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第二十八話 覚悟

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 サリーサから、4人でお茶しないか誘われ、庭の東屋に向かうと、既に3人が座っていた。

 何故か、エノーアと純麗が、ソワソワしていた。

 逆にサリーサは、落ち着いていた。

 な、何なんだ。

 この状況は?

 状況が分からないままお茶が始まったが、誰も話さない。

 サリーサと純麗は、私のことをチラチラ見てくるだけだし、サリーサは、普通にお茶を飲んでいる。

 ど、どうなってるんだ?

 ティーカップが受け皿に置かれる音がよく響いた。

 「前々から聞きたいと思っていたのですか?異世界は、一夫多妻制なんですか?」

 「100年前ぐらいは、そうだったみたいだが、今は一夫一妻制だ。それが、どうしたんだ?」

 「そうなんですか。では、こちらの世界とは違いますね」

 「うん?こちらの世界とは違う?も、もしかしてだが、この世界は、一夫多妻制が普通なのか?」

 「はい、そうですよ。ちなみに、一般市民でも重婚は可能ですよ」

 私とエノーアと純麗は、驚きで固まってしまった。

 私は暫くの間、固まってしまったが、エノーアと純麗は、直ぐに立ち直った。

 2人は、席から立ち上がり、サリーサの手を引いて、庭の方で密集した。

 どうやら、秘密の作戦会議のようだ。

 その間に私も立ち直り、少し温くなった紅茶を飲んだ。

 この世界は、重婚が可能だったのか。

 まぁ、私には、関係がないことだろう。

 少し温くなった紅茶を飲み終える頃に、3人が東屋に戻ってきた。

 戻ってきたが、サリーサの顔はすこし赤く、エノーアの顔は真っ赤で、純麗の顔は心なしか赤かった。

 「ま、正樹さん。正直に聞きます。私のことをどう思っていますか?」

 「守るべき存在だと思っているよ」

 「正樹君、それは何で?」

 「自分の意志で選択したからだ」

 「さ、篠井さんは、わ、私達に、ど、どんな感情を持っていますか?」

 その質問には、瞬時に答えることは出来なかった。

 3人に抱いている感情を。

 あの時感じた不思議な気持ちが湧き出てきたのだ。

 それも勢いよく。

 私は、サリーサの顔を、エノーアの顔を、純麗の顔を見た。

 ああ、そうか。

 私は、サリーサのことが、エノーアのことが、純麗のことが好きなんだ。

 現代日本なら、不純だろう。

 だが、ここは異世界だ。

 3人が、受け入れてくれるなら、私は、関係を発展させたい。

 私は、自分の意志で選択し、覚悟した。

 伝えよう。

 この溢れる感情を。

 私は、3人に頭を下げた。

 いきなりのことに、3人は、驚いた表情を浮かべた。

 「済まない、3人とも。どうやら、私は、相当の鈍感らしい。3人に抱いていた感情は、2ヶ月前に言葉に出来たんだ」

 私は、顔を上げ、3人の目をしっかり見た。

 「私、篠井 正樹は、サリーサに、エノーアに、純麗に好意を抱いている。それも、恋愛感情だ。不純かもしれないが、今の関係から発展させたい」

 私は、片膝立ちをし、3人の方に手を伸ばした。

 「どうか、私の婚約者になってくれ」

 3人の反応は、嬉しそうな表情を浮かべていた。

 「私は、帝国から助けてくれて時から好きでした。ですので、私のことを正樹さんの婚約者にしてください」

 「わ、私は、いつからは分からないですけど、演説の時に好きだと自覚しました。こ、こんな私で良ければ、篠井さんの婚約者にしてください」

 「私は、高校1年の時から好きだったわ。少し不純と思ってしまったけど、異世界だから大丈夫だわ。改めて、不束者だけど、これからよろしくね。正樹君」

 「ありがとう、サリーサ、エノーア、純麗。こんな私の婚約者になってくれて」

 私は、3人を抱き締めた。

 3人は、驚いていたが、直ぐに抱き締め返してくれた。

 温もりを感じる。

 愛しい婚約者達の。

 誰にも奪わせないぞ。

 愛おしいこの温もりを。

 
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