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第一章
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「はぁー…疲れた…」
「よく頑張ったな」
謁見の間から出たところでどっと疲れが来た。ずっと緊張してたから無理もない。
ため息を付くおれの肩を労るようにレイヴァン様が撫でてくれる。
「では私はここで失礼させて頂きます」
「カール様行っちゃうんですか?」
「もう少しマシロ君と居たい気持ちはあるけど、早目に魔具を作らないとね。君も安心して過ごせないだろ?」
確かに、今どのくらいの残量が残ってるのかハラハラ過ごすのは嫌だな。
「今朝の魔力量からして2日は大丈夫だとは思うけど、無理はしないでね。明日の夜には魔具を届けるよ」
「忙しいのにありがとうございます」
「いいよ、いいよ。それと今日から部屋に戻れる範囲だったら出歩いていいよ」
「え!いいんですか!?」
「慣れないうちは誰かと一緒にいて欲しいけど、マシロ君は一部の者以外には普通の少年だし、幾ら王宮内でも条件に当てはまる程の膨大な魔力を保有している者は滅多にいない。さっきの謁見で上部の者や騎士連中も君のことを把握しているだろうし。問題無いだろう」
「わぁ、やった!ありがとうカール様。お城探検しよ♪」
「程々にね。今日は必ず誰かと一緒に行動すること。それじゃ、…明日の夜に君の部屋に迎えに行くから。楽しみにしてるね」
カール様はおれにだけ聞こえるくらいの声でそう言って、頭をポンポンと軽く叩いてから上機嫌に去っていった。
…楽しみにしてるって、なにを?
「マシロ、最後カール魔導士長になんて言われたんだ」
「…え?えと、明日部屋に魔具を持ってきてくれるって」
「…それだけか?」
なんでおれ疑われてんの。レイヴァン様圧が凄い。
楽しみにしてるって言うのがいまいち分からないけど、多分魔具を楽しみにしててって言いたかったんだろう。
「それだけ。魔具、楽しみにしててって」
「…そうか」
全然納得して無さそう。
ま、いっか。そんなことより探検だ!お城に住むっていうから楽しみにしてたんだよな♪やっぱり騎士の訓練とか見たい!
ぐぅ~~…
・・・・・・・・。
テンションが上がったところで、おれの腹の虫が盛大に鳴った。
…これ、前にもあったぞ。
恥ずかしさに顔が熱くなる。
だって!朝ごはん食べたけど、身体バキボキで少ししか食べれなかったんだもん!
「ふふっ…マシロ、先に昼食にしよう」
「そ、そうだね。腹が減っては戦はできぬって言うしね!」
「残念だけど、レイはマシロちゃんとお昼一緒に食べれませーん」
「…何故だ」
「睨んだってダーメ。お前3日も学園抜け出してるの忘れてるでしょ。レイの仕事が溜まってて、今頃書紀君が発狂寸前だよ」
「明日やる」
「駄目だって言ってるだろ。もう体調も良いんだし、戻って仕事片付けろって。生徒会運営は政務の一環だってレイも分かってるだろ。務めを果たせ、レイヴァン」
「…しかしマシロが」
「マシロちゃんは俺が責任持って見てるから、安心して仕事してこい」
「・・・・・・」
あからさまに嫌そうにアレクセイ王子を睨むレイヴァン様。おれならちびりそうな位の眼光を物ともしないで、寧ろ仕方のない子を見るようなアレクセイ王子は流石だ。
こういうやり取り見てると、ちゃんと兄ちゃんと弟って感じがする。
レイヴァン様はどうしても学園に行きたくない様子。そんなに仕事大変なのかな?まあ家の手伝い位しかしたことないおれには、到底想像もつかない事が山程あるんだろうけど。でもサボるのは良くないよな
「レイヴァン様、仕事嫌なの?」
「あ、いや…。そういうわけでは…。ただ僕はマシロが心配で」
「じゃあ仕事してきなよ。おれは大丈夫。アレクセイ王子が居てくれるって言ってるし」
「しかし…、今戻ると暫く学園から出られない」
「暫くってどれくらい?」
「次の休みまでだから、…3日程」
「3日くらいレイヴァン様が居なくても大丈夫だって。明日はカール様が来てくれるし」
「う"っ、…でも本当にいいのか?3日も会えないんだぞ…っ」
「?大丈夫だよ。お仕事頑張ってね」
おれはお昼ご飯を食べて、早くお城探検に行きたい。
目に見えてレイヴァン様が落ち込んでる。やっぱり仕事が嫌なのかな?
