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第四十四話 隠し続けていた秘密
しおりを挟む聖女の治療が終わった後、この小屋には居られないので、屋敷まで連れ帰る。
屋敷に到着したら、彼女を客室に寝かせ、後を任せたのだ。
私が隣にいるわけにはいかないからな。
1人になった私は思わず前髪をかきあげてしまう。
彼女はかつて勤めていた会社の社長の娘なのだ。
だが、彼女は社長から愛されていなかった。
それが何故だったからは分からない。
そんな彼女の名前は木下 雫。
雫ちゃんとは前世では仲良かった。
まぁ、前世の私は雫ちゃんが高校生になる前に私は倒木によって、命を落としてしまう前までは。
雫ちゃんを見たところ、高校生2年ぐらいかな?
どうやら、この世界と前世の世界は時間の流れが違うみたいだ。
そんなことを思っていると騎士の1人がやってきて、報告をしてきた。
それは雫ちゃんの目が覚めたというものだった。
そうか。
向かうか。
騎士に礼を言い、私は雫ちゃんが休んでいる客室に向かう。
その客室の前に到着したので、私は扉をノックする。
入室の許可が出たので、私は客室の中に足を踏み入れたのだ。
客室の中には聖女と雫ちゃんがいる。
「私の名前は木下 雫と言います。まずはお礼を言わせて下さい。私を助けてくれて、本当にありがとうございました。それとあの人達の愚行を止めてくれたことも」
「気にしないで下さい。私は当たり前のことをしたまでです。あ、自己紹介がまだでした。私はロガー伯爵家、現当主のクルス・ロガーと申します」
そう挨拶したのだが、雫ちゃんは驚いた表情を浮かべていたのだ。
「何か驚くことでもありましたか?」
「す、すいません。昔、仲が良かった人と似ていて」
雫ちゃんは頭を下げていたが、何処か悲しそうだ。
仲が良かったか。
なら、話すか。
異世界で出来た大事な婚約者達にも秘密にしていることを。
そう、これは私が隠し続けていたのものだ。
私は心の中で覚悟を決めたのだ。
「少し聞いてもいいですか?」
「はい?構いませんが」
「聖女様のことを信頼していますか?」
「はい、してますよ」
雫ちゃんは聖女の方を向き、微笑む。
微笑みを向けた聖女も雫ちゃんに向かって微笑み返す。
本当に信頼しているみたいだな。
なら、いいか。
「そうか。なら、私がこれまで誰にも言ったことがない秘密を伝えよう」
「そ、そんな秘密を私達にいいんですか?」
「構いませんよ、この秘密は雫ちゃんに関係することだから」
「し、雫ちゃん?」
雫ちゃんは明らかに不思議な表情を浮かべていたのだ。
「改めて、自己紹介をしよう。私は雫ちゃんと同じ世界で死んで、この世界に転生した者だ。転生前の名前は山落 龍輝だ。そして、死因は木に押しつぶされた」
「う、嘘。ほ、本当に山落さんなんですか?」
私は黙って頷いて答える。
それを確認した雫ちゃんはベッドから出たのだ。
「や、山落さん」
雫ちゃんは私に抱きついてくる。
抱きついてきた雫ちゃんを私は抱きしめたのだ。
雫ちゃんが安心するまで。
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