モテたかったが、こうじゃない 魔力ゼロになったおれは、あらゆるスパダリを魅了する愛され体質になってしまった

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第二章

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「「「「ゲーム攻略済みヒロイン?」」」」

おれとカール様、グランツ様、兄貴の4人がハテナいっぱいで聞き返す中、王太子様と変人は興味深そうにしていた。

「召喚されても驚かなかったのはお兄様とイグニス様が儀式の場に居たからだと思います。恐らくお二人は聖女様の攻略対象なのでしょう。わたくしも記憶を思い出したきっかけはトワイス様と初めてお会いした時でしたし」

「と言うことはアイリーンと同じか?」

「少し違いますが似たようなものですわ。恐らく聖女様はこの世界ゲームにおけるヒロインが自分で、この後の展開や結末を知っていて行動しているのだと思われます」

「それで私やイグニスにベタベタと纏わりついてきた訳ですか。気持ちの悪い」

「王宮に行きたがったのも、他に『攻略対象』が王宮にいるからか。アイリーンもこの後の展開を知っているのか?」

「申し訳ありません。私の知っている内容は学園を卒業した時点で終わっていますし、それも殆ど流れを変えてしまいましたのでもはや別物。参考にはなりませんわ」

「そうか…」

真剣に話し合っている3人にカール様が割って入った。

「申し訳ありません殿下、私どもにも分かるようにご説明頂けませんか?」

「あぁ、すまない。だが、何と説明したらいいか…」

「私がお話しますわ」

アイリーン様の説明によると、アイリーン様も聖女さんと同じチキュウという世界のニホンジンだったそうで、そこではこの世界とそっくりなげーむというお話があるらしい。

アイリーン様はずっとその事は忘れていて、魔法学園に入った時に王太子様と会ってニホンジンだった時のことを思い出したんだって。この世界が昔やったげーむの内容と一緒で、出てきた人や起こる事も一緒だった。

そこで自分がヒロインの引き立て役兼捨て駒ポジションの悪役令嬢で、このままだと近い未来に処刑される運命だと思い出してフラグという物を折まくったらしい。その時に王太子様と兄である変人には話していて協力してもらったんだそうだ。

お陰でアイリーン様は死なずに済んで、王太子様の婚約者になって今に至る。ということらしい。

初めてのお茶会の時に言ってたのはこう言う事だったんだな。
…改めて聞いてもよく分かんないけど。

それで、聖女さんは情報的にアイリーン様と一緒でげーむをした事があるんじゃないか、という事らしい。

「私が知っているのは学園にいる時までなのでその後は分かりませんが、恐らくゲームの続編が出ていて聖女様はその続編での『ヒロイン』ではないかと。そして召喚されてからの言動を考えるに『ハッピーエンド』までを知っていると思われますわ。それにとても積極的に動かれている。きっと目的があるのでしょう」

「…アイリーン様にそんな秘密があったとは驚きました。しかし聖女の目的とは何なのでしょう?それにマシロが関係あるとは思えません」

そうだそうだ、おれ聖女さんに会った事も無いし。

グランツ様の言葉にうんうんと大きく頷くが、カール様が神妙な声で呟いた。

「『偽物』…ですか」

「恐らくそれです」

それってどれ?

「聖女様は王宮に来たがっていた。彼女の目的が王宮にいるのでしょう。イグニス様、城下町に行かれたのは聖女様の提案ではありませんか?」

「はい、ずっと王宮に連れて行けと言われて断っていたら、その日は何故か城下町に行きたいと言い出して、王宮よりはいいかと…。目立つのでローブで姿を見られないように注意して連れて行きました。てっきり買い物がしたかったのかと思ったのですが路地ばかりをキョロキョロと…あ」

「恐らく城下町で探していたのはお店などではなく、」

「レイヴァンか」

王太子様の表情が険しくなる。

「レイヴァン様が真の目的とは限りません。しかし行きたい王宮に連れて行って貰えず焦っていたであろう聖女様は、城下町でレイヴァン様と路地でイベントが起こる事を知っていたのですわ。レイヴァン様と知り合えば王宮に行ける可能性が大いにありますから。しかし、そこで起こった事は想像していたものとは違っていた」

「それが坊主か!」

え、おれ?

「本来魔力暴走に巻き込まれるのは聖女だった、と」

ん?

