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第二章
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変人と兄貴の合わせ技魔法でびしょ濡れだった服も身体も元通りになった。
兄貴は炎、変人は風の属性らしい。
濡れた状態じゃ無くなったけど身体は冷えたままで少し震えていると、兄貴が魔法で体温を上げれるそうで人間湯たんぽになって温めてくれている。
マジで魔法って便利。
「お前らマジでいい加減にしろ。ここは王宮内なんだぞ、分かってるのか」
対面のソファーにおれと兄貴、変人とカール様がそれぞれ座ってて、カール様は端っこに寄って座ってる。
めちゃくちゃ嫌そうだ。
「イグニス替わって下さい」
「なんも反省してないことは分かったわ」
「兄貴が“イグニス”様?」
「あ?そうだけど…、なんでだ?」
「えっ、あ、いや~…」
つい聞いちゃったけど、これって言わない方がいいやつな気がしてきた。
だって明らかに周りの人達が気まずそうに目を逸らしてるんだもん。
なんて言ったらいいのか分からなくてはぐらかすが、ピンときた様に兄貴が周りを見る。
「お前らまさか、…また誰も止めてやらなかったな?」
するとあからさまに顔を背ける人までいた。
大きなため息を吐いて頭を抱える兄貴。
「おいおい勘弁しろよ。子供が困ってるのに助けないとか…教会の人間として恥ずかしいと思わないのか…」
「も、申し訳ありません…。しかし、我々ではセシル司教様をお止めすることなどとても…。それにセシル司教様がとても…その、楽しそうにされていたので…止めても良いものなのか判断できず…」
「坊主も楽しそうだったか?」
「……いえ」
「じゃあ助けろよ」
「「「…申し訳ありません」」」
一斉に頭を下げて項垂れる光景に明確な上下関係を感じる。
うんうん、分かるよ。この変人怖いもんね。おれも当事者じゃなかったら強い人来るの待っちゃうかもだし。
でもやっぱり助けて欲しかったから黙っとこ。
「それにしても坊主が王宮にいるなんて驚いたな」
ぎくっ。
「そうですよカール、水臭いじゃないですか。こんな良いものどこで拾ったんです?」
路地で拾われました。拾ったのはレイヴァン様だけど。
「羨ましいでしょ」
「羨ましいです。僕に下さい」
「ダメでーす」
「えー、貴重な薬草譲りますから」
「無理でーす」
なんか楽しそうだ。
やっぱり2人は知り合いっぽい。そういえば街でも兄貴の事知ってるっぽかった。
兄貴にこっそり耳打ちする。
「あの2人って仲良いの?」
「いや知らね。でも幼馴染だって聞いたことあるからそうなんじゃないか?」
へー、幼馴染。
「言われたら2人ってなんか似てるかも」
ちょっと強引なところとか、意地悪なところとか。
「…こんなのより私の方がよっぽど優しいでしょ?仕方がない、今度じっくり分からせてあげるね」
「ほらそういうところだよ」
「…お前も苦労してそうだな」
ぽんぽんと頭を撫でで慰めてくれる兄貴。
兄貴って見た目に反して1番まともだ。
関わっちゃいけない人だなんて思ってごめんね。
「分かりました。そこまで駄目だと言うのならこちらのとっておきです」
「司教…お前まさか…」
「“聖女”と交換でしたら文句ないでしょう」
ドヤァと変人が出した提案にそれぞれが違った反応をする。
カール様は驚いた顔で変人を見てるし、兄貴は頭を抱えて唸ってる。
一番激しかったのは周りの人達だった。
「司教様!な、なんて事をおっしゃるんですか…っ!」
「そうです!“聖女様”は神に選ばれた存在。我々の宝です!」
「こんなどこにでもいる少年と聖女様を天秤に掛けるなど、信じられません…っ!」
なんだ?なんだ?それに“聖女様”誰?
突然出た名前だけど、この反発具合から見るにかなりすごい人なんだろう。
だってみんなめちゃくちゃ怒ってる。さっきまでの遠慮はどうした。
「この子が“どこにでもいる少年”?」
キョトンとしている変人にもしかしてと嫌な予感がする。
「どこをどう見ても何の特徴もない見窄らしい少年ではないですか!」
「こんなのと聖女様を比べる事すら天罰に当たります!」
「それなのに、あろう事か交換だなんて…っ!」
「司教様は本当に美しい聖女様を芋と交換するおつもりですか!断じて許せません…っ!」
おい、言い過ぎだぞ。誰が芋だ。
でも分かるよ。その大事な聖女様とよく分からん男交換なんてたまったもんじゃないよな。
いや、そもそも人間同士をトレードしようなんてのがやば過ぎだろ。
しかし…、やっぱりあの問題が起きてるとしか思えない、よね?
「だってこの子の方が可愛いですよ」
その発言に皆さんドン引きしてる。
ですよね!ですよね!あなた方が正しいですよ!
イケメンフェロモン発動してるーーっ!!
