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第四十三話 緋桜
しおりを挟む放送が、聞こえた。
放送からは、「王立学園にいる人達、今すぐ避難して下さい。エイシェントトレントが、トレントを率いて、この王都に向かってきています」
エイシェントトレントのいた場所が、王都に近いとは。
普通なら、避難していただろう。
でも、僕は、避難することが出来ない。
元と言っても、エイシェントトレントを行動させたのは、僕の血縁者だ。
緋月は、「エレン様、早く避難しましょう」
僕は、緋月の肩を掴んで、「緋月、ごめん。僕は、エイシェントトレントを倒さないと」
緋月は、「エレン様が、行かなくても」
「確かに、もう僕には、関係ないかことかもしれない。でも、元とはいえ、僕の血縁者が、こんな愚行をしたんだ。少しでも罪滅ぼしをしないと」と言い、僕は、緋月の目を見た。
緋月は、僕が本気だと悟った。
緋月は、「分かりました、エレン様。では、私もついていきます」
僕は、「ダメだ、緋月。危険だから」
緋月は、僕の目を見て、「私は、もう2度とエレン様に怪我をして欲しくないんです。どんなに小さいものでも」
僕は、緋月の覚悟を感じた。
説得は、無理か。
僕は、緋月の肩から手を離し、緋月の両手を握って、「分かった、緋月。でも、1つだけ約束してくれ。怪我をしないことを」
「分かりました、エレン様。その代わり、エレン様も怪我をしないで下さい」と言い、緋月は、握り返してくれた。
僕は、手を離し、魔法袋の中から、武器を取り出し、準備した。
5分程で、準備が終わった。
僕達は、壁を目指して、走り始めた。
壁の上に着くと、王都の東側は、トレントによって、埋め尽くされていた。
トレント達の奥には、一際目立つトレントがいた。
あれが、エイシェントトレントか。
大きいな。
そんなことを思いながら、下を見てみると、既に戦闘が、始まっていた。
冒険者や国の兵士や騎士などが、トレントと戦っていた。
今は、押し負けてないが、いずれ押し返されるだろう。
数が、違い過ぎる。
でも、奥のエイシェントトレントを倒せば、終わる。
僕は、緋月と一緒に壁の外に出た。
緋月の方を向き、「緋月、まずは、一掃しよう」
緋月は、頷いて、答えてくれた。
僕と緋月は、極炎を唱えた。
極炎は、数え切れないほどのトレントを燃やし尽くした。
それでもあまり意味を成さなかった。
新しいトレントが、無限と言っても良いほど、やって来た。
僕は、「緋月、炎属性の5を使ってくれ」
緋月は、「分かりました、主様」
緋月は、胸の辺りで、両手を祈るように握った。
そして、「緋桜」と、呟いた。
すると、トレント達で、埋め尽くされた大地に、赤色、いや、緋色の木が現れた。
その木は、とても美しかった。
木の名前も知らないのに。
緋色の木は、何かを散らしていた。
よく見てみると、それは、特徴的な形をした花びらだった。
その花びらは、下に落ちていき、トレントが、それに触れると、その体を燃やし尽くした。
す、凄い。
あの魔法だけで、トレント達の進撃を止めている。
でも、この戦いは、終わらない。
エイシェントトレントを倒すまで。
こうなったら、僕と緋月で、トレント達の中を進み、エイシェントトレントを倒すしかない。
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