「あくまで可能性です。それに聖女様は元々魔力を保有していない為、マシロ様の様に瀕死になることもなかったでしょうし、寧ろ聖女召喚の目的からして、レイヴァン様の魔力暴走を止めるイベントだったのではないでしょうか」

「確かに聖女だったら可能だろう。知識もある様だしな」

え、それって…。

「そう考えれば辻褄が合いますね。王子を救ったとなれば王宮に招待されるでしょうし、当然聖女だと分かればそのまま王宮に住む事になります」

「しかしレイヴァン殿下は既にマシロと事故を起こしていた」

「てっきり男同士のキスを見てショックを受けたのかと思ってたんだが…、そういうことか…」

「私は聖女様がヒロインのゲーム内容を知りませんが、私の時の続編であれば大まかな設定は一緒のはずですわ。それでもしかするとレイヴァン様とキスをされているマシロ様を見て、『ヒロイン』をマシロ様に取られたと考えたのではないでしょうか」

「しかしマシロ君が魔力暴走に巻き込まれた事は分かったとしても『聖女』と同等の存在になったとまでは分からないのではないですか?マシロ君の魔力が無くなった事は王宮の一部の者しか知らないですし、あの時点では本来の基礎魔力まで無くなってしまったとまだ誰も分かりませんでした」

「え!?坊主って魔力無いんですか!?」

「おやおや、まるで聖女ですね」

「えと、その…」

なんでカール様言っちゃうの!

話の流れ的に仕方が無いとは言え恥ずかしい…。

兄貴と変人の視線から逃げる様にグランツ様の背中に入れるだけ頭から隠れた。

上擦った声で名前を呼ばれたが無視した。
ごめんねグランツ様。

「結果としてマシロ様の魔力が無くなり『聖女』の特性と同じになりましたが、そこが重要ではありませんわ。聖女様が取られたのは『ヒロイン』ポジションです。このゲームは『恋愛シュミレーション』なのですから」

「恋愛シュミレーション…?つまり…、恋人を作るのが目的なのですか?」

「そうですわ。しかもこの会社の作るゲームの『ヒロイン』はもれなく総愛され!狙えばほぼ付き合える甘々設定のラブ特化型シナリオが売りで攻略対象のイケメンがこぞってヒロインを好きになる、まさに逆ハーレムならこれ!と言わしめた乙女ゲーム屈指の超有名メーカー。その中でも特にこの作品はイケメン達のヒロインに対するラブ度が高いと評判で隙あらばイチャつきだすし濃厚シーン豊富でヒロインを男の子に置き換えるとそれはそれは上質なBLを摂取出来て最高…むぐっ」

「…アイリーン、素が出ている」

興奮して早口で捲し立てるアイリーン様の口を困った表情の王太子様が塞いで止めた。

おれはもう知ってるしまた始まったなとしか思わなかったけど、他の人達は余程びっくりしたのかアイリーン様を見たまま固まってる。

分かるよその気持ち。めっちゃ美少女だから余計にそうなるよね。

あ、変人は気にせずクッキーを食べていた。

「ごほんっ、…すみません。少し取り乱してしまいましたわ。とにかく私が言いたいのは、きっと聖女様は気が付いてしまわれたのです。この世界が自分の知っているシナリオと違う事に。その決定打が恐らく攻略対象のレイヴァン様とマシロ様のキスシーンだったのではないでしょうか」

「つまり聖女は本来自分が愛される筈なのに、とマシロ君を逆恨みしている訳ですね。しかも自分を苦しめる『悪魔』として慕ってくる信者に排除させようと画策した、と。初めに大人しく分からないフリでもしておけば、怪しまれず通常通り王宮に知らせたものを…。お馬鹿ですね」

「全て推測の話ですわお兄様。どちらにせよ、私達も1度聖女様にお会いしておいた方が良いでしょう」

「そうだな。通例だと王宮に向かい入れるべきだが…、危うく傷害事件になる騒動が起きてしまったからには調べる必要がある。その時はレイヴァンとアレクセイも呼ぶべきだろう」

「愛しのマシロ様が襲われたと知ったらお二人とも大荒れでしょうね。楽しみですわ」

「…アイリーン、素が出ているぞ」

「あら、うっかり」

くすくすと可憐に笑うアイリーン様に対して苦笑いの王太子様。

大変そうだな。
でも凄く仲良さそうでお似合いだ。

カール様達はアイリーン様の衝撃から復活しつつも何処か気まずそうにしている。

…聞ける雰囲気じゃないけど、一個引っかかった事があるんだよなぁ。

もう起こっちゃったんだから今更なんだけど。

おれが先にレイヴァン様を見付けなかったら、もしくは助けようと思わないで放っておいたら。

聖女さんが先にレイヴァン様を見つけてたら。

聖女さんはレイヴァン様の魔力暴走を止められるらしいし。そしたら…、

おれは魔力を無くさなかったし、レイヴァン様もトラウマを掘り起こされなくてすんだ。カール様やグランツ様だって、変なフェロモンに当てられて平凡男とえっちする羽目になったわけだし…。

もしかしておれ、余計な事、しちゃったのかな…。

なんて。

・・・・・・・。

ううん、やめだやめ。

今更どうにもならない事考えても仕方ないじゃないか。

うん、この考えは忘れよう。

それに…今更レイヴァン様達がいない日常は想像出来ない。

チラッとカール様とグランツ様を見る。

その後に王太子様、アイリーン様、変人…はいいとして兄貴。

この人達が居ないのか…。

それはなんか、嫌だなって思った。











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