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第五十六話 馬鹿共の末路
しおりを挟むそれから2週間が経った日に私はブザリー公爵家の客室の中にいる。
ブザリー公爵にノラの護衛を頼まれたのだ。
領地の方で問題が起きたので、向かわなくてはいけないみたいだ。
念の為、いつでも動けるように最低限の武装をしておこう。
全ての準備が終わり、寝ようとしていると扉がノックされたのだ。
ノラとは寝る前の挨拶をしたはずだが。
誰だと思いながら、扉を開けると若い執事見習いがいたのだ。
「少しよろしいですか?」
「構わないが、何用だ?」
「実は買い出しをお願いしたいのです。」
「買い出しだと?こんな時間に」
「はい。どうしても直ぐに必要で」
「1つ聞くが、何故私なのだ?一応、客人という扱いなのだが」
「そ、それはリースナ王国にしか販売してないもので」
そう言いながら、その若い執事見習いはタジタジしていたのだ。
うん、嘘をついているな。
何がしたいか分からないから、取り敢えず泳がせておくか。
「ハァ、分かった。今から買ってくるから、何が必要か書いた紙を渡してくれ」
「あ、ありがとうございます」
若い執事見習いは入所困難のものばかりが書かれた紙を渡してくろ。
露骨過ぎだろ。
まぁ、形だけでも行かないとな。
私は目の前で転移の魔法具を使用し、別の場所に移動する。
移動してから、完全武装をする。
完全武装し終え、静かに息を潜めているとやってきたのだ。
若い執事見習いが。
やっぱりここか。
ブザリー公爵家の中で1番警備が薄い庭園の端っこ。
さて、首謀者は誰かな?
やってきたか。
侵入してきた人物を見た私は腑に落ちたのだ。
大きすぎる木を起こした戦犯のマリーサ王国の第1王子が。
罪になってないのは私が倒したことが秘密になったので、元々大きすぎる木は居ないことになったからだ。
まぁ、そんなことはどうでもいいから早く無力化するか。
ノラが起きる前に。
私は普通に姿を現す。
私の姿を確認した侵入者達は驚きの表情を浮かべていたのだ。
おいおい、敵地でそんなに隙を作るなよ。
そんなに隙を作っているとやられるぞ?
そんなことを思いながら、私は踏み込んだのだ。
侵入者達は私の踏み込みに反応することすら出来ず、懐に入られる。
私は斧の腹で第1王子以外の侵入者達の腹に攻撃する。
攻撃を受けた者達は白目を向きながら、そのまま地面に倒れ込む。
この場に立っているのは私とあの第1王子だけだ。
「何故、貴様なんだ?ノラ嬢は俺のような高貴な存在の隣にいるべきなんだ」
「面白いことを言うな。貴方は多くの者を危険にさせたというのに」
「そんなことはどうでもいい。俺は王族だぞ。たかが伯爵のお前よりも偉いんだぞ」
「ハァ、そうですか。それで、何故侵入したのですか?」
「婚約が出来ないなら、無理矢理するだけだ」
こいつ。
ノラの純潔を奪う気なのか?
ぶち殺してやろうか?
怒りに呑まれそうになったが、何とか押さえた。
ここはノラの実家だ。
こんな馬鹿な者の血で汚すわけにはいかない。
必死に怒りを抑えている私に馬鹿は勝ち誇った表情を浮かべていたのだ。
「来たか。私の勝ちだな」
その言葉と共に現れたのだ。
王立騎士団、いや、その見習い達が。
第1王子の取り巻きだろうな。
その者達は武器を手に取り、ニヤニヤと笑っていたのだ。
本当に馬鹿共だな。
ブザリー公爵家に侵入して。
さて、ブザリー公爵には迷惑が掛かるかもしれないが仕方ないか。
後で謝ろうと考えていると後ろから怒気が込められた声が聞こえてきたのだ。
「何をしているんだ?まさか、私から妻だけではなく、娘まで奪う気か?また卑怯な手を使って」
その声がした方にこの場にいる者達の視線が集まる。
視線の先には額に青筋を浮かべ、怒り心頭な様子のブザリー公爵が立っていたのだ。
その姿を見た馬鹿共は真っ青を通り越し、真っ白になっていたのだ。
「ロガー伯爵。その馬鹿共を無力化してくれ」
「分かりました」
私は踏み込みに馬鹿共の懐に入り、斧の腹で無力化する。
「助かる。ロガー伯爵はそのままノラの護衛を頼む。私はこの馬鹿共と一緒に王宮に行ってくる」
あ、終わったな。
「分かりました。では、私はこれで」
その後、私は朝までノラのことを護衛していたが、何も起きない。
これはブザリー公爵から聞いたことなんだが。
今回の侵入に関与した者達は全て処罰を受けている。
殆どの者は実家から縁を切られ、困窮を極めているみたいだ。
ちなみに領地で問題を起こした者も処罰を受けている。
そして、あの馬鹿共は直ぐに殺された。
死んだ馬鹿共の死体は目も当てられない程の状態だったみたいだ。
私は何もしてないので、多分ブザリー公爵が何かしたのだろう。
まぁ、ブザリー公爵からしたら愛娘の純潔を奪おうとした馬鹿共だからあんな末路になったのだ。
だから、何も思わない。
本当にどうでもいい。
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