なるほどこの変人魔力多いのか…、それであんな言動を…。
グランツ様に引き続き、第二の被害者が爆誕した瞬間だった。
兄貴は炎、変人は風の属性らしい。
濡れた状態じゃ無くなったけど身体は冷えたままで少し震えていると、兄貴が魔法で体温を上げれるそうで人間湯たんぽになって温めてくれている。
マジで魔法って便利。
「お前らマジでいい加減にしろ。ここは王宮内なんだぞ、分かってるのか」
対面のソファーにおれと兄貴、変人とカール様がそれぞれ座ってて、カール様は端っこに寄って座ってる。
めちゃくちゃ嫌そうだ。
「イグニス替わって下さい」
「なんも反省してないことは分かったわ」
「兄貴が“イグニス”様?」
「あ?そうだけど…、なんでだ?」
「えっ、あ、いや~…」
つい聞いちゃったけど、これって言わない方がいいやつな気がしてきた。
だって明らかに周りの人達が気まずそうに目を逸らしてるんだもん。
なんて言ったらいいのか分からなくてはぐらかすが、ピンときた様に兄貴が周りを見る。
「お前らまさか、…また誰も止めてやらなかったな?」
するとあからさまに顔を背ける人までいた。
大きなため息を吐いて頭を抱える兄貴。
「おいおい勘弁しろよ。子供が困ってるのに助けないとか…教会の人間として恥ずかしいと思わないのか…」
「も、申し訳ありません…。しかし、我々ではセシル司教様をお止めすることなどとても…。それにセシル司教様がとても…その、楽しそうにされていたので…止めても良いものなのか判断できず…」
「坊主も楽しそうだったか?」
「……いえ」
「じゃあ助けろよ」
「「「…申し訳ありません」」」
一斉に頭を下げて項垂れる光景に明確な上下関係を感じる。
うんうん、分かるよ。この変人怖いもんね。おれも当事者じゃなかったら強い人来るの待っちゃうかもだし。
でもやっぱり助けて欲しかったから黙っとこ。
「それにしても坊主が王宮にいるなんて驚いたな」
ぎくっ。
「そうですよカール、水臭いじゃないですか。こんな良いものどこで拾ったんです?」
路地で拾われました。拾ったのはレイヴァン様だけど。
「羨ましいでしょ」
「羨ましいです。僕に下さい」
「ダメでーす」
「えー、貴重な薬草譲りますから」
「無理でーす」
なんか楽しそうだ。
やっぱり2人は知り合いっぽい。そういえば街でも兄貴の事知ってるっぽかった。
兄貴にこっそり耳打ちする。
「あの2人って仲良いの?」
「いや知らね。でも幼馴染だって聞いたことあるからそうなんじゃないか?」
へー、幼馴染。
「言われたら2人ってなんか似てるかも」
ちょっと強引なところとか、意地悪なところとか。
「…こんなのより私の方がよっぽど優しいでしょ?仕方がない、今度じっくり分からせてあげるね」
「ほらそういうところだよ」
「…お前も苦労してそうだな」
ぽんぽんと頭を撫でで慰めてくれる兄貴。
兄貴って見た目に反して1番まともだ。
関わっちゃいけない人だなんて思ってごめんね。
「分かりました。そこまで駄目だと言うのならこちらのとっておきです」
「司教…お前まさか…」
「“聖女”と交換でしたら文句ないでしょう」
ドヤァと変人が出した提案にそれぞれが違った反応をする。
カール様は驚いた顔で変人を見てるし、兄貴は頭を抱えて唸ってる。
一番激しかったのは周りの人達だった。
「司教様!な、なんて事をおっしゃるんですか…っ!」
「そうです!“聖女様”は神に選ばれた存在。我々の宝です!」
「こんなどこにでもいる少年と聖女様を天秤に掛けるなど、信じられません…っ!」
なんだ?なんだ?それに“聖女様”誰?
突然出た名前だけど、この反発具合から見るにかなりすごい人なんだろう。
だってみんなめちゃくちゃ怒ってる。さっきまでの遠慮はどうした。
「この子が“どこにでもいる少年”?」
キョトンとしている変人にもしかしてと嫌な予感がする。
「どこをどう見ても何の特徴もない見窄らしい少年ではないですか!」
「こんなのと聖女様を比べる事すら天罰に当たります!」
「それなのに、あろう事か交換だなんて…っ!」
「司教様は本当に美しい聖女様を芋と交換するおつもりですか!断じて許せません…っ!」
おい、言い過ぎだぞ。誰が芋だ。
でも分かるよ。その大事な聖女様とよく分からん男交換なんてたまったもんじゃないよな。
いや、そもそも人間同士をトレードしようなんてのがやば過ぎだろ。
しかし…、やっぱりあの問題が起きてるとしか思えない、よね?
「だってこの子の方が可愛いですよ」
その発言に皆さんドン引きしてる。
ですよね!ですよね!あなた方が正しいですよ!
イケメンフェロモン発動してるーーっ!!
なるほどこの変人魔力多いのか…、それであんな言動を…。
グランツ様に引き続き、第二の被害者が爆誕した瞬間だった。
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