【詩的ショート】メルヘン

ロボモフ

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人生レポート(ゆらぎ星)

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 誰にでもできる簡単な作業だった。単純な謎解きと確認。軽くレポートを書き上げるくらいのこと。ちょっと行って帰るくらいのこと。
 ほとんどは予想の範囲を超えるものはないだろう。当たり前のことを当たり前に報告するまでだ。ある意味これはつまらない仕事だった。つまらないとわかったものを、つまらないと確かめるだけなのだから。
 レポートは順調だ。時々、ペンの運びが重く感じられる。この星の重力に少し戸惑いを覚える。ノイズに干渉されることもある。環境に慣れながら正確に記録すること。簡単な作業であっても手は抜きたくない。

「週末には帰ります」
 それが最初の途中報告だった。



 早々に結論を出して自分のいるべきところに戻りたい。瞬き一つほどで十分と最初は軽く考えていた。見るに値するものなど何一つないと決めつけていた。実際、そのほとんどは見るに堪えないようなものばかりである。いや、それでは生温い表現だろう。ろくでもないもの。と言った方がより的を射ている。

 ところが、その後に現れるものが、私を少し当惑させることになった。普通に見ればそれは何でもないものだが、私の目はそこに微かに美を見出してしまう。この星ならではのトリックに違いないが、私はこれを正確にどう伝えていいか迷っている。もう少し、慎重な検証が必要かもしれない。

「年末には帰れると思います」

「人間暮らしは退屈でしょう」
(適当なとこで切り上げて早く帰っておいで)



 想像の通りだった、特別なことは何もなかったと本当は書きたかった。ずっといるような場所ではないのだ。ところが、私は適当に仕事を終わらせることができなかった。もう少しいるべきではないのか。もう少し書いてみるべきではないか……。ためらいが、新しい視点を開かせてしまう。

 ノイズ交じりのレポートが月日と共に積み重なって、私はすっかり夏の匂いを覚えてしまった。トナカイの角の形とその呼び方を覚えてしまった。レポートを書き始めた頃は、まだ子供だった。今ではこちらでの暮らしの方が、生まれ故郷での時間を上回っている。
(ろくでもない)と映っていた風景は普通に思える。何でもないように思えたものは、特別に美しい風景に見えるようになった。時間が価値観を歪ませて、私の感覚を弄んでいる。
 このレポートの提出期限は、まだ残っているのだろうか。

「その内、帰るかもしれません」



「寄り道もほどほどにね」
(帰りを待っています)

 予想していた通り、ここはとてもイタい惑星だ。
 こちらでの生活は、いつも発狂と隣り合わせだ。
 醜くて、苦しくて、耐え難いかなしみにあふれている。
 直感では「捨てるに相応しい」。
 しかし、私の上に広がる空はそう単純でもない。
 どんよりと曇った中から、突然、光が射す。
 長い雨のあとに虹がかかる。
 闇の中に星が現れる。星が流れると心が揺らぐ。
 手を合わせ願っている間、痛みが消えていることがある。
 もう「大丈夫」と思える瞬間がある。
 どちらが本当なのか……。私はよくわからなくなる。
 理解し難い奇妙な仕掛けに満ちている。
 1つの夏が、私に新しい街を教える。
 1つの夜が(夢が)、私を私でないところに運んでいく。
(原点が動けば、評価もまるで変わってしまう)
 私はもう正確なレポートが書けなくなっている。


「気が向いたら、こちらに遊びにきませんか?」
(美味しいレストランを見つけました)
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