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第三話 夢
しおりを挟むその日の夜に私は自室でフォルシオンの手入れをしていると扉がノックされた。
入室の許可を出すと質のいい布で作られているネグリジェに身を包んだ姫様が入っていたのだ。
「ウィザーさん。そろそろ私寝ます」
「おやすみなさいませ、姫様。良い夢を」
「はい、おやすみなさい。ウィザーさんも良い夢を」
そう言い、姫様は私の自室から退室したのだ。
良い夢か。
私には見る権利がない。
あんなことをした私には。
1人で後悔しているとファルシオンの手入れが終わっていたのだ。
終わったか。
なら、寝るか。
もうやることないし。
勿論、いつもの確認を終えてから。
そう思い、私はファルシオンを鞘にしまい、ランタンを手に持ったまま、自室から出たのだ。
私が確認しているのは戸締まりと結界を張る魔法具だ。
これらは結構大事なので、しっかりと確認する。
私は離宮内を歩き回り、全ての箇所を確認したのだ。
今日も大丈夫だな。
さて、寝るか。
そう思った私は自室に戻り、ベットで寝ることにしたのだ。
直ぐにファルシオンを抜ける位置に置いて。
休む時に休まなくてはいけないので、私の意識は直ぐに途切れたのだ。
眠っていた筈の私は何故か見覚えがあり過ぎる花畑に立っていたのだ。
私は思わず周りを見渡してしまった。
そして、後ろを振り向いた時、私は気がついたのだ。
綺麗な金色の髪を腰まで伸ばし、純白な服に身を包んだ女性がいることに。
その時、意識にせずに私の体はその女性の方を向いていたのだ。
そこで確信した。
これは夢だと。
夢以外有り得ない。
だって、私の目の前にいる人物は既にこの世に居ないのだから。
そう確信しているとその女性は立ち上がり、私の方を向いてきた。
向いていた女性の容姿はとても整っていた。
絶世の美女だ。
その絶世の美女は私に向かって微笑んでいたのだ。
そして、黄金の花束を持っている。
「ねぇ、 さん。これで 完了ですね」
私は何も言えなかった。
だって、私は。
「どうしたんですか? さん」
何か返答しないと思ったが、話せない。
1言も。
1言も発さない私を見て、目の前にいる絶世の美女は不思議そうな表情を浮かべている。
「まぁ、いいです。これから私達は になるんですから」
そう言い、目の前にいる絶世の美女は私に黄金の花束を私に渡してきたのだ。
「 さん。私、 」
何も聞き取れなかった。
いや、聞き取れなかったのだ。
私自身がそうしたのだろう。
だって、私は。
そこで私の意識は覚醒した。
飛び起きた私の体は汗でびっしょりになっていたのだ。
4時か。
今から寝るのは無理だな。
まぁ、寝れる気分でもないし。
そんなことを思いながら、私は窓の外を見たのだ。
姫様。
私は夢を見ましたよ。
良い夢とは言えませんが。
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