Ωであることを隠してる先輩を無理やり番にしてしまう、いじめられっ子の話。

あかさたな!

文字の大きさ
上 下
4 / 38

◯4月_気の迷い

しおりを挟む



今日は人生で1番ついてない日かもしれない。


朝、柊 湊ひいらぎ みなとは共通テストの結果が張り出された掲示板を見ながら自分が生徒会長になれなかったことを知った。

昼、生徒会の顔合わせで、生徒会長が一期生抜擢だったことを知った。
漆黒でサラサラな黒髪は清潔感があって、吊りがちな黒目と少し気怠げな雰囲気のせいで猫のようにすらに見える。でも身長は兄貴くらいあるから、後輩のくせになんか見下げられる感じの目線がムカつく。

山神海斗やまがみ かいと。確かに去年まで見たこない名前だった。
聞いたこともない苗字だったので、調べたら、どうやら特待生入学の庶民らしい。


放課後、生徒会室がある最上階の、その反対側の人気が少ないトイレに篭ってしまって帰れないでいる。今日は本当についてない。


「はあ…。」

ため息に少し熱が混じったものが漏れる。

これは間違いなくヒートだ。
薬ちゃんと飲んだのに。


便座に蓋をして、その上で体育座りにしてる膝をさらに引き寄せる。

ヒートのせいで過敏な体がそんな動作一つが身震いするほど、快感に変換される。

下着はもう見なくてもわかるくらい、Ω体質のせいで、後ろの孔から漏れ出た蜜で濡れてしまっている。

緊急の抑制剤は教室のロッカーに置いてきてしまっていた。

あれが最後の一つなのに。

Ωの抑制剤はなかなか高価な代物で、財閥の端くれの息子のお小遣いで毎月買い続けるのはなかなかギリギリだ。

正直先月の受診で、貯金が底をついた。
親や兄貴に頼めば、いずれは俺がΩだってバレてしまう。


だからさっき、後輩の山神からカツアゲしてきたのに。

「はぁ…やまがみ…」

熱で朦朧としてきた頭はもう、だんだん思考が回らなくなってきた。

自分が何を口走ってしまっているかさえ、認識できなくなっていた。

さっきの彼の寮部屋の匂いを思い出してしまう。
花のような甘く洗練された香り。

今の惨状も、アイツのあんな心地よいフェロモンのせいかもしれないという可能性に少し舌打ちしたくなる。

今日このまま病院に行こうと思ってたのに。


コンコンコン

突然ドアを叩かれ、一瞬意識が覚醒する。
足音にも気づかないほど、ぼーっとしていたらしい。

「入ってます…」

どうにか振り絞って、声を出す。

帰ってくれ。そう願うが、立ち去る気配がない。

「あの、柊先輩大丈夫ですか」

自分だと隠せていないことに対する驚きもあったが、声の主でさらに心臓の鼓動が早まった。

アイツだ。

「山神くんか。俺は大丈夫…」

もしかして、さっきのカツアゲの仕返しでもしにきたのか。
確かにさっきは一人でカツアゲしたわけじゃないから、一対一なら勝てると踏んできたのか。

「大丈夫そうには聴こえませんが…何かできることありますか」

その悪魔の囁きに俺は縋ってしまった。
「教室の俺のロッカーにある薬の袋を持ってきてくれないか」




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

成り行き番の溺愛生活

アオ
BL
タイトルそのままです 成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です 始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください オメガバースで独自の設定があるかもです 27歳×16歳のカップルです この小説の世界では法律上大丈夫です  オメガバの世界だからね それでもよければ読んでくださるとうれしいです

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

孤独を癒して

星屑
BL
運命の番として出会った2人。 「運命」という言葉がピッタリの出会い方をした、 デロデロに甘やかしたいアルファと、守られるだけじゃないオメガの話。 *不定期更新。 *感想などいただけると励みになります。 *完結は絶対させます!

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話

ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。 βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。 そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。 イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。 3部構成のうち、1部まで公開予定です。 イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。 最新はTwitterに掲載しています。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

処理中です...