「…分かった、学園に戻ろう。その代わり」
「え?」
すっとレイヴァン様の顔が近付いて来たと思ったら、唇に温かい感触がした。え"!?何でちゅーしてんのこの人…っ!?
「う"ぅ… っ、ちょ、レイヴァ…ふぅっ」
ちょっとー!舌入ってきてるんですけどぉ!?温かいものが唾液と一緒に流れ込んで来る。息をするのがやっとで、段々とぼーっとして、されるがままだ。
気持ち良さに翻弄されていると、ごほんっ、と咳払いが聞こえた。
その瞬間、夢から覚めたように思考がクリアになる。
そうだ、アレクセイ王子もいたんだ。
咄嗟にレイヴァン様の胸を叩いて止めさせる。なかなか止めてくれなかったが、何度も抵抗する内に唇が離れていった。その時にお互いの間に引く糸に血の気が引く。
なんてものを人様に見せつけてんだ。
慌てて口元を腕で拭う。
「~~~っ!!レイヴァン、てめぇ…っ」
「ん、これで頑張れる。呼び捨ても嬉しい。マシロ、3日後必ず帰る」
「ずっと仕事してろ、バーカっ!」
颯爽と去っていく後ろ姿に悪態をつく。人前で、それも実の兄ちゃんの前でベロチューかましといて、何であんなに格好良く去れるんだよ。爆発しろ。
「…随分と熱烈な別れだったね。妬けちゃうな」
「あんたの弟に恥じらいってものは無いのか」
「いやー、俺も初めて知ったよ」
「公共の場で突然ちゅーしちゃ駄目だって教えとけよ。兄ちゃんだろ、…です」
しまった。王子様だった。
「ははっ、別にいいのに。そうだね、…兄ちゃんだものね」
ぐぅ~~~~
「あー…、お昼ご飯食べようか」
「…はい」
3日居ないんだ。それにもっと凄い事してるんだし、…猫に噛まれたと思って忘れよう。おれはこの後、お城探検が待ってるんだ。
少し遠い目になりながら、アレクセイ王子と一緒にお昼に向かった。
「よく頑張ったな」
謁見の間から出たところでどっと疲れが来た。ずっと緊張してたから無理もない。
ため息を付くおれの肩を労るようにレイヴァン様が撫でてくれる。
「では私はここで失礼させて頂きます」
「カール様行っちゃうんですか?」
「もう少しマシロ君と居たい気持ちはあるけど、早目に魔具を作らないとね。君も安心して過ごせないだろ?」
確かに、今どのくらいの残量が残ってるのかハラハラ過ごすのは嫌だな。
「今朝の魔力量からして2日は大丈夫だとは思うけど、無理はしないでね。明日の夜には魔具を届けるよ」
「忙しいのにありがとうございます」
「いいよ、いいよ。それと今日から部屋に戻れる範囲だったら出歩いていいよ」
「え!いいんですか!?」
「慣れないうちは誰かと一緒にいて欲しいけど、マシロ君は一部の者以外には普通の少年だし、幾ら王宮内でも条件に当てはまる程の膨大な魔力を保有している者は滅多にいない。さっきの謁見で上部の者や騎士連中も君のことを把握しているだろうし。問題無いだろう」
「わぁ、やった!ありがとうカール様。お城探検しよ♪」
「程々にね。今日は必ず誰かと一緒に行動すること。それじゃ、…明日の夜に君の部屋に迎えに行くから。楽しみにしてるね」
カール様はおれにだけ聞こえるくらいの声でそう言って、頭をポンポンと軽く叩いてから上機嫌に去っていった。
…楽しみにしてるって、なにを?
「マシロ、最後カール魔導士長になんて言われたんだ」
「…え?えと、明日部屋に魔具を持ってきてくれるって」
「…それだけか?」
なんでおれ疑われてんの。レイヴァン様圧が凄い。
楽しみにしてるって言うのがいまいち分からないけど、多分魔具を楽しみにしててって言いたかったんだろう。
「それだけ。魔具、楽しみにしててって」
「…そうか」
全然納得して無さそう。
ま、いっか。そんなことより探検だ!お城に住むっていうから楽しみにしてたんだよな♪やっぱり騎士の訓練とか見たい!
