。

カール様ではどうにもならないと見切りをつけた変人が、正解を知っているが故に顔を赤くしているグランツ様に標的を変えた。あ、まずい。

「貴方はマシロ君に魔力の供給をした事があるのですか?本当にキスだけですか?」

「え…っ!マシロに、魔力供給…っ、それは…っ」

思い出しちゃったのかますます真っ赤になっていくグランツ様。
ちらちらおれを見て顔を覆わないでよ…っ。乙女か!

おれまで釣られちゃうだろ…っ。

「おや、騎士団長殿ともあろうお方がたかだかキスごときでそこまで狼狽えるなんて、怪しいですね」

「おいっ、やめろよ馬鹿。失礼だろ!」

「イグニスだって気なるでしょう?あんな色香を纏ったマシロ君を前にキスだけなんて、男として終わってます」

「うぅ…それは、そうだけどよ…」

「待て、色香だと。発情したマシロを見たのか…っ!」

「グランツ様!?」

なんでそこに反応したの!?

「ほう、あれは発情していたのですね。だとすると、ますますキスだけでは済まないと思うのですが…」

「当たり前だ。いつものマシロもそれはそれは可憐で目を合わせるのも大変なのに、発情したマシロは凶悪そのもの…。あれに誘われて勝てる者などこの世にいない。私も発情したマシロを前に死を覚悟した程だ」

「グランツ様ーっ!?」

真顔で何言っちゃてるのー!?

「なるほど分かりました。ありがとうございます」

「…ん?」

「死を覚悟する程の色気…」

「はぁ…クソ巨根脳筋野郎が…」

うぅ…、は、恥ずかしいってもんじゃないばかぁ…っ!

とてもじゃないが顔を上げていられなくて、頭を抱えてちじこまる。

グランツ様は後でカール様にたっぷり怒られて下さい。







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