モテたかったがこうじゃない

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第二章

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ついに来た。夜だ。

おれは来た事のある扉の前で立ち往生していた。

ここはレイヴァン様の部屋の扉。この中にレイヴァン様が居る。当たり前だが。

わーわー。めっちゃ緊張するー。
え?どんな感じで入ればいいの?あの告白大会から初顔合わせでしかもこれからえっちするのよ、心臓爆発しそう。

学園の公務?で疲れてるだろうし、お疲れ。とか?それともおかえり。とか?

いや、王子に対してどの立場でこんな事言うのおこがましくない?

いくらおれの事好きって言ってたからって、おれの地位が上がったわけじゃないんだし…。

かといってよそよそし過ぎるのもなんか、嫌がりそうっていうか、丁度いい接し方ってどこが正解なの?もうなんか面倒臭い。

いいや。開けてから考えよう。
開けないで帰ったら色んな意味でおれ死ぬし。

トントントン。

取り敢えずノックしてみる。すると扉の前にいたの?ってくらい直ぐに開いてびっくりする。

「マシロっ。待ってた」

「あの、…お邪魔しまーす」

そんな表情出来るの?ってくらい甘いオーラ撒き散らしてるレイヴァン様を直視できないまま、部屋の中に誘導される。

この人、ガチやん。

これはおれの事好きだわ。いや、別にあの告白を疑ってたわけじゃないんだけど…。え、どうしよう。どう接したらいいの?自慢じゃないがおれは生まれてこのかたお付き合いしたこともなければ、告白だってこの間のが初めてで、あの、こんなに分かりやすく好かれてるのってどうしたらいいの?

カール様もさ、おれの事好きって言ってたけど、時々仕掛けてくるセクハラ紛いな事も冗談?遊びの延長線ていうか、逃げ道がちゃんと用意されてる感じ、だけど…、これは…。

ちらりとレイヴァン様を盗み見みる。

「ん?」

ばっと思わず目を逸らしてしまった。

こっそり見たのに何で目が合うの!?しかも何あの顔!ドロッドロにあんまーな微笑み。あんなの惚れてまうやろ!人知を超えたイケメンが本気出すとあんなに破壊力あるの?マジでかっこ良過ぎて怖い。男とか関係ない。見たらやられる。確実に…っ!

「マシロ?」

「ちょっと待て!お願い待って!」

「もう十分待った。学園の仕事もしろと言うからしてきた。これ以上は待てない。お願いマシロ、僕を見て」

ひっ、やめろ!待ったって言ってもたった3日じゃん!そんな悲しそうな声を出すんじゃない…!しゅんとした声まで良いなんて…っ、ずるいぞ!

うゔ…。すごい視線を感じる…っ。物凄く罪悪感を刺激される…っ!でも、でも…っ。

見たらきっと何でも言うこと聞いちゃいそう…っ。

「…マシロ」

あ”ーっ!あ”ーっ!
…おれの負けです。

「レイヴァン様…」

「マシロ」

あぁ…そんな嬉しそうに笑わないで。こっちまでドキドキしちゃうじゃん。なんか、嬉しくなっちゃうじゃん。

その好きに、応えたくなっちゃうじゃん…。おれってちょろい。

でもそんなちょろいおれでも流石に分かるぞ。今おれはレイヴァン様の感情に当てられているだけ。イケメンオーラに飲まれてるだけ。…たぶん。

「お疲れ、お帰りなさい」

「っ!ただいま、マシロ」

嬉しそうに抱きついてくる大きな黒い人。

…いつからわんこと化したのレイヴァン様。キャラ変えた?こんなにストレートな好意でぶつかってくる人だった?

いや、わりとそうだった、かも…?

調子に乗ってよしよしと背中をさすると、ありもしない尻尾がぶんぶん振られている様に見えた。

可愛いなおい…。思わず浮かんだ感想を遠くを見る事で誤魔化す。

いかんいかん。ちゃんとみんな分考えるって約束したんだから、流されちゃダメだ。だからその耳と尻尾を仕舞いなさい。

あ、そうだ。

「レイヴァン様、今日おれ城下町行ったんだけどさ。お土産買ったんだ。一緒に食べよ」

「…誰と行ったんだ?」

「え?あ、カール様と…」

ぎゅーと抱きつかれた腕が強くなる。

「ぐえっ、苦しい…っ」

「・・・・」

あ…これは、あれかな?うーん、流石のおれにも分かるぞ、あれしかない、よな…?

「…今度一緒に行く?」

「っ、あぁ!一緒に行こう」

ぐぐぅ…流されるなマシロ…っ。耐えろマシロ…っ。

あからさまに嬉しそうにするんじゃないっ!

おれこれと一晩一緒なの?
ちゃんと朝まで正気でいられる?

イケメンも度が過ぎると凶器になるんだ、恐ろしい。

「…取り敢えず食べよ」

「あぁ、ではお茶を淹れよう。何を買ってきたんだ?」

「そうかお茶…。レイヴァン様淹れられるの?」

「この塔自体あまり人を入れないからな。大体のものは部屋に揃えているし、飲み物も自分で淹れられる」

そういって奥の棚を開けるとずらりと綺麗に並べられた茶葉やコーヒー、あと少ない食器があった。

「わーっ、すごい!いっぱいある」

「寝る前によく本を読むんだが、その時に気分に合わせて飲んでるんだ」

「へー!おしゃれ。やっぱり格好いい人って普段も格好いいことしてるんだね」

「…そうでもない。マシロは何を買ってきてくれたんだ?」

あ、照れてる。

「はい、これ」

小さな箱をそのまま渡す。

レイヴァン様が蓋を開けると、ふわっと上品なカカオの匂いが部屋に広がった。

「チョコレートか」

「そ、レイヴァン様甘いの好きなイメージ無かったから、甘くないやつ。で、こっちがおれの」

おれはもう一つ小さな箱を開けた。中にはミルクたっぷりのチョコレート。

「甘そうだな」

「おれにはそれ苦過ぎたの。でも、折角買ったんだから一緒に食べたいだろ?」

レイヴァン様が食べてるのただ見てるなんて嫌じゃん。

「…ふふ、そうだな。僕もマシロと食べた方が美味しいと思う」

「あ、おれ苦いの飲めないから」

「あぁ、とびきり甘いココアを淹れてあげよう」

そう言って新品のココアを開けて淹れてくれる。

んー!すっごくいい匂い。

それにしても意外。レイヴァン様もココア飲むんだなー。案外甘いの好きなのかな?

今後はケーキ買ってこよ。











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