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第十三話 後悔の先に
しおりを挟むあれから2週間が経った。
この状況を打破する魔法具は完成した。
完成したのはいいだが、発表出来るような感じでは無かった。
2人が疲労困憊だからだ。
勿論、私も。
だから、私達はしっかりと1日休んでから、発表に向けて動くことにしたのだ。
1日休んだ後、私は発表の場を整えるように動いた。
その結果、星がこの世界に到達する1週間前までに何とか整えることが出来たのだ。
そして、その会場には世界の人々が集まった。
当たり前だろう。
世界を救う手段を発表すると告知されているからだ。
あと少しで滅びると信じられている世界は絶望的な状況になっている。
それでも希望を持って、ここに来ているのだ。
その会場に私達は来ている。
リサーナはメイド服に身を包み、私の後ろに立っている。
そして、ドレスに身を包んだカナリエが目の前に立っている。
「じゃあ、僕は説明してくるね」
「頑張って下さい、カナリエさん」
「カナリエ。存分にやって来てくれ」
「うん」
そう言い、カナリエは壇上の上に立ったのだ。
立ったカナリエは深呼吸してから説明を始めたのだ。
世界を唯一救うことが出来る魔法具を。
説明は1時間を掛けていたが、疑問を疑う声が多かった。
まぁ、そうだよな。
今回、発表した魔法具は世界を囲み、星から守るというものだ。
この魔法具を見た時、母さんらしいと思った。
破壊ではなく、守るという発想が。
そんなことを思っていると1人だけもの凄く反対している者を見つけたのだ。
あれはカナリエのことを追放した国王か。
カナリエと出会えたことは感謝するが、自分の体裁を守るためにここまで反対するとは本当に救いようがない。
そろそろ止めるか。
「それなら私が保証しましょう」
そう言い、私は壇上に姿を現した。
私の姿を見た者達は驚きの表情を浮かべていたのだ。
私はあの疫病によって、結構有名になった。
「保証とは?」
そう聞いてきたのはあの国王だった。
「この魔法具は2人の天才が作り上げたものという保証だ」
「2人の?もう1人は誰だ?」
「私の母上ですよ」
「カイス殿の母上ですか?お名前を教えて貰っても」
「構いませんよ。私の母上はかつて最高の天才と言われたサスリです」
私の発言を聞いた者達は信じられないという声を上げたのだ。
まぁ、そうだろうな。
私の母上は本当に天才だった。
だが、それはカナリエもだ。
母上が今も生きていたら、気が合っていたことだろう。
2人共似ているからな。
「信じられないようですね。なら、他に証人は出しましょう」
そう言い、私はある者に視線を向けたのだ。
視線を向けられた者は壇上まで上がってきた。
それはかつて母上が愛した人物だったのだ。
「それは儂も保証しよう。カイス殿はサスリの血が繋がった息子だ」
「う、嘘だろ」
「商人というものは信頼が大切だ。それで儂が嘘をつくとでも?」
そう言い、大商人は国王の方に厳しい視線を向けたのだ。
その視線を向けられた国王は明らかに怯えていた。
「い、いえ」
「それならいい」
有力な2人の証人がいるため、2人の天才が作り上げた魔法具は認められた。
その後、解散となったが、私はある人物と待ち合わせし、会いに行くことになった。
カナリエとリサーナには止められたが、これは渡さなければいけない。
私が待ち合わせ場所に到着すると既に待ち人はいたのだ。
「お待たせしました」
「構わない。それで、何用だ?お前のことを殺そうとした人間に」
「少し渡したい物がありまして」
「渡したい物だと?」
「そうです。これです」
そう言い、私はある手紙を大商人の方に差し出したのだ。
それを見た大商人は驚きのあまり固まったのだ。
「ま、まさか、これは」
「これは母上の遺書です。貴方に向けての」
そう言い、私は母上の遺書を大商人に手渡したのだ。
受け取った大商人は震える手で、母上の遺書を読み始めたのだ。
母上の遺書を読み終えた大商人は膝から崩れ落ち、謝罪の言葉を繰り返している。
ただ、繰り返している。
届かないと知りながら。
ここにいても私にすることは何も無い。
それにすべきことも終わった。
そう思い、この場を離れようとすると大商人が止めてきたのだ。
「儂が言えることでは無いこと重々承知している。だが、言わせて欲しい。どうか幸せになってくれ。儂とサスリのように」
「貴方に言われなくても分かっています。これから、私達は幸せになります。これは最後になりますけど、どうか母上との記憶を抱きながら、生きて下さい。私との縁は切れましたが、それでも貴方は私の母上の夫なのですから」
そう言い、私はこの場を去ったのだ。
背中から謝罪の言葉を聞きながら、2人が待つ場所に向かうのだった。
大商人の後悔の先に待っていたのは希望を待っていたのだ。
その希望は十年先だが、耐えられるだろう。
あの大商人には愛しい妻との記憶があるのだから。
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