ぐぅ~~…
・・・・・・・・。
テンションが上がったところで、おれの腹の虫が盛大に鳴った。
…これ、前にもあったぞ。
恥ずかしさに顔が熱くなる。
だって!朝ごはん食べたけど、身体バキボキで少ししか食べれなかったんだもん!
「ふふっ…マシロ、先に昼食にしよう」
「そ、そうだね。腹が減っては戦はできぬって言うしね!」
「残念だけど、レイはマシロちゃんとお昼一緒に食べれませーん」
「…何故だ」
「睨んだってダーメ。お前3日も学園抜け出してるの忘れてるでしょ。レイの仕事が溜まってて、今頃書紀君が発狂寸前だよ」
「明日やる」
「駄目だって言ってるだろ。もう体調も良いんだし、戻って仕事片付けろって。生徒会運営は政務の一環だってレイも分かってるだろ。務めを果たせ、レイヴァン」
「…しかしマシロが」
「マシロちゃんは俺が責任持って見てるから、安心して仕事してこい」
「・・・・・・」
あからさまに嫌そうにアレクセイ王子を睨むレイヴァン様。おれならちびりそうな位の眼光を物ともしないで、寧ろ仕方のない子を見るようなアレクセイ王子は流石だ。
こういうやり取り見てると、ちゃんと兄ちゃんと弟って感じがする。
レイヴァン様はどうしても学園に行きたくない様子。そんなに仕事大変なのかな?まあ家の手伝い位しかしたことないおれには、到底想像もつかない事が山程あるんだろうけど。でもサボるのは良くないよな
「レイヴァン様、仕事嫌なの?」
「あ、いや…。そういうわけでは…。ただ僕はマシロが心配で」
「じゃあ仕事してきなよ。おれは大丈夫。アレクセイ王子が居てくれるって言ってるし」
「しかし…、今戻ると暫く学園から出られない」
「暫くってどれくらい?」
「次の休みまでだから、…3日程」
「3日くらいレイヴァン様が居なくても大丈夫だって。明日はカール様が来てくれるし」
「う"っ、…でも本当にいいのか?3日も会えないんだぞ…っ」
「?大丈夫だよ。お仕事頑張ってね」
おれはお昼ご飯を食べて、早くお城探検に行きたい。
目に見えてレイヴァン様が落ち込んでる。やっぱり仕事が嫌なのかな?
「…分かった、学園に戻ろう。その代わり」
「え?」
すっとレイヴァン様の顔が近付いて来たと思ったら、唇に温かい感触がした。え"!?何でちゅーしてんのこの人…っ!?
「う"ぅ… っ、ちょ、レイヴァ…ふぅっ」
ちょっとー!舌入ってきてるんですけどぉ!?温かいものが唾液と一緒に流れ込んで来る。息をするのがやっとで、段々とぼーっとして、されるがままだ。
気持ち良さに翻弄されていると、ごほんっ、と咳払いが聞こえた。
その瞬間、夢から覚めたように思考がクリアになる。
そうだ、アレクセイ王子もいたんだ。
咄嗟にレイヴァン様の胸を叩いて止めさせる。なかなか止めてくれなかったが、何度も抵抗する内に唇が離れていった。その時にお互いの間に引く糸に血の気が引く。
なんてものを人様に見せつけてんだ。
慌てて口元を腕で拭う。
「~~~っ!!レイヴァン、てめぇ…っ」
「ん、これで頑張れる。呼び捨ても嬉しい。マシロ、3日後必ず帰る」
「ずっと仕事してろ、バーカっ!」
颯爽と去っていく後ろ姿に悪態をつく。人前で、それも実の兄ちゃんの前でベロチューかましといて、何であんなに格好良く去れるんだよ。爆発しろ。
「…随分と熱烈な別れだったね。妬けちゃうな」
「あんたの弟に恥じらいってものは無いのか」
「いやー、俺も初めて知ったよ」
「公共の場で突然ちゅーしちゃ駄目だって教えとけよ。兄ちゃんだろ、…です」
しまった。王子様だった。
「ははっ、別にいいのに。そうだね、…兄ちゃんだものね」
ぐぅ~~~~
「あー…、お昼ご飯食べようか」
「…はい」
3日居ないんだ。それにもっと凄い事してるんだし、…猫に噛まれたと思って忘れよう。おれはこの後、お城探検が待ってるんだ。
少し遠い目になりながら、アレクセイ王子と一緒にお昼に向かった。
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