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第二章
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あの告白騒動から3日が経った。
あの後、おれから離れたくないと駄々をこねるレイヴァン様をアレク王子がヘッドロックして学園へ強制連行して行った。
どうやらおれが倒れた?と聞きつけて学園から抜け出して来ていたらしい。
なんだかんだと兄弟仲良くないみたいな雰囲気出してるけど、多分あのレイヴァン様をヘッドロック出来るのはアレク王子くらいだろう。レイヴァン様も本気で抵抗してなかったし。おれからしたら十分仲良いのに不思議だな。
そういえば引きずられて行くレイヴァン様が3日後必ず戻るって言ってたから、きっと今日帰って来るはず。
と言うことは、だ。今夜おれはレイヴァン様に…。しかもあの人おれの事す…好き…っ、らしいし…っ…あの、あー…っ緊張してきた。
「手が止まってるよマシロ君」
「うわっ!あ、ごめんなさい…っ」
そうだ、今カール様の研究室の整理を手伝ってる最中だった。
慌てて持っている本を棚に入れていく。
お城に居てもやることがなく、暇を持て余していたおれにカール様が提案してくれたんだ。
…貴重な資料もおれには到底理解できないものだから手伝いにピッタリだって。やかましいわ。
幸い文字は何となく読めるから、主に出しっぱなしになってる本を戻したり、バラバラに重なってる書類をかき集めたりしかしてないけど、それでもカール様的には助かるそうでお駄賃までくれる。
少ないけど、って言われるけど普通に多い。おれが王都に高級ハイエリクサー買いに来た時に持ってた全財産より余裕で多い。…貧富の差をまじまじと感じてしまう。だがありがたく頂いている。お金、大事。
次に戻す本と同じジャンルを探すと、棚の上の方だ。
ギリギリ届くか届かないかの位置に一瞬考えるが、踏み台をわざわざ持って来るのも面倒でつま先で立って頑張る。
入りそうで入らない。意地になって本棚にへばりついていると、後ろに大きな気配が覆い被さってきてすっと本が押し込まれた。
「こら、横着しないの」
耳の真後ろからカール様の声がする。
「それとも…」
ぐっと身体を密着され、本を仕舞うのに伸ばしていた手をそのまま握り込まれる。まるで本棚とカール様の間に閉じ込められるように後ろから押し付けられて熱が近くなる。
「こういうの、待ってた?」
「待ってません!てか近いです!」
どこでスイッチ入ったの!?その色気を仕舞って下さい…っ!
「いやー言ってみるものだね。こんな可愛い助手が私のためにせっせと働いてくれて、本当に健気で研究も捗るよ」
「そ、それは良かったですね…ははっ、うひぃ…っ」
ちょ、お、お腹…っ、手が!ふへぇ…っ!?
「研究は趣味みたいなものだから特に苦ではないけど、それでも癒しは必要だよね」
「あ、あのカール様、手が、くすぐったいんですけど…あの…あ、あっ服に入って…っ、ちょっと…っセクハラ反対!」
「おや失礼。つい触りたくなっちゃって。でも、マシロ君だって人の事言えないでしょ?」
「はぁ…はあ!?どう言う意味?」
何とか手が服の中から出ていったと思ったら、今度は顎を掴まれて軽く後ろを向かされた。
鼻と鼻が触れてしまうんじゃないかという近さから顔を覗き込まれてビクッとする。
「さっきやらしい事考えてたでしょ?」
ばれていたことに動揺して身体が強張った。するとそんなおれに満足そうににっこりとカール様が笑う。
「マシロ君のエッチ」
言われた言葉に顔が熱くなる。
「ふえっだ、だって…、今日は3日目だし…っ」
「わあ、真っ赤。可愛い。ふふっ、そうだね。今日はレイヴァン殿下との日だものね。でもまだ夜まで時間があるのにもうその時の事考えてたの?今は私と2人きりの時間なのに?妬けちゃうな」
「そんな事言われても…っ」
「そうだ、同意があればいいってルールだし、殿下に会う前にこの瞳青くしちゃわない?」
「え“っ!?それは、だめだと…」
「いやー正直私も鬱憤が溜まっててね。だってお預け何回喰わされたか知ってる?顔を合わす度に瞳の色変えてるしさ、本当にいい加減にして欲しいよ」
「え?あの、ごめんなさい…」
「だからちょっとくらい青くしてもいいよね」
「それはダメだと思う」
流石に茶色から青になってたらレイヴァン様もブチギレちゃうんじゃないかな。
「んーダメか。マシロ君は真面目だね。まあそこがいいんだけど。じゃあ代わりにデートしようよ」
「デートぉ?」
「そう。どうせまだレイヴァン殿下は帰ってこないだろうし、城下町デートしよう。それくらいならいいだろ?」
デートは置いといて、城下町!え、行きたい!行きたい!
