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人とぶつからずに歩けますか

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 できれば人とはあまりぶつかりたくない。誰でもそう思いながら道を歩くのではないだろうか。気をつけていても、時には冷や汗をかくようなことがある。色々な状況を想定して、予め対策を練っておくことが大事である。


「まずは早めの進路変更を」

 これは基本となる衝突を避ける手段である。
 前方から人が歩いてくるのを発見次第、相手の歩いてくるコースを計算し、自分の進路と重ならないように調整する。日常的にほとんどの人がやっていることで、特に意識せずともできるだろう。
 いざ人が近づいてからでは遅い。事前の備えは危機管理の基本と言える。


「相手の動きを読む」

 歩く道はいつも単純な地形ばかりではない。十分なスペースがない場合もあるし、進行方向が多く複雑な道では、難易度も上がる。人と上手くすれ違うためには、人の動きをよく観察するのがよい。目線、顔の向き、服装、体重移動、あらゆる手がかりを参考にして、進路を読む。相手の態度が明らかになれば、その逆を行くようにする。そうすることで最小限の調整で進行方向に進むことが可能だ。


「相手の速度を読む」

 人の歩く速度は一定ではない。動きは読めていたが速さが予想外だったため、上手く避けきれなかったという事態も起こり得るのだ。相手の速度も考慮し、速いと思えば相手に先に行かせ、遅いと思えば相手の先を通過するようにする。その際、自分の方も速度を加減することで、よりスムースに衝突を回避できる。


「思い切ったサイド・チェンジ」

 道に余裕があれば思い切ったサイド・チェンジも有効だ。近づかなければ衝突のリスクもない。視野を広く保ち、どこが狭くどこにスペースが空いているのか、状況を把握しながら歩くようにすることが大切である。 


「スマホに注意」

 手にスマートフォーンを持ちながら歩いてくる人を発見した場合、警戒レベルを上げる必要がある。通常は互いに進路を計算して衝突は回避されるが、スマホ型歩行者がこちらを視野にとらえるのは、かなり距離が迫ってからである。中には画面に気を取られるあまり蛇行したり、こちらの存在を知らずに接近してくる者もいる。最悪の場合、すれ違う直前に方向を変えて急接近してくるというケースもある。
 対策として考えられるのは、口笛を吹いたり、大きくバンザイをしたりして、予め自分の存在を知らせることだ。相手の協力なしでは避けられない衝突もある。


「立ち止まるという選択もある」

 人とぶつからないように注意していても、思わぬところから飛び出してくるものもある。鳩や猫や自転車である。中でも速度のある自転車は危険で、狭い歩道などで歩行者と安全に共存することは難しい。歩行者と同じような理屈で衝突を避けようとしても、失敗した時に傷つくのは生身の歩行者の方である。
「危ない」と思った時には、思い切って立ち止まるという選択もある。自分が石となり相手に一方的に回避策を委ねることにより、認識のズレによる衝突を避けるのだ。これは相手が自転車に限ったことではなく、速い歩行者(駆けてくる人など)に対しても有効である。


「気まずいにらめっこ」

 衝突は相手との認識のズレによって起こりやすいが、波長が合いすぎることによっても起こる。
 よい人(普通の人)ならばまずは自分から衝突を避けようとするだろう。相手が避けようとした方向に、自分が動いてしまうことはないだろうか。それではと反対に動くと、ちょうど同じタイミングで相手も同じ方向に動く。いや失礼と反対に動くと、またも同じタイミングで相手も同じ方向に動く。いやいやいやと反対に動くと、なんとまたまた同じように相手も動いてくる。(ミラー・ステップ)これではまるで相手の邪魔をしているようである。
 一度リズムが合ってしまうとなかなかこの気まずい循環から抜け出せなくなる。その際には、空踏みしたり止まったりして、リズムをずらさなければならない。そして、悪意はないということを「お辞儀」などのジェスチャーを加えて示すことが、歩行者としてのマナーである。


「気まずい大回り」

 ミラー・ステップが行ったり来たりの失敗であるのに対し、オーバー・ステップは一方向に行きすぎる失敗である。
 相手を避けようとして動くと、相手も同じ方向に動いてきた。(ミラー・ステップはその時、逆に動き直すが)今度は相手より更に先を行ってかわしきろうとする。平たく言えば大回りだ。その時、相手が動かない場合、すれ違いは成功する。問題は相手が同じ波長で大回り策を取ってきた場合だ。自分と同じ歩幅、同じ速度で、オーバー・ステップしたとしたら、状況は変わっていない。そして、更に更にとステップを重ねると互いにエンドレスで平行線が伸びて行くことになる。
 この場合に陥ってしまう循環は波長に重ねて自分の中に生じた「意地」によるところが大きい。(すれ違いはメンタルも大事)大回り競争に勝ちきるためには、速度を無理に上げるか、回る角度を極端にマイナスにして回りきるしかない。そうして無事に抜け出せたとしても大変な労力の無駄であり、また現在地が本来進むべき方向から大きく離れてしまうことも、この失敗の痛いところである。
 このような失敗は、相手の間合いに入りすぎること、相手に合わせてしまうことで起こる。
 時には肩の力を抜いて、楽に歩いてみることも必要だろう。


「曲がり角対策」

 すれ違いの難所として曲がり角は避けて通れない道である。見通しのいい道なら事前に構えることもできるが、曲がり角においてはある程度は突然の遭遇を避けられない。(時には、曲がり角からスマホ型歩行者が現れる場合もある)
 対策として考えられるのは、曲がり角に対して少し大回り気味に入っていくことだ。最悪なのは思い切りインコースから入っていくことで、これでは突然の遭遇が衝突に直結してしまう。インとインで波長が合えば危険と肝に銘じよう。
 大きく膨らみながら入っていくことによって、そこで距離、時間、視野を確保できる。一見無駄にみえるコース取りが、衝突リスクを下げるのだ。3つの余裕を手に入れることで、曲がり角であっても少しは通常の道と同じように、事前に備えることができるようになる。


「似た者同士はぶつかりやすい」

 人とぶつからないコツは、相手をよく観察して相手の逆を行くことだ。私はどちらにでも動けるよう柔軟な姿勢を保ちながら歩く。すれ違う前に、だいたい相手の行きたい道は読めるし、そうなればまずすれ違いに失敗することはない。
 しかし、時々どうしても読めない相手に出会うことがある。私は柔軟性を保ちながら相手との距離を詰める。逆を行くために早く態度を決めてほしいのに、相手はなかなか明確に進路を示さず曖昧に接近してくるのだ。(困った人だ)わからない。どっちだ? この人はどっちに行きたいのだ。「どっちだ、どっちだ、どっちだ、どっちだ……」という間に、危険な間合いまできてしまうことがある。
 よく考えてみれば、自分もまた相手から見ればそういう(困った相手)なのではないか。
 波長が合う。つまり、似た者同士はぶつかりやすいということだ。
 もしも、相手から同じような空気を感じ取ったら……。
 時には、自分のやり方を変えてみることも必要。

「私はこちらに行きます」
 明らかな態度を全身から発散してみせることも健全な歩行者の姿勢かもしれない。
 
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