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時間
しおりを挟む俺はそのまま3日ほど悩んでいたらしい。
この家の近くは他に住処はないようで静かだったが、
少し遠くから聞こえる教会の鐘の音からなんとなくの時間感覚を取り戻した。
物理的にはもう自由なのに、
心はいまだに何かに囚われているようだった。
ガシャン
金属の扉が開く。
鍵もかかっていなかったようだ。
「やあ、ユウジ。ただいま」
俺がまだその部屋にいることに安堵したかのように、
少し寝不足で隈ができたルカが入ってきた。
「ルカ、俺…」
「僕は嬉しいよ、ユウジが僕を選んでくれて」
彼に抱き付かれた体温で、ここ数日の悩みも吹き飛んでしまいそうになる。
「これからはここで一緒に暮らそうね」
ルカはポケットから指輪を取り出し、
俺の左手の薬指にはめる。
「…ルカ」
俺はルカが俺の作った幻とさえ錯覚しそうになる。
こんな俺が、普通の幸せなんて掴めるはずないのに。
「…んんっ」
ルカの優しい口づけで、
ちゃんとルカが幻じゃないってわかった。
「ちゃんとユウジの気持ちが定まったら、この部屋からも出してあげるからね」
少し伸びた俺の髪を耳にかけながら、
ルカは優しい声でそう言う。
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