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第四十九話 血の繋がった父親
しおりを挟むマリーサ王国に到着した私はこちら側の王立学園で歓迎パーティーをしてくれたのだ。
歓迎パーティーでの視線は私に集まっている。
まぁ、あの影響だろうな。
その視線の中には私を狙っているものもあったが、これ以上婚約者を増やすことは無い。
こんな私には釣り合わないような素晴らしい婚約者達がいるから。
その後、何事もなく歓迎パーティーを終わり、1日目を終えたのだ。
そして、2日目はノラが待ち望んでいた魔法具工房と魔法具博物館の見学だ。
2日目はノラがとても嬉しそうにしていて、とても可愛かったな。
可愛いノラを見えたので、私も満足出来たのだ。
そんな2日目も終わり、3日目を迎える。
3日目はマリーサ王国の王宮の見学だったのだ。
王宮を見て回っているとある場所に到着する。
「皆さん、これから貴族の方々が使用する通路を通ります」
ガイドはその通路を進み始める。
それに私達はついていく。
ちなみに、私とノラは1番後ろにいる。
ノラと昨日の感想を言い合っていると後ろから声が聞こえたのだ。
「ま、まさか、ノラか?」
急に名前を呼ばれたノラは気になり振り返ったのだ。
それに続き、私も後ろを振り返ったのだ。
後ろには知らない中年男性がいた。
その中年男性は最高級のシルクで作られた服に身を包んでいたのだ。
最高級のシルク。
つまり、この国の高位貴族か大商人だろう。
「え、えっと、確かに私はノラですけど、何で私の名前を知っているんですか?」
「その質問に答える前にもう1つ質問がある。君の母親の名前はリースア・リバスタか?」
「え、な、なんで、お母様の名前を?」
「そ、そうか、そうか。本当にノラなのか。私はブザリー公爵家現当主だ。そして、ノラの父親で、リースアの夫だった者だ」
その言葉に私達だけではなく周りの者達全員だ。
ブザリー公爵家か。
マリーサ王国の中で最も持った公爵家でもあり、王族よりも力を持っていると言われている。
確か、結婚はしていたはずだがそれがノラの母親だったなんて。
「え、えっと、貴方が私のお父様なんですか?」
「ああ、そうだ。色々と事情を話したいから、一緒に来て欲しい。勿論、ロガー卿も来て下さって大丈夫だ」
ノラは私の方に向いてきたので、私は頷いて答える。
「分かりました」
その後、私達はブザリー公爵家の応接室に到着し、事情を聞く。
事情を聞いたのだが、王家が糞すぎると感じる。
まだ赤ん坊だったノラを王家の嫁としたかった為、ブザリー公爵がいない間に色々と工作していたみたいだが、その危機を察知したノラの母親が逃げた。
そして、逃げた先が隣国だったという訳だ。
工作した中にはブザリー公爵との結婚の破棄も含まれている。
それに協力したのが、前ブザリー公爵だ。
どうやら、前ブザリー公爵は古い考え方の持ち主で、平民だったノラの母親をよく思っていなかったみたいだ。
それで、王家と利害の一致して、工作に手を貸したみたいだが、それがブザリー公爵にバレて、親子の縁をきられたみたいだ。
今の前ブザリー公爵は領地で1人寂しく過ごしている。
自身の妻に謝罪しながら。
そう言えば、何故ここまでノラを見つけられなかったんだ?
こんなにもブザリー公爵は探していたのに。
そうか。
分かったぞ。
だから、あのただの敵はノラのことを養子にし、ノラの母親を殺した訳が。
ノラは隣国の公爵家の血が流れていて、悪魔の生贄に相応しい。
話すか。
一応な。
今まで見つからなかった理由を。
ただし、末路は隠して。
私はブザリー公爵とノラに考察を交えて、ただの敵のことを話した。
話を聞き終えたブザリー公爵は小さく呟いたのだ。
「そうか。私は本当に…」
そう呟いたブザリー公爵はノラの方を向いたのだ。
「これで私の話は終わりだ。もう2度とあんなことをおかさないと約束する。だから、ノラ。私と一緒に暮らさないか?」
私の視線もノラに集まる。
「ご、ごめんなさい。ま、まだ整理が出来てなくて。そ、それに私はクルスさんと婚約を結んでいるので」
その言葉によって、ブザリー公爵の険しい視線が私に向けられる。
「ほう。それは一体どうゆうことか説明して貰いたい」
や、やっぱりか。
私はこれまでのことを説明したが、険しい視線のままだ。
「つまり、ロガー卿はバースナ子爵家の婿に入る予定なのだが、ノラの他にもう1人婚約者がいるということか。そして、ロガー卿自体も伯爵」
あ、明らかに怒っているな。
う、うーん?
どうしようか?
「ク、クルスさんのことを悪く言わないで下さい」
ノラはリスのように頬を膨らませていたのだ。
か、可愛いな。
その気持ちはブザリー公爵は同じだったようだ。
「わ、悪くは言ってないぞ。ただ事実を纏めただけだ。私がノラが悲しむようなことをするわけがない」
そう言い、ブザリー公爵はソファーから立ち上がり、私に近づいてくる。
そして、手を差し出してきたのだ。
握手か。
なら、応じないとな。
そう思い、私はソファーから立ち上がり、ブザリー公爵と握手したのだが、様子がおかしい。
バ、バレないように強く握ってくる。
私の手を握り潰す勢いの強さで。
そんなことを知らず、ただ握手をしていると思っているノラは嬉しそうな表情を浮かべていたのだ。
さて、この後どうなることやら。
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