モテたかったが、こうじゃない 魔力ゼロになったおれは、あらゆるスパダリを魅了する愛され体質になってしまった

なん

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第二章

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「あの日は大きな満月が夜空を輝らしていて、あんまり綺麗だったからアレクを誘って一緒に寝室の窓から見ていたんだ。あの頃はまだ魔力が暴走しても熱が出るくらいで寝ていたらよくなっていたし、僕も周りもあまり気にしていなかった。…なのに、あの夜はいつもと違っていた。身体中の魔力が破裂した様な感覚がして…、気が付いたら隣りにいたはずのアレクが部屋の隅で倒れていた」

レイヴァン様の顔色が徐々に悪くなっていく。その時の映像が蘇っているんだろう。

おれは軽い気持ちで聞いたことを後悔した。

でもどう止めていいかも分からなくて言葉を探していると、レイヴァン様は大丈夫だと笑う。

「すまない、そんな顔をしないでくれ。今のアレクを見ただろ?あいつはピンピンしているし気にしていない。本人が言っていたからな。…未だに気にしているのは僕だけだ。アレクが僕をこの塔から引っ張り出したと言っただろう。あいつは…強いんだ。それに優しい。マシロも同じだ」

「おれ?」

「あの時、あの路地裏で今にも死にそうなマシロを見た時、倒れたアレクの姿と重なったんだ。またやってしまった。やはり僕は塔から出るべきじゃなかった、と。でもマシロはあの時“死にたくない”と言った。その言葉が僕を動かしてくれたんだ。アレクの時はただ大人達が助けてくれるまで見ているしか出来なかったが、今度は僕が助けると」

そっと頬にレイヴァン様の手が触れる。

「マシロが目を覚さない間、生きた心地がしなかった。アレクは10日も眠っていたし、何より魔力が全て吹っ飛んでしまったと聞いた時は助からないんじゃないかと思っていた」

それであんなに取り乱してたのか。…いきなりファーストキスを奪われたのはショックだったけど。

「でも、マシロは目覚めてくれた。もしあのままマシロが目覚めなかったら、きっと僕はまたこの塔に閉じこもっていただろう。もう誰とも会わないように、ひとりで」

「そんなことないよ。レイヴァン様が塔から出てこれたのはアレク王子のおかげなんでしょ?それに王様達もカール様やフィリップ先生だって、普通に仲良さそうにしてたじゃん。別におれは何も…」

「ずっと後悔していたんだ。僕のせいで、それも目の前でアレクが倒れているのに動けなかったことを。いくらアレクや周りの者が気にするなと言っても、僕は僕の弱さが許せなかった。そして怖かった。また同じことが起きたら、僕は今度こそ大事な人を失ってしまうんじゃないか、て。でもマシロが僕にチャンスをくれた。動ける勇気をくれたんだ」

泣きそうに細められた紫の瞳に目を奪われる。

「ありがとう。本当はずっと言いたかった。あの時から動けないままだった僕を助けてくれて。僕の弱さを叱ってくれて。マシロが現状をどんどん受け入れて、必死に前を向く強さに、僕の心が救われていったんだ。マシロにとっては酷い話だろうけど、僕にとってマシロに出会えたあの瞬間がなによりも特別なものなんだよ」

「そ、んな…こと」

「…すまない。でも、愛してる。僕の救世主」

静かに重なった唇を、今度は引き離せなかった。

正直話を聞いて大袈裟な、とかレイヴァン様がちゃんと自分で過去と向き合ったからじゃん、て思った。けど。

おれだったら暴走して変な行動起こしちゃうか、考えるのが面倒になって受け入れちゃうけど。レイヴァン様はちゃんと考えて、ずっと悩んでたんだ。誰にも言えないままひとりで。弱いって思い込んで、自分を責めてたんだ。

頭良さそうなのに、肝心なところでややこしく考えちゃって。

すっごく不器用で、優しい奴。

そっとレイヴァン様の頭を撫でると、嬉しそうに笑った。

やっぱりおれのお陰で、なんて到底思えないけど。

「マシロ…抱いてもいいか?」

この人が救われたっていうなら、なんでもいいや。

おれは撫でていた手をぎゅっと引き寄せた。
















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