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第五十五話 ノラの選択
しおりを挟むあの後、私の集めた証拠を元に貴族会議が開かれる。
その貴族会議の結果、多くの断罪が行われたのだ。
1番影響があったのは王立学園だ。
多くの教師が処分の対象となったのだ。
あ、それとこの国の筆頭公爵家は伯爵家に下げられ、領地も減らされていたな。
私を殺そうと裏工作をしていた次男は廃嫡されたみたいだ。
そして、その取り巻き達も同じような処分を受ける。
それらが落ち着いたのは2年の後期が終わり、長期休暇中だったのだ。
長期休暇を楽しんでいたのだが、私はブザリー公爵に呼ばれる。
ノラと一緒に。
特に断る理由もないので、私はノラと一緒にブザリー公爵家の屋敷に向かう。
屋敷に到着した私達は応接室に通されたのだが、ブザリー公爵の表情は険しかったのだ。
私達が座ると同時にブザリー公爵は自身の愛娘の名前を呼んだのだ。
「ノラ」
「は、はい」
「正式にブザリー公爵家の令嬢にならないか?」
正式にか。
つまり、ノラは平民からブザリー公爵令嬢になるということ。
私はノラの方を向いたのだが、浮かべていた表情は覚悟を決めたものだった。
その表情のまま、ノラはブザリー公爵の方を見たのだ。
「私はブザリー公爵家の令嬢のノラ・ブザリーではなく、1人の魔法具技師のノラになることを選択します」
「何故、なんだ?」
「それが私だからです。ただの魔法具技師じゃなかったら、クルスさんに2度も助けて貰えなかった筈です。そして、出会うことも。勿論、リリさんにもノラさんにもバースナ子爵にも会えなかったでしょう」
そこでノラは1度言葉を止めたのだ。
「そして、こんな今が幸せなんです」
ノラは本当に幸せそうに微笑む。
「そうか。幸せか」
そう呟いたブザリー公爵は諦めたと後悔を混ざったような表情を浮かべる。
「それなら、何も言えないな。私はリースアとノラを幸せにすることは出来なかった愚かな男だ」
「そんなことはないです。多分ですけど、お母様もお空の上で許していると思います」
「そうか、そうか。それなら私は今やるべきことをしなくてはならないな」
ブザリー公爵は私の方、いや、私の目の奥を見てくる。
「ロガー伯爵。貴方は私、いや、私達の愛娘のノラを幸せに出来ると誓えるか?」
「勿論です」
私はブザリー公爵の目の奥を見返す。
「そうか。ロガー伯爵、ノラのことを頼む。私達が幸せに出来なかった分まで幸せにしてくれ」
「お任せ下さい、ブザリー公爵」
「期待しているぞ」
ブザリー公爵は初めて私に優しい表情を浮かべたのだ。
これは信用されているということかな?
分からないが、少なくても認められたということだろう。
そんなことを思っているとブザリー公爵は呟いたのだ。
「なら、あの馬鹿王子との婚約は無論無しだな。まぁ、元々受け入れることは無かったがな」
「お、お父様。婚約って?」
「うん?ああ、王家から婚約の話が来ていただけだ」
王家からの婚約か。
なんか、嫌な予感がするな。
「ロガー伯爵、それは私も同じ予感がする。だから、私が居ないときは護衛を頼むかもしれない。勿論、客室は準備しておく」
ブザリー公爵も感じているのか。
「分かりました。その時は是非協力させて頂きます」
そう答え、私は1人で退室する。
ブザリー公爵から許可は貰ったから一応調べるぞ。
警備が疎かになっている場所を。
そう思い、私はブザリー公爵家の屋敷を周ることにしたのだ。
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