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第六十話 たった1神の味方
しおりを挟む悪魔王の神々に対しての宣戦布告から3日目が経つ。
あれから空に映像は流れていない。
そんな日に私は王城で貴族会議に参加している。
貴族会議は荒れに荒れている。
そんな中、私は黙って座っている。
何も話すことが無いからだ。
黙って座っていると突然感じたのだ。
大きな存在の接近を。
それは会議に熱中していた貴族達も感じている。
そして、その大きな存在は私達の前に現れたのだ。
神々しい光と共に。
現れた存在は明らかに人よりも上位な者だ。
私は魔法袋から手に馴染む斧を取り出そうとしたが、その存在は右手を上げたのだ。
「待ちなさい、私には敵意はありません。私は貴方方人類の味方です。まずは自己紹介をしましょう。私はクリースです」
クリース神だと?
確か、リリが信仰している女神だった筈。
そして、その影響でノラと雫ちゃんも信仰している。
「これは失礼しました。クリース神」
私は姿勢をただし、礼をする。
「気にしないで下さい。いきなり、私が姿を現したのですから」
「ありがとうございます」
私が礼を言うと、クリース神は貴族達の方を向いたのだ。
「挨拶は終わりました。さて、これからのことを話しましょう」
クリース神は話し始めたのだ。
その中には気になる話がある。
それは神器がなければ、神々に傷をつけられないこと。
そうか。
だから、悪魔王は無駄な抵抗と言ったのか。
そうだと知りながらと。
本当に。
1人でそう考えているとクリース神が私の方を見ていたのだ。
「えっと、私に顔に何か?」
「顔には何もついていないですが、少し知らせたいことが。ですが、その前にこの情報を全ての者達に」
少し知らせたいことだと?
それに情報を全ての者に?
意図が分からない。
そのことを疑問に思っているとクリース神は空に映像を浮かんだのだ。
ひと通りの挨拶を終えた後、クリース神は私の方を向く。
「1つ聞きます。貴方は妙に手に馴染む斧を持っていますか?」
「持っています」
「その斧が何故手に馴染むのか疑問に思いませんでしたか?」
「思いました。何処にもありそうな斧なのにこの斧だけが手に馴染むのです」
「そうですか。少し手に馴染む斧を出して下さい」
「分かりました」
私は斧を取り出す。
それを確認したクリース神は手に馴染む斧の方に手を伸ばしたのだ。
「実はこの斧は私が貴方に授けたのです。この時の為に」
その言葉に私達は驚きを隠せない。
さ、授けた?
じ、じゃあ、あの時あったのは。
「今から開放します。本当の姿を」
クリース神がそう言い終えると私が握っていた手に馴染む斧が光に包まれたのだ。
その光が晴れると私の斧は普通の斧ではなく、シンプルながらも銀によって美しい装飾が施された斧に変わっている。
おいおい、ここまで変わるなんて。
そして、これが神器か。
これで、神々を殺せる。
私は意識してないのに握っていたのだ。
握っていると急に現れる。
人類に審判を伝えた神が。
クリース神はかつての同胞に罵られていた。
裏切り者だと言われながら。
「それでも私は人類の味方をします」
その言葉に愚かだとかつての同胞が罵る。
「愚かだとしてもです。普通は無理だと思うでしょう。ですから、私は」
クリース神はかつての同胞から目を離し、私の方を視線を向けてくる。
「貴方をこの世界に呼んだのです」
そのまま私から目を離し、真っ直ぐ向く。
「かつて、異世界で乱世と呼ばれた戦国時代の中で英傑と知られた一騎当千の斧使い。山落 三右衛門の直系の貴方を」
山落 三右衛門?
全く知らないな。
まぁ、私は歴史に詳しく無いからな。
「三右衛門は普通の村人でした。ですけど、彼は斧で1つの山を落とした。それから、彼は山落と名乗り、多くの武勲を立てた。そして、その最後も勇ましいの1言です」
クリース神は私の目を、いや、目の奥を見てくる。
「そんな彼は最後にまた山を落としたのです。それは本当の意味で。その爪痕は今でも見ることが出来るのです」
かつての同胞は嘘だと騒いでいるが、クリース神の目は真剣そのものだ。
本当に存在し、私の祖先なのだな。
なら、期待には答えなければいけない。
人類の味方をしてくれた。
たった1神の女神様なのだから。
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