8 / 11
第八話 愛しき君を守るために
しおりを挟む[封印の地]
魔王は、闇の中にいる者に、「誰だ、そこにいるのは分かっているぞ」
闇の中から、黒いフードを被った男が出てきた。
「ほおぅ、あの魔力の圧を知っていて、向かってくる愚かな人間いるとは思わなかった」と言い、世界に向けて投影魔法を展開した。
「さぁ、貴様の死に様は、世界に映されることになった。さぁ、愚かな人間よ、ここに何しに来た?」と、男に魔王は問いを投げかけた。
「そうだな、まずは自己紹介からしよう。俺は、かつて影と呼ばれた暗殺者だ。そして、ここに来た理由か、何、単純な理由だ、好きな女を守るためだよ」と、男は魔王の問いに答えた。
「ほおぅ、人間らしく愚かな理由だな。我は、てっきり意味がない正義とかほざく人間が来ると思っていたよ。貴様は、世界を救いたいとかアホみたいな気持ちは、持っていないのか?」と、男に問いを投げかけた。
「ハハハハハ、そんなくだらない気持ちは、微塵も持ち合わせていない。俺は、小さい時から、人間の闇や欲望を見てきて、そんな経験を持ち、闇の中で生きてきた男が、こんな腐った世界を救いたいなんて思ったりしないだろう?でもなぁ、こんな俺の手を取って、光が当たる場所に連れ出してくれた女がいたんだ。俺は、ただ彼女が笑ってくれるだけで、満足なんだよ。そのためだったら、俺はこんな腐った世界を救おう」と、魔王の問いに男は答えた。
「人間よ、我に勝てると本気で勝てると思っているのか?」と、魔王は男に問いを投げかけた。
「いや、普通に戦ったら負けることぐらいわかっている。だが、俺は暗殺者だ。殺すだけが勝つということではない」と、男は魔王の問いに答えた。
魔王は、魔力を練りながら、「ほおぅ、では見せて貰おうか、貴様の勝ち方というものを」
男は、短刀を構え、飛び道具も準備した。
[ある街]
ガラの悪い男は、「おいおい、余計なことをするなよ、一人犠牲にすることで、全員が助かるんだから黙ってみとけよ」
酒瓶を持った男は、「確かになぁ、さっさと死んでくれないかなぁ。しかも暗殺者なんだよなぁ」
街の反応は良いとは、言えなかった。
[ある部屋]
「べリスさん、ごめんなさい。ごめんなさい。私が、私が、べリスさんのことを好きにならなかったら、戦わず済んだのに」と、泣きながら言葉を吐いた。
聖女は、ふと部屋の端を見たら、剣が置いてあるのが、目に映った。聖女は、涙を拭いて置いてある場所に向かった。そこには、一枚の紙が置いてあった。その紙には、「ナツミへ まずは、君を置いていってしまってすまない。俺は、君を守りたいと夕日の中で笑う君を見て、心の中で決めていたんだ。そして君は、笑顔が一番似合っている。これからもずっと笑っていてくれ。あと、俺が戦いに行ったことを自分のせいにしないでくれ。それは、俺たちの仲を否定してしまうことになる。だから、俺を好きになったことを後悔しないでくれ。最後に、壁に立て掛けてある剣は、君を守ると誓った剣だ。どうか君が持っていてくれ。俺は、君の幸せを心の底から願っているよ。 べリスより」と、書かれていた。
聖女は、立て掛けてあった剣を、これが最後だからと言いながら、泣きながら抱きしめていた。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
寡黙な貴方は今も彼女を想う
MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。
ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。
シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。
言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。
※設定はゆるいです。
※溺愛タグ追加しました。
「婚約を破棄したい」と私に何度も言うのなら、皆にも知ってもらいましょう
天宮有
恋愛
「お前との婚約を破棄したい」それが伯爵令嬢ルナの婚約者モグルド王子の口癖だ。
侯爵令嬢ヒリスが好きなモグルドは、ルナを蔑み暴言を吐いていた。
その暴言によって、モグルドはルナとの婚約を破棄することとなる。
ヒリスを新しい婚約者にした後にモグルドはルナの力を知るも、全てが遅かった。
[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで
みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める
婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様
私を愛してくれる人の為にももう自由になります
病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。
鍋
恋愛
フィオナ・ローレラは、ローレラ伯爵家の長女。
キリアン・ライアット侯爵令息と婚約中。
けれど、夜会ではいつもキリアンは美しく儚げな女性をエスコートし、仲睦まじくダンスを踊っている。キリアンがエスコートしている女性の名はセレニティー・トマンティノ伯爵令嬢。
セレニティーとキリアンとフィオナは幼馴染。
キリアンはセレニティーが好きだったが、セレニティーは病弱で婚約出来ず、キリアンの両親は健康なフィオナを婚約者に選んだ。
『ごめん。セレニティーの身体が心配だから……。』
キリアンはそう言って、夜会ではいつもセレニティーをエスコートしていた。
そんなある日、フィオナはキリアンとセレニティーが濃厚な口づけを交わしているのを目撃してしまう。
※ゆるふわ設定
※ご都合主義
※一話の長さがバラバラになりがち。
※お人好しヒロインと俺様ヒーローです。
※感想欄ネタバレ配慮ないのでお気をつけくださいませ。
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる