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◯6月_水泳の時間
しおりを挟む球技や陸上とかの体育の授業なら、
長袖を着ることによって襟元を隠せる緊急策を思いついた。
番の印のそれは、ジンジンする感じがだいぶ馴染んで、違和感は無くなってきた。
むしろ最近、夢であの日のことを思い出してしまうことがしょっちゅうで、
朝起きると大体間に合ってなかった。
自分でしないといけないんだろうけど、
試しに一人でした時にアイツの顔を思い出すわ、後ろまで触ってしまうわでなかなかな賢者タイムを過ごすことになった。
体育祭の日以来、別段手を出してくることはなく、1ヶ月近くすぎた。
でもあの時イかせて貰えたのに、物足りないと後ろも疼いてるとはいえなかった。
「はぁ…着替えるか」
…………
アイツのせいでため息が止まらないのも一つあるが、
もう一つの原因は今月から体育の授業がプール一択だったことだ。
「やれやれ、最近の若い子は…」と体育のおじいちゃん先生に小言を言われながら、レポートをさっさと出して、職員室から逃げるように出た。
毎回水着忘れましたで、通してるせいか、先生的には恥ずかしくて参加したくないだけだろって解釈されてる。
昨年はなんやかんや水泳の授業には参加してたから。まあ、全然泳げないグループにいたけど。
レポートと優しさで成績に響かないことだけが救いだった。
生徒会の選抜に実技が含まれてなくて、よかったと本当に思った。
「おまえが授業さぼるなんて珍しいな」
外で待ってくれていた蓮が心配そうにそう声をかけてきた。
「たしかに、4月から体育もずっと長袖脱がないし。なんか変だよ」意外にも人のことをちゃんと見てる颯太から鋭い指摘も受けた。
「いや~、本当に毎回うっかり忘れちゃうんだよね、水着」
「ふーん、あっ!俺今日習字教室だ!」
颯太は毎週同じ曜日に習い事に参加しているらしく、それがちょうど今日だったのを時計を見て思い出したようだった。
いつもみたいな寄り道をせず、
俺たちはそのままバタバタと少し早足で帰路に着いた。
…………
そして次の水泳でも忘れ物で休んで、補填のレポートを放課後先生に提出し終えた。
「柊くん、ちょっといいかい」
「はい、なんでしょう」
「君の泳ぎ方についてのレポートは本当に毎回素晴らしい。でもせっかく理論を知ったなら実践したくないか」
「ああ、でも本当にすみません。いつも忘れてしまって」
「よかったら、今からやってみないかい?」
「え…??いや、だから今日持ってきてなくて…」
「そう恥ずかしがらなくていい、1人すごいの捕まえておいたからこの機会に教わるといいさ。きっと去年より泳げるようになってるよ」
えっ!?それは困る。
絆創膏とか貼ったところで、水中はあまりにも無防備すぎる。
そんなところにあんな印があるのだってどう言い訳すればいいかわからない。
「いやいやいや、お手間をとらせて、その人にも申し訳ないですし…」
「大丈夫だ、一期生だけどすごく思いやりがあるやつだ」
「あの本当に…っ」
コンコンコン
形だけの職員室のドアがノックされて、アイツが来た。
「失礼します。1Aの山神海斗です。須藤先生はいらっしゃいますか。」
「おー!来た来た、山神くんこっち」
「あ、はい。」
「……」
まてまてまて、なんで!?!
「こんにちは、柊先輩」
ニコッと人好きな笑顔で挨拶される。先生の前だから絶対猫かぶってるだろ。
「おう…」
「そういえば2人は生徒会で一緒だったね。
そうそう、ほら、山神くんも喜んで引き受けてくれてるし、どうかな??
水着も予備の持ってきてるのかしてくれるって言ってるし…」
「いやいやいや、でも本当っ!間に合ってるんで!!次は忘れないよう頑張ります!!!」
「…実を言うと、特別な理由もないのに、このまま一回も入らないとさすが成績に響く可能性があって、
彼1人に見られるくらいなら1時間半だけ頑張ればあとは目を瞑れると思うから…」
なるほど、先生なりの優しさ。でも人選がコイツなのは不幸中の幸いというべきなのか。
「…わかりました」
俺は成績のために頑張ることを選んだ。
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