Ωであることを隠してる先輩を無理やり番にしてしまう、いじめられっ子の話。

あかさたな!

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◯7月_中間テスト

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はぁ…。

俺のため息の量は日に日に増えてる気がする。絶対山神のせいだ。


まずいな。


7月になった。そろそろヒートが近い。
今までなら、ヒート用の抑制剤を飲めばなんとか1週間は乗り越えれたけど。
今回は番になってから初めてくるから、どうなってしまうか気が気でない。


しかも最悪なことに7月は大事な中間テストがある。

あまりにも成績の落差があっては生徒会の入れ替えだってあり得る。
だから、みんなはいつも勉学に励んでいる。


水泳の補修から1週間後くらいから、
なんか山神の匂いを嗅ぐだけで頭がボーとしてしまってる気がして、明らかに集中力がそがれてた。


あの時ヒートじゃなくても、番とする営みは気持ちいいと知ってしまった。
きっと年頃なだけだろうし、彼以外としたことないからわからないけど、
あんなに心も体も気持ちよくなっちゃう行為は人をダメにする。


鞄のポケットに入れてる巾着袋を確認する。ヒート用の抑制剤が1週間分入ってる。これはこれで猛烈な吐き気を伴うし、正直体には優しくないかなって思う。

でも1週間も学校を休んでは、支障が出るし、
幸いその薬がよく効いてくれるようで、朝飲めば放課後まではなんとか学校に通える。
逆に覚醒しすぎて、夜は眠れなくなるから辛いんだけど。


でも今回は番がいる。
彼に時々解消してもらえればと、少し弱い薬も処方された。
弱い方の薬なら、体の負担も少ない。
値段で渋ったが、弱い方の薬は先生の善意で渡されて断れなかった。

あの子と仲良くして、今後はこっちにしたほうがいいんじゃないかって。



生徒会の仕事が終わったあと、
山神は何回か話しかけて来た。
前のように無視に近い感じから、俺は二言三言くらいは返事するようになった。

俺の機嫌も治って来たのかと颯太や蓮に笑われるが、結局カツアゲしてるし、それ以上言及してこないのは優しさかもしれない。

まあ、補習の件もあるから、
俺もちゃんと泳げるようになったし、
本当は悪いやつじゃないのかもなと時々心が揺れる。


いやいやいや、思い出せ!あいつに負けて生徒会長の座を取られたことを。
そして、補習の時にされたことを。

今回も各クラスごとのテストと共通テストがある。
つまりリベンジのチャンス!!

ヒートでぼーとしそうな頭も、
図書室で勉強を進めることによって、
人の目で己のハートを引き締めることにした。


「あ、柊先輩テスト勉強ですか。よかったら、僕もご一緒していいですか。」

人が集中してるのに、わざわざ隣に座って話しかけてくる失礼なやつを睨みあげるた。

「…ああ、山神くんか。」

うまい断りの言葉を探そうとするが、なかなか見つからなかった。

「僕もちょうどわからないところがあって、先輩に教えてもらえるとすごく助かるのですが…」

ゔっ、なんか捨てられた子犬みたいな目で見られるんだけど。

でもコイツにマウントを取るチャンスか??先輩として、教えるのも悪くないかもしれない。

「わかった、俺がわかる範囲なら頑張るよ」



…………


正直言うと、その日はめちゃ捗った。

後から調べたら、ヒート前に番のαのフェロモンに安心してたから、体はだいぶ落ち着きを取り戻していたらしい。

じゃあ、俺の最近のもやもやは山神不足によるものなのかな。いや、やっぱ考えるのやめよ。



まあ、それを除いても、普通に勉強会をするのは楽しかった。
彼に教えるのも楽しいし、わからないところは話し合っているうちに解決した。
昨日は俺が好きな外国語の勉強だったけど、今日の数学は彼の得意分野みたいでいつもよりイキイキしてた。

一期生なのに、俺の範囲までカバーしてるのは、さすが生徒会長になっただけあるなと思った。




でも、やっぱ山神不足があるのか、土日で勉強会ができない時はソワソワして寝つきも悪くなる。

あーあ。認めたくないけど。

いつもならヒート前から弱めの薬も飲んでないと集中が阻害されてたのに、今回は山神不足を除けばいつもより過ごしやすい。

もう、早く月曜日にならないかな。






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