上 下
13 / 38

◯6月_水泳の時間

しおりを挟む


球技や陸上とかの体育の授業なら、
長袖を着ることによって襟元を隠せる緊急策を思いついた。


番の印のそれは、ジンジンする感じがだいぶ馴染んで、違和感は無くなってきた。


むしろ最近、夢であの日のことを思い出してしまうことがしょっちゅうで、
朝起きると大体間に合ってなかった。


自分でしないといけないんだろうけど、
試しに一人でした時にアイツの顔を思い出すわ、後ろまで触ってしまうわでなかなかな賢者タイムを過ごすことになった。



体育祭の日以来、別段手を出してくることはなく、1ヶ月近くすぎた。

でもあの時イかせて貰えたのに、物足りないと後ろも疼いてるとはいえなかった。

「はぁ…着替えるか」



…………


アイツのせいでため息が止まらないのも一つあるが、
もう一つの原因は今月から体育の授業がプール一択だったことだ。


「やれやれ、最近の若い子は…」と体育のおじいちゃん先生に小言を言われながら、レポートをさっさと出して、職員室から逃げるように出た。


毎回水着忘れましたで、通してるせいか、先生的には恥ずかしくて参加したくないだけだろって解釈されてる。

昨年はなんやかんや水泳の授業には参加してたから。まあ、全然泳げないグループにいたけど。

レポートと優しさで成績に響かないことだけが救いだった。
生徒会の選抜に実技が含まれてなくて、よかったと本当に思った。


「おまえが授業さぼるなんて珍しいな」
外で待ってくれていた(会計)が心配そうにそう声をかけてきた。

「たしかに、4月から体育もずっと長袖脱がないし。なんか変だよ」意外にも人のことをちゃんと見てる颯太(書紀)から鋭い指摘も受けた。


「いや~、本当に毎回うっかり忘れちゃうんだよね、水着」

「ふーん、あっ!俺今日習字教室だ!」
颯太は毎週同じ曜日に習い事に参加しているらしく、それがちょうど今日だったのを時計を見て思い出したようだった。

いつもみたいな寄り道をせず、
俺たちはそのままバタバタと少し早足で帰路に着いた。



…………



そして次の水泳でも忘れ物で休んで、補填のレポートを放課後先生に提出し終えた。

「柊くん、ちょっといいかい」

「はい、なんでしょう」

「君の泳ぎ方についてのレポートは本当に毎回素晴らしい。でもせっかく理論を知ったなら実践したくないか」

「ああ、でも本当にすみません。いつも忘れてしまって」

「よかったら、今からやってみないかい?」

「え…??いや、だから今日持ってきてなくて…」

「そう恥ずかしがらなくていい、1人すごいの捕まえておいたからこの機会に教わるといいさ。きっと去年より泳げるようになってるよ」

えっ!?それは困る。
絆創膏とか貼ったところで、水中はあまりにも無防備すぎる。
そんなところにあんな印があるのだってどう言い訳すればいいかわからない。


「いやいやいや、お手間をとらせて、その人にも申し訳ないですし…」

「大丈夫だ、一期生だけどすごく思いやりがあるやつだ」

「あの本当に…っ」

コンコンコン

形だけの職員室のドアがノックされて、アイツが来た。

「失礼します。1Aの山神海斗です。須藤先生はいらっしゃいますか。」


「おー!来た来た、山神くんこっち」

「あ、はい。」

「……」

まてまてまて、なんで!?!

「こんにちは、柊先輩」

ニコッと人好きな笑顔で挨拶される。先生の前だから絶対猫かぶってるだろ。

「おう…」

「そういえば2人は生徒会で一緒だったね。
そうそう、ほら、山神くんも喜んで引き受けてくれてるし、どうかな??
水着も予備の持ってきてるのかしてくれるって言ってるし…」

「いやいやいや、でも本当っ!間に合ってるんで!!次は忘れないよう頑張ります!!!」

「…実を言うと、特別な理由もないのに、このまま一回も入らないとさすが成績に響く可能性があって、
彼1人に見られるくらいなら1時間半だけ頑張ればあとは目を瞑れると思うから…」

なるほど、先生なりの優しさ。でも人選がコイツなのは不幸中の幸いというべきなのか。

「…わかりました」

俺は成績のために頑張ることを選んだ。







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

a pair of fate

みか
BL
『運命の番』そんなのおとぎ話の中にしか存在しないと思っていた。 ・オメガバース ・893若頭×高校生 ・特殊設定有

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

迷子の僕の異世界生活

クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。 通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。 その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。 冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。 神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。 2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。

風俗店で働いていたら運命の番が来ちゃいました!

白井由紀
BL
【BL作品】(20時毎日投稿) 絶対に自分のものにしたい社長α×1度も行為をしたことない風俗店のΩ アルファ専用風俗店で働くオメガの優。 働いているが1度も客と夜の行為をしたことが無い。そのため店長や従業員から使えない認定されていた。日々の従業員からのいじめで仕事を辞めようとしていた最中、客として来てしまった運命の番に溺愛されるが、身分差が大きいのと自分はアルファに不釣り合いだと番ことを諦めてしまう。 それでも、アルファは番たいらしい なぜ、ここまでアルファは番たいのか…… ★ハッピーエンド作品です ※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏 ※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m ※フィクション作品です ※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです ※長編になるか短編になるかは未定です

運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー

白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿) 金持ち‪社長・溺愛&執着 α‬ × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω 幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。 ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。 発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう 離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。 すれ違っていく2人は結ばれることができるのか…… 思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいα‬の溺愛、身分差ストーリー ★ハッピーエンド作品です ※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏 ※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m ※フィクション作品です ※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです

処理中です...