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第六話 元実家からの使者
しおりを挟むあの後、私はお嬢様の父上でも公爵閣下に会い、謝罪を受けた。
それとお嬢様と新国王陛下との婚約も決まったのだ。
なので、姫様とお嬢様は関わる機会が増え、凄く仲良くなったのだ。
一緒の部屋に泊まるぐらいの関係に。
まぁ、お嬢様は昔から妹が欲しいと言っていたからな。
相当嬉しいのだろう。
そんな日々を過ごしていると2ヶ月が経っていたのだ。
私は今、謁見の間にいる。
お嬢様と姫様の護衛として。
今回、謁見の間に来る者はシーリスア帝国から使者だ。
シーリスア帝国はこの大陸の中で一番大きな領土を持ち、一番発展している国。
実はこの国の中で、魔光石が見つかったのだ。
魔光石は魔法具の素材になるのだが、採掘出来る場所が限られているので、希少価値が高い。
それがこの国で見つかったので、シーリスア帝国が交渉の為に使者がやってきているのだ。
その使者を待っているとお姉様と姫様が小声で話し始めたのだ。
「お姉様。一体、シーリスア帝国のどの貴族の方が来るんですか?」
「確か、ウィズリー公爵家だった筈よ」
ウ、ウィズリー公爵だと。
ま、まさか。
いえ、考え過ぎだ。
もう私の姿を知る者も少ないだろう。
だから、何も問題ない。
そんなことを思っていると謁見の間の扉が開かれたのだ。
扉を開いた瞬間、私は冷や汗が出てしまった。
な、何故、あの者なんだ?
1人で焦っているとウィズリー公爵家の使者と目があったのだ。
私と目があったウィズリー公爵家の使者は驚きの表情を浮かべながら、固まっていたのだ。
「な、何故、ここにいるのですか?ナリス様」
「久しぶりだな、ヤーク」
その言葉にこの場にいる者達は驚きの表情を浮かべていたのだ。
「ウ、ウィザーさん。ど、どうゆうことですか?」
姫様の質問に反応しようしたヤークを手で静止させた。
「姫様。ウィザーというのは傭兵の時の名前でして、私の本当の名前はナリス・ウィズリーと申すのです。一応、現当主の血の繋がった息子になります」
その言葉にヤーク以外の者達は更に驚きの表情を浮かべていたのだ。
「ナリス様。早く、ウィズリー公爵家に参りましょう。公爵閣下も待っております」
「それは無理だ」
「な、なぜですか?」
「私は傭兵として、姫様に雇われている。それを勝手に破棄するのは契約違反だ」
「傭兵だとしても貴方のような方がこのような場所にいては」
「ヤーク。私は昔から一度決めたことを曲げないことは知っているだろ。なら、分かってくれ」
そう言い、私はヤークに視線を向けた。
私からの視線で察したヤークは諦めたように溜め息をついたのだ。
「ナリス様は昔からそうですね。分かりました」
「分かってくれたら、良かった」
「ですが、このことは公爵閣下にはお伝えしますから」
「分かった」
「それでは私はこれで。交渉よりも大事な用が出来たので、直ぐにシーリスア帝国に帰還します」
そう言い、ヤークは私だけに頭を下げ、謁見の間から退室したのだ。
ヤークが退室後、私に視線が集まる。
面倒なことになったな。
そんなことを思っていると国王陛下が私の方に視線を向けてきたのだ。
「ウィズリー殿、少し応接室の方にお願い致します」
「分かりました、国王陛下。ですが、私のことはこれまで通り、ウィザーとお呼び下さい」
そう言い、私は応接室に移動した。
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