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第三話 釣書
しおりを挟むそれから1ヶ月が経った。
私はいつも通り、書類の処理をしていると扉がノックされた。
入室の許可を出すと副会長が入ってきたのだ。
「どうした?」
「少し確認してほしいことが」
そう言い、副会長は私にある物を渡してきたのだ。
それは釣書だった。
「まさか、婚約者を作ると?」
「今すぐという訳では無いですが、いずれは」
「それは分かっているが、早くないか?」
「早いと思いますが、見るだけですよ。私は渡したので、これで失礼します」
そう言い、副会長は退室してしまった。
それを確認した私は書類の処理を辞め、いくつかある釣書を見てみることにしたのだ。
見た所、殆ど商人の娘だな。
これは縁を繋ぐためか。
そして、最後の1つは貴族の娘。
この家名は見たことがあるな。
確か、色々な商人から借金していて、没落寸前の貴族。
つまり、借金と引き換えに娘を差し出すということか。
これは無しだな。
婚約を受け入れたとしても後々問題に巻き込まれるからな。
まぁ、婚約はまだいいな。
そう考えた私は釣書を片付けようとするとまた扉がノックされたのだ。
副会長か?
そんなことを思いながら、私は入室の許可を出した。
すると、副会長が入室してきたのだ。
「どうした?何か忘れ物か?」
「いや、違います。実はお客様が」
「お客様?」
「はい。カナリエ嬢が」
「カナリエが?珍しいな」
「どうされますか?」
「特に断る理由は無いから、通してくれ」
「分かりました」
そう言い、副会長が退室した。
その後、直ぐにカナリエが入室してきた。
入室してきたカナリエは純白なワンピースに身を包んでいた。
何気に始めて見たな。
カナリエがネグリジェ以外の姿を。
最初に出会った時もネグリジェだったからな。
そんなことを思っていると私の机までカナリエがやってきたいたのだ。
そのまま、カナリエは1つの紙を机の上に置いたのだ。
「この依頼書。本気なの?」
やっぱりか。
「ああ、本気だ」
そう言い、私はカナリエの目を向いたのだ。
「止まらないみたいだね。なら、追加の報奨は期待するからね」
「任せてくれ」
私の返答を聞いたカナリエは嬉しそうな表情を浮かべていたのだが、机の上の釣書を見て驚きの表情を浮かべていたのだ。
「そ、それは何?」
「これか?」
そう言い、私は釣書に視線を1度落としてからカナリエの方を向いた。
カナリエは黙って頷いたのだ。
「これは釣書だ」
「そ、それで誰かと婚約するの?」
「まだだな。だが、いずれはとは思っている」
「そうなんだ。じゃあ、僕は用事が済んだから帰るね」
そう言い、カナリエは部屋から退室したのだ。
う、うん?
な、何故、機嫌が悪いんだ?
よ、よく分からない。
それから私はそのことを疑問に思いながら、釣書を片付けてから仕事を再開したのだ。
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