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第九話 ゴミ

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 突然、私の意識は覚醒した。

 周りを見渡すと何も無い。

 何処か知らない地下空間が広がっているだけだ。

 私は警戒し、リボルバーのグリップを右手で握っている。

 すると、後ろから声が聞こえてきた。

 「お前は何だ?人間よ」

 瞬時に私は後ろを振り向いた。

 私の後ろにいたのは人離れたした容姿を持ち、中性的な者がいた。

 神か?

 いや、違う。

 私を転生させてくれた神とは明らかに生物としての格が違う。

 分かった。

 亜神か。

 亜神は神とは全くの別物でその世界にしかいない。

 信仰の対象になることもあるが基本的に普通の生物だ。

 まぁ、強さとしてはドラゴンぐらい。

 「はて、困るとは?」

 「惚けるなよ、人間。私が遊びで全てから悪感情を向けられる魔法を掛けたのに何故かお前だけは効かない」

 全てから悪感情か。

 こいつか。

 シーシアが全てを奪った犯人は。

 怒りが込み上げてくる。

 それにしても悪感情か。

 だから、両親はやんわりと否定したのだな。

 そんなことが分かっても私にするべきことは変わらない。

 長年訓練し続けた技は体に染み付いている。

 だから、リボルバーを瞬時に抜き、引き金を引くことが出来る。

 次の瞬間、亜神は肩を押さえていた。

 「な、何故、人間如きがそんな力を持っている?」

 「簡単な話だ。これが普通の魔法具では無いというだけの話」

 「普通の魔法具では無い?何を言ってる」
 
 「このリボルバーは神からお詫びとして貰った魔法具だ」

 「な、何だと?そんな物をたかが人間が受け取れる訳無い」

 「そうだな、普通の人間ならな。だが、私は神のミスによって死に、この世界に転生した者だ」

 「ハァ?」

 「さて、もう充分生きたろ。直ぐに死んでくれ」

 何かを言おうとしたが、私の手は止まらない。

 引き金を引く手は。
 
 5発撃ち終え、私はシリンダーから空薬莢を出し、一発一発丁寧にリロードしたのだ。

 そして、また撃ち続けた。

 手持ちの弾薬が無くなるまで。

 どれぐらいの時間が経ったかは分からない。

 だが、分かることはある。

 無様な死に様を晒して死んでいる亜神と大量の空薬莢が地面に落ちていることが。

 結構の量を使ってしまった。

 まぁ、大丈夫だな。

 今までの蓄えがあるし。

 さて、帰るか。

 地面に転がっていたゴミ興味が無くなった私は魔法袋から使い捨ての転移石を取り出したのだ。

 そして、それ使用した。

 気が付くと私は自室ではなく、客室にいたのだ。

 おっと、間違えてしまった。

 使用した使い捨ての転移石はシーシアを守る為のものだったな。

 普通なら、直ぐに出ていくのだが、私は寝ているシーシアのところに近づいてしまった。

 シーシアは安らかに寝ている。

 そんなシーシアの綺麗な紫色の髪を触ってしまった。

 さらさらしている。

 原因は取り除いた。
 
 後は時間だな。

 そう思い、私はシーシアの前から離れ、睡眠した。
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