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知識人と僕
503.海松_MIRU
しおりを挟む道中は予想していたよりも、
天気も手伝ってかなり順調に進んだ。
日中は高い木が生い茂る山道を進み、
夜は交代で眠る。
幼い弟の体力を心配していたが、
正直外を出歩かない僕の方が根を上げそうだった。
初めて陽の光を浴びた川を見たり、
その冷たさに驚いたり、
時々草食動物をみたり、
図鑑で出てきてた山菜や毒キノコを見つけたり、
命懸けの旅なのにどこか浮かれてしまっている自分もいる。
もっと世界を自由に歩けたらいいのに…。
叶うかもわからないそんな夢を抱きながら、
計画通りに少し余裕を持って村の近くの山までたどり着いた。
さあ、いよいよ明日が新月。
村の場所を少し遠くから確認し、少し離れたところで寝床を作る。
村に近づきすぎても、見つかりやすくなってしまうだけ。
「にいちゃん緊張してる?」
「いや、大丈夫だよ。先に寝な。」
自分の手を見ると青くて暗い色をしていた。
手を空にかざすと、
新月が近い暗い夜空に溶け込みそうだった。
じいちゃんの家をみたら、思い出したんだ。
あの日、ばあちゃんと包帯をした男と父と僕の。
世界の理不尽さを知った日のことを。
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