「行く!」
「決まりだね」
ちゅっ
一瞬唇を掠め取られてカール様が離れていく。
その後ろ姿がウキウキしていて、キスされたんだと思い至る。
「カール様ぁ…っ!」
「早くおいで。置いていくよ」
油断も隙もない…っ。
あの後、おれから離れたくないと駄々をこねるレイヴァン様をアレク王子がヘッドロックして学園へ強制連行して行った。
どうやらおれが倒れた?と聞きつけて学園から抜け出して来ていたらしい。
なんだかんだと兄弟仲良くないみたいな雰囲気出してるけど、多分あのレイヴァン様をヘッドロック出来るのはアレク王子くらいだろう。レイヴァン様も本気で抵抗してなかったし。おれからしたら十分仲良いのに不思議だな。
そういえば引きずられて行くレイヴァン様が3日後必ず戻るって言ってたから、きっと今日帰って来るはず。
と言うことは、だ。今夜おれはレイヴァン様に…。しかもあの人おれの事す…好き…っ、らしいし…っ…あの、あー…っ緊張してきた。
「手が止まってるよマシロ君」
「うわっ!あ、ごめんなさい…っ」
そうだ、今カール様の研究室の整理を手伝ってる最中だった。
慌てて持っている本を棚に入れていく。
お城に居てもやることがなく、暇を持て余していたおれにカール様が提案してくれたんだ。
…貴重な資料もおれには到底理解できないものだから手伝いにピッタリだって。やかましいわ。
幸い文字は何となく読めるから、主に出しっぱなしになってる本を戻したり、バラバラに重なってる書類をかき集めたりしかしてないけど、それでもカール様的には助かるそうでお駄賃までくれる。
少ないけど、って言われるけど普通に多い。おれが王都に高級ハイエリクサー買いに来た時に持ってた全財産より余裕で多い。…貧富の差をまじまじと感じてしまう。だがありがたく頂いている。お金、大事。
次に戻す本と同じジャンルを探すと、棚の上の方だ。
ギリギリ届くか届かないかの位置に一瞬考えるが、踏み台をわざわざ持って来るのも面倒でつま先で立って頑張る。
入りそうで入らない。意地になって本棚にへばりついていると、後ろに大きな気配が覆い被さってきてすっと本が押し込まれた。
「こら、横着しないの」
耳の真後ろからカール様の声がする。
「それとも…」
ぐっと身体を密着され、本を仕舞うのに伸ばしていた手をそのまま握り込まれる。まるで本棚とカール様の間に閉じ込められるように後ろから押し付けられて熱が近くなる。
「こういうの、待ってた?」
「待ってません!てか近いです!」
どこでスイッチ入ったの!?その色気を仕舞って下さい…っ!
「いやー言ってみるものだね。こんな可愛い助手が私のためにせっせと働いてくれて、本当に健気で研究も捗るよ」
「そ、それは良かったですね…ははっ、うひぃ…っ」
ちょ、お、お腹…っ、手が!ふへぇ…っ!?
「研究は趣味みたいなものだから特に苦ではないけど、それでも癒しは必要だよね」
「あ、あのカール様、手が、くすぐったいんですけど…あの…あ、あっ服に入って…っ、ちょっと…っセクハラ反対!」
「おや失礼。つい触りたくなっちゃって。でも、マシロ君だって人の事言えないでしょ?」
「はぁ…はあ!?どう言う意味?」
何とか手が服の中から出ていったと思ったら、今度は顎を掴まれて軽く後ろを向かされた。
鼻と鼻が触れてしまうんじゃないかという近さから顔を覗き込まれてビクッとする。
「さっきやらしい事考えてたでしょ?」
ばれていたことに動揺して身体が強張った。するとそんなおれに満足そうににっこりとカール様が笑う。
「マシロ君のエッチ」
言われた言葉に顔が熱くなる。
「ふえっだ、だって…、今日は3日目だし…っ」
「わあ、真っ赤。可愛い。ふふっ、そうだね。今日はレイヴァン殿下との日だものね。でもまだ夜まで時間があるのにもうその時の事考えてたの?今は私と2人きりの時間なのに?妬けちゃうな」
「そんな事言われても…っ」
「そうだ、同意があればいいってルールだし、殿下に会う前にこの瞳青くしちゃわない?」
「え“っ!?それは、だめだと…」
「いやー正直私も鬱憤が溜まっててね。だってお預け何回喰わされたか知ってる?顔を合わす度に瞳の色変えてるしさ、本当にいい加減にして欲しいよ」
「え?あの、ごめんなさい…」
「だからちょっとくらい青くしてもいいよね」
「それはダメだと思う」
流石に茶色から青になってたらレイヴァン様もブチギレちゃうんじゃないかな。
「んーダメか。マシロ君は真面目だね。まあそこがいいんだけど。じゃあ代わりにデートしようよ」
「デートぉ?」
「そう。どうせまだレイヴァン殿下は帰ってこないだろうし、城下町デートしよう。それくらいならいいだろ?」
デートは置いといて、城下町!え、行きたい!行きたい!
「行く!」
「決まりだね」
ちゅっ
一瞬唇を掠め取られてカール様が離れていく。
その後ろ姿がウキウキしていて、キスされたんだと思い至る。
「カール様ぁ…っ!」
「早くおいで。置いていくよ」
油断も隙もない…っ。
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