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第二章
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「わあ!やっぱり人多いな。さすが王都!」
整備された通りにずらっと並ぶ色んなお店。道だって狭く無いはずなのに、人の多さで圧迫感さえ感じる。
でもそれが栄えてるなって感じでわくわくする。
キョロキョロと田舎者丸出しで歩いていると、肩を引き寄せられた。
「楽しそうで結構だけど、迷子になるのは勘弁してくれるかい」
「ごめんなさい、つい…」
「それにしても多いな。一先ず広場に出よう。眼鏡外れないように気をつけてね」
カール様に肩を抱かれたまま誘導されて広場を目指す。
言われた通り眼鏡をしっかりと押さえた。
この眼鏡は出かける条件にカール様から渡されたものだ。
何でも眼鏡のレンズ越しに見える瞳の色を茶色にてくれる魔具らしい。
そんな魔具あるんだ、って感心してたらわざわざカール様がおれの為に作ってくれたんだって。
ありがてぇ。
おれは魔力量が一定値より上の人以外からは元の…いや、今もだけど平凡男のままだから変装とかいらないんだけど、属性って1人ひとつだから会う度に瞳の色が違うと怪しまれるから見せない方がいいらしい。
で、元々土属性だし髪も土属性特有の茶髪だから茶色の瞳に見える様に作ってくれたんだって。
ありがてぇ。
今は茶色だから付けてなくてもいいんだけど、お城以外には魔力量が多い人はまずいないから誰かに行き先を伝えてれば自由に遊びに来てもいいって事で、頻繁に来るのに眼鏡ある日ない日と違和感になるから付けときなさいとの事だ。
あと、普通に忘れそうだから習慣化しときなさい、と。よく分かってらっしゃる。
ちなみに紫色の時は出ちゃ駄目だって。もしバレた時に闇属性はレイヴァン様だけだってみんな知ってるから言い訳できないし、面倒だから。
そうこうしていると開けたところに出る。
大きな噴水のある綺麗な広場だ。
「やっと落ち着けそうだ。マシロ君気分は悪くない?」
「大丈夫。ねえカール様、あれ何?」
おれは噴水の周りにあるカラフルな色の屋根の屋台を指差した。小さな子供がたくさん集まっている。
「あぁ、あれは王都で有名なお菓子だよ」
「お菓子!ねえ、おれ食べてみたい」
「ふふっ、いいよ食べよう」
やった!王都で有名なお菓子なんてすっごく気になる。
はやる気持ちを抑えられずに屋台に向かって駆け出した。
「そんなに慌てなくても屋台は逃げないよ」
「いいじゃん、カール様も早く。…わっ!」
「言わんこっちゃない!」
前を見ないで走ってたら何かにぶつかって跳ね返された。
後ろに倒れる前に腕を掴まれて引っ張られる。そのまま誰かの腕の中に抱き止められた。
あまりに突然な出来事に心臓がバクバクしてる。
「おい坊主。前見て走れよ、あぶねぇだろ」
上から聞こえた男の人の声にはっとする。
おれこの人にぶつかったんだ。
慌てて離れようと腕を突っ張るがびくともしない。めっちゃ強い。
この人も必死に受け止めてくれたんだと腕から抜け出すのは諦めて顔だけ上げて謝る。
「ごめんなさ…ひっ」
そこには真っ赤な髪に赤い目。眼力だけであらゆる生き物が色んな意味で固まりそうな強面のにいちゃんがいた。
すっごくモテそうなワイルドイケメンだけど、めちゃくちゃ怖そう。
ぶつかっちゃマズい人種の人だ。腕が折れた!治療費寄越せ!って言う感じの人だ。どうしよう。
想像したらビビって涙目になってしまう。
身体もガチガチに固まって動けない。
逸らすに逸らせないまま至近距離で見つめていると、真っ赤な男前がひょいっと片眉を上げた。
「坊主、お前…」
「マシロ君!」
「あ”?…なんだ保護者いんのかよ。たく、気ぃつけろよ坊主。俺がいい奴で良かったな。あと、」
閉じ込められていた腕の中から解放され、一歩後ろに下がって取った距離を顔だけ近付けて詰められる。
そのまま掛けていた眼鏡を指先でくいっと少しずらされた。
「この眼鏡、似合ってねぇぞ」
またな。とあっさり離れてカール様とは反対方向に去って行った。
びっくりした。レイヴァン様やカール様もだけど、イケメンって距離感バグってない?拒否されない自信があり過ぎる。こわ…。
あ、助けてもらったお礼言ってない。
「マシロ君大丈夫かい!急に走るから…っ」
「ご、ごめんなさい」
謝ってばっかりだなおれ。ちょっと浮かれ過ぎてたかも。
「たく…、それにしてもあの男、どこかで…」
「え、カール様知り合い?」
「あ、いや…。あの人だったら今王都にいるはずないし、人違いかな」
「なんだ、お礼言い忘れたから紹介してもらおうと思ったのに」
「いいよそんなの。あの男必要以上に君にベタベタして、抱き締めたり顔を近づける必要あったかい?間違いなく下心だ。あんな変態、もしまた見かけたら直ぐに逃げるんだよ」
はじめましてでちんこ突っ込んできた立場でそれ言うの?
