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第二章
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んーっ!よく寝た。
大きなふかふかのベッドはあんまりにも気持ちよくて、夕方には寝たのに外が明るい。
朝までぶっ通しで寝ていたことにびっくりする。
でもお陰で身体も気持ちもスッキリりしてる。やっぱり寝るのって大事だな。
思い切り伸びをして気がつく。あれ?アレク王子は?
「おはよーマシロちゃん…。ふあー、よく寝てたねー…」
ソファーでコーヒーを飲んでいた。すっごく眠そう。
「おはよう。めっちゃ寝た」
「本当にねー、気持ち良さそうに……俺の気も知らないで」
まさか、寝てる間になんかやらかしたのかな?
「ごめん、おれ寝相悪かった?」
おれの言葉にびしっ、と動きを止めてゆっくり目を逸らす。
え、マジでなんかしてた?
泣き喚いて慰めてもらっておきながら、お風呂も服もベッドも借りた挙句蹴ったりして追い出しちゃった、とか…?
だとしたら冷や汗ものだ。申し訳なさ過ぎる。
「もしかして蹴っちゃったりした…?」
「いや、別にそういう事は…うん。でも、…まだそっちの方が良かったような…いやでも…」
とっても歯切れが悪い。蹴ってないんだったら何したっていうの。
「殴っちゃった?」
「大丈夫、本当にそういうのじゃないから。ただ…俺の良心を試されてるというか…自分との戦いに疲れたというか…」
よくわからないけど、おれが何かしたってことじゃないみたいだし取り合えずいっか。
「ふーん、あ、ベッドありがとう」
「…どういたしまして」
ズズズー…と音を立ててアレク王子がコーヒーを啜った。おじいちゃんみたい。
ぐぅーー…。
あ、お腹空いた。
「ははっ、元気になったようで良かった。朝食にしようか」
アレク王子がテーブルの端に置いたあったベルを鳴らす。すると、ものの数分もしない内に給仕さんが入ってきてサンドウィッチやスープ、果物を次々と並べていった。
あっという間にテーブルを料理でいっぱいにして出ていく。その早技はまさにプロ。
「すげぇ…っ!何今の、魔法みたい!」
興奮してテーブルに行く。どれも美味しそう!
「ふふっ…魔法って、さっきの給仕達に伝えておくよ。きっと喜ぶ。さあ食べようか」
やっぱり王宮ってすげぇ!
急いでソファーに座るとおしぼりが用意されていた。
おれがソファーに座ったのを見てアレク王子がおしぼりで手を拭いてからサンドウィッチを掴んで食べる。
美味しそう。じゃ、なくて…っ。
「王子様でも手づかみとかするんだ」
「ん?するよ。昨日のクッキーだって手で食べてたでしょ?」
あぁ、言われてみれば。
でもクッキーの時は違和感なかったのに、サンドウィッチを手づかみで食べるアレク王子はなんかしっくりこない。
「まあマナーではフォークとナイフで食べるんだけど…正直齧った方が美味しいでしょ?もちろん場所は弁えるけど。ほら城下町で流行ってるハンバーガーも思い切り齧った方が美味しいでしょ?」
「ハンバーガー?」
「食べた事ない?サンドウィッチと一緒でパンに具を挟んで食べるんだけど、肉や野菜がこれでもかって挟んであって最高なんだ」
お肉と野菜がこれでもか、かぁ…っ。想像したら涎が出そう。
やっぱり肉には勝てないよね。
「じゃあ今度食べに行こうよ、いいお店知ってるんだ。デザートに食べるバニラアイスも美味しいし」
「行く行く!いつ行く?」
「明日学園に戻らないといけないし、レイと話したら3人で行こうか」
そうだ、この後レイヴァン様と話すんだった…。でもたっぷり寝たからか昨日よりは気まずさを感じない。
…うん、大丈夫。ちゃんと話せると思う。
それに、レイヴァン様が手づかみでそのハンバーガーっていうのに齧り付く姿も見てみたい。
アレク王子でここまで違和感があるんだ、レイヴァン様はもっと想像できない。
「うん、3人で行きたい」
「…マシロちゃんは本当にいい子だね」
ありがとうなんてニコニコされる。やめろ、そんなんじゃないし…。
気恥ずかしい気分を誤魔化すために目の前の料理を食べていく。
「こらこら、そんなに急いで食べたら…」
「んぐ…っごほっごほ…っ!」
「あーほらっ、大丈夫?」
案の定喉を詰まらせて咽せるおれの隣に移動してきたアレク王子が背中を摩って水をくれる。
ゆっくり水で流し込んで、何とか飲み込んだ。あ”ー、死ぬかと思った…。
「はぁー、あー…ありがと…」
「まったく、マシロちゃん涙出てる。ほら顔上げて、拭いてあげるから」
咽せて生理的に出た涙をおしぼりで拭いてくれる。なんかアレク王子って…
「兄ちゃんみたい」
「兄ちゃんか…」
なんだか残念そうだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ご飯も食べ終わってたわいの無い話をしながらレイヴァン様を待つ。
朝来るって言ってたけど、はっきり何時って決めてないからいつ来るかわからなくてドキドキする。
そうこうしている間に時間は過ぎていって、お昼も過ぎた。…まあ、ちょっと遅れる事もあるだろうと、昼食も用意してもらって食べる。とっても美味しかった。
お腹も満腹でいつでも来い!と構えていても、レイヴァン様はまだ来ない。
…結局おやつの時間まで待っても、レイヴァン様は来なかった。
大きなふかふかのベッドはあんまりにも気持ちよくて、夕方には寝たのに外が明るい。
朝までぶっ通しで寝ていたことにびっくりする。
でもお陰で身体も気持ちもスッキリりしてる。やっぱり寝るのって大事だな。
思い切り伸びをして気がつく。あれ?アレク王子は?