「いやー、おれの事そういう目で見てるのカール様達だけだから。世間では何とも思われない平凡男子なの、おれは」
何でもかんでも同類だと思わないでよね。
「えーっ、でも…」
「あれはおれがぶつかっちゃったから助けてくれたの!はい、この話終わり!カール様、あれ食べよ!」
「うーん…でもなー…」
納得いってない様子のカール様を引っ張って、今度はちゃんとしっかり前を見てお菓子の屋台へと向かう。
その様子を物陰から赤い目が見ているのに、おれ達は全然気が付かなかった。
整備された通りにずらっと並ぶ色んなお店。道だって狭く無いはずなのに、人の多さで圧迫感さえ感じる。
でもそれが栄えてるなって感じでわくわくする。
キョロキョロと田舎者丸出しで歩いていると、肩を引き寄せられた。
「楽しそうで結構だけど、迷子になるのは勘弁してくれるかい」
「ごめんなさい、つい…」
「それにしても多いな。一先ず広場に出よう。眼鏡外れないように気をつけてね」
カール様に肩を抱かれたまま誘導されて広場を目指す。
言われた通り眼鏡をしっかりと押さえた。
この眼鏡は出かける条件にカール様から渡されたものだ。
何でも眼鏡のレンズ越しに見える瞳の色を茶色にてくれる魔具らしい。
そんな魔具あるんだ、って感心してたらわざわざカール様がおれの為に作ってくれたんだって。
ありがてぇ。
おれは魔力量が一定値より上の人以外からは元の…いや、今もだけど平凡男のままだから変装とかいらないんだけど、属性って1人ひとつだから会う度に瞳の色が違うと怪しまれるから見せない方がいいらしい。
で、元々土属性だし髪も土属性特有の茶髪だから茶色の瞳に見える様に作ってくれたんだって。
ありがてぇ。
今は茶色だから付けてなくてもいいんだけど、お城以外には魔力量が多い人はまずいないから誰かに行き先を伝えてれば自由に遊びに来てもいいって事で、頻繁に来るのに眼鏡ある日ない日と違和感になるから付けときなさいとの事だ。
あと、普通に忘れそうだから習慣化しときなさい、と。よく分かってらっしゃる。
ちなみに紫色の時は出ちゃ駄目だって。もしバレた時に闇属性はレイヴァン様だけだってみんな知ってるから言い訳できないし、面倒だから。
そうこうしていると開けたところに出る。
大きな噴水のある綺麗な広場だ。
「やっと落ち着けそうだ。マシロ君気分は悪くない?」
「大丈夫。ねえカール様、あれ何?」
おれは噴水の周りにあるカラフルな色の屋根の屋台を指差した。小さな子供がたくさん集まっている。
「あぁ、あれは王都で有名なお菓子だよ」
「お菓子!ねえ、おれ食べてみたい」
「ふふっ、いいよ食べよう」
やった!王都で有名なお菓子なんてすっごく気になる。
はやる気持ちを抑えられずに屋台に向かって駆け出した。
「そんなに慌てなくても屋台は逃げないよ」
「いいじゃん、カール様も早く。…わっ!」
「言わんこっちゃない!」
前を見ないで走ってたら何かにぶつかって跳ね返された。
後ろに倒れる前に腕を掴まれて引っ張られる。そのまま誰かの腕の中に抱き止められた。
あまりに突然な出来事に心臓がバクバクしてる。
「おい坊主。前見て走れよ、あぶねぇだろ」
上から聞こえた男の人の声にはっとする。
おれこの人にぶつかったんだ。
慌てて離れようと腕を突っ張るがびくともしない。めっちゃ強い。
この人も必死に受け止めてくれたんだと腕から抜け出すのは諦めて顔だけ上げて謝る。
「ごめんなさ…ひっ」
そこには真っ赤な髪に赤い目。眼力だけであらゆる生き物が色んな意味で固まりそうな強面のにいちゃんがいた。
すっごくモテそうなワイルドイケメンだけど、めちゃくちゃ怖そう。
ぶつかっちゃマズい人種の人だ。腕が折れた!治療費寄越せ!って言う感じの人だ。どうしよう。
想像したらビビって涙目になってしまう。
身体もガチガチに固まって動けない。
逸らすに逸らせないまま至近距離で見つめていると、真っ赤な男前がひょいっと片眉を上げた。
「坊主、お前…」
「マシロ君!」
「あ”?…なんだ保護者いんのかよ。たく、気ぃつけろよ坊主。俺がいい奴で良かったな。あと、」
閉じ込められていた腕の中から解放され、一歩後ろに下がって取った距離を顔だけ近付けて詰められる。
そのまま掛けていた眼鏡を指先でくいっと少しずらされた。
「この眼鏡、似合ってねぇぞ」
またな。とあっさり離れてカール様とは反対方向に去って行った。
びっくりした。レイヴァン様やカール様もだけど、イケメンって距離感バグってない?拒否されない自信があり過ぎる。こわ…。
あ、助けてもらったお礼言ってない。
「マシロ君大丈夫かい!急に走るから…っ」
「ご、ごめんなさい」
謝ってばっかりだなおれ。ちょっと浮かれ過ぎてたかも。
「たく…、それにしてもあの男、どこかで…」
「え、カール様知り合い?」
「あ、いや…。あの人だったら今王都にいるはずないし、人違いかな」
「なんだ、お礼言い忘れたから紹介してもらおうと思ったのに」
「いいよそんなの。あの男必要以上に君にベタベタして、抱き締めたり顔を近づける必要あったかい?間違いなく下心だ。あんな変態、もしまた見かけたら直ぐに逃げるんだよ」
はじめましてでちんこ突っ込んできた立場でそれ言うの?
「いやー、おれの事そういう目で見てるのカール様達だけだから。世間では何とも思われない平凡男子なの、おれは」
何でもかんでも同類だと思わないでよね。
「えーっ、でも…」
「あれはおれがぶつかっちゃったから助けてくれたの!はい、この話終わり!カール様、あれ食べよ!」
「うーん…でもなー…」
納得いってない様子のカール様を引っ張って、今度はちゃんとしっかり前を見てお菓子の屋台へと向かう。
その様子を物陰から赤い目が見ているのに、おれ達は全然気が付かなかった。
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