「おはよーマシロちゃん…。ふあー、よく寝てたねー…」
ソファーでコーヒーを飲んでいた。すっごく眠そう。
「おはよう。めっちゃ寝た」
「本当にねー、気持ち良さそうに……俺の気も知らないで」
まさか、寝てる間になんかやらかしたのかな?
「ごめん、おれ寝相悪かった?」
おれの言葉にびしっ、と動きを止めてゆっくり目を逸らす。
え、マジでなんかしてた?
泣き喚いて慰めてもらっておきながら、お風呂も服もベッドも借りた挙句蹴ったりして追い出しちゃった、とか…?
だとしたら冷や汗ものだ。申し訳なさ過ぎる。
「もしかして蹴っちゃったりした…?」
「いや、別にそういう事は…うん。でも、…まだそっちの方が良かったような…いやでも…」
とっても歯切れが悪い。蹴ってないんだったら何したっていうの。
「殴っちゃった?」
「大丈夫、本当にそういうのじゃないから。ただ…俺の良心を試されてるというか…自分との戦いに疲れたというか…」
よくわからないけど、おれが何かしたってことじゃないみたいだし取り合えずいっか。
「ふーん、あ、ベッドありがとう」
「…どういたしまして」
ズズズー…と音を立ててアレク王子がコーヒーを啜った。おじいちゃんみたい。
ぐぅーー…。
あ、お腹空いた。
「ははっ、元気になったようで良かった。朝食にしようか」
アレク王子がテーブルの端に置いたあったベルを鳴らす。すると、ものの数分もしない内に給仕さんが入ってきてサンドウィッチやスープ、果物を次々と並べていった。
あっという間にテーブルを料理でいっぱいにして出ていく。その早技はまさにプロ。
「すげぇ…っ!何今の、魔法みたい!」
興奮してテーブルに行く。どれも美味しそう!
「ふふっ…魔法って、さっきの給仕達に伝えておくよ。きっと喜ぶ。さあ食べようか」
やっぱり王宮ってすげぇ!
急いでソファーに座るとおしぼりが用意されていた。
おれがソファーに座ったのを見てアレク王子がおしぼりで手を拭いてからサンドウィッチを掴んで食べる。
美味しそう。じゃ、なくて…っ。
「王子様でも手づかみとかするんだ」
「ん?するよ。昨日のクッキーだって手で食べてたでしょ?」
あぁ、言われてみれば。
でもクッキーの時は違和感なかったのに、サンドウィッチを手づかみで食べるアレク王子はなんかしっくりこない。
「まあマナーではフォークとナイフで食べるんだけど…正直齧った方が美味しいでしょ?もちろん場所は弁えるけど。ほら城下町で流行ってるハンバーガーも思い切り齧った方が美味しいでしょ?」
「ハンバーガー?」
「食べた事ない?サンドウィッチと一緒でパンに具を挟んで食べるんだけど、肉や野菜がこれでもかって挟んであって最高なんだ」
お肉と野菜がこれでもか、かぁ…っ。想像したら涎が出そう。
やっぱり肉には勝てないよね。
「じゃあ今度食べに行こうよ、いいお店知ってるんだ。デザートに食べるバニラアイスも美味しいし」
「行く行く!いつ行く?」
「明日学園に戻らないといけないし、レイと話したら3人で行こうか」
そうだ、この後レイヴァン様と話すんだった…。でもたっぷり寝たからか昨日よりは気まずさを感じない。
…うん、大丈夫。ちゃんと話せると思う。
それに、レイヴァン様が手づかみでそのハンバーガーっていうのに齧り付く姿も見てみたい。
アレク王子でここまで違和感があるんだ、レイヴァン様はもっと想像できない。
「うん、3人で行きたい」
「…マシロちゃんは本当にいい子だね」
ありがとうなんてニコニコされる。やめろ、そんなんじゃないし…。
気恥ずかしい気分を誤魔化すために目の前の料理を食べていく。
「こらこら、そんなに急いで食べたら…」
「んぐ…っごほっごほ…っ!」
「あーほらっ、大丈夫?」
案の定喉を詰まらせて咽せるおれの隣に移動してきたアレク王子が背中を摩って水をくれる。
ゆっくり水で流し込んで、何とか飲み込んだ。あ”ー、死ぬかと思った…。
「はぁー、あー…ありがと…」
「まったく、マシロちゃん涙出てる。ほら顔上げて、拭いてあげるから」
咽せて生理的に出た涙をおしぼりで拭いてくれる。なんかアレク王子って…
「兄ちゃんみたい」
「兄ちゃんか…」
なんだか残念そうだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ご飯も食べ終わってたわいの無い話をしながらレイヴァン様を待つ。
朝来るって言ってたけど、はっきり何時って決めてないからいつ来るかわからなくてドキドキする。
そうこうしている間に時間は過ぎていって、お昼も過ぎた。…まあ、ちょっと遅れる事もあるだろうと、昼食も用意してもらって食べる。とっても美味しかった。
お腹も満腹でいつでも来い!と構えていても、レイヴァン様はまだ来ない。
…結局おやつの時間まで待っても、レイヴァン様は来なかった。
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