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第四十二話 愚かな選択

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 私は転移の魔法具を使用し、バースナ子爵家の屋敷に帰る。

 朝食まで訓練して待っていたが、何故か王家からの使者が来ていたのだ。

 まだ6時だぞ。

 何か緊急事態でも起きたのか?

 そんな疑問を抱きながら、私は使者のところに向かう。

 すると、私に気がついた使者は直ぐに王城に来て欲しいと伝えてきたのだ。

 本当に緊急事態なのか?

 そんなことを疑問に思いながら、私は了承する。

 私は着替えただけ済ませ、馬で王城に向かう。

 到着した王城はいつもと雰囲気が違う。

 それに、いつもならするはずの持ち物検査すら無しに私は謁見の間に通されたのだ。

 謁見の間に到着した私は驚きと怒りの感情が溢れ出てしまう。

 だって、謁見の間には異世界人がいたのだから。

 「来たか、ロガー伯爵」

 「国王陛下。このような時間から何かご用ですか?」

 「王命を出したくてな」

 「王命ですか?」

 「うむ。バースナ子爵令嬢との婚約を解消する王命を」

 「ハァ?」

 リリとの婚約を解消だと?

 何を言っているんだ?

 私は散々リリとの婚約をかえなかった。

 例え、私が伯爵になったとしても。

 それなのに?

 「なぜですか?」

 「うん?それは異世界の勇者様が望まれているからだ」

 国王陛下は異世界人の方を向いたのだ。

 異世界人は3人だ。

 無駄に高価な鎧に身を包んだ男と剣士の男と聖女のような姿をした女がいる。

 あれが、魅了魔法の使い手か。

 「お前があの女の婚約者か。光栄に思え」

 光栄に思え?

 何言っているんだ?

 こいつは?

 「あの女は俺様の側室にしてやるよ。あ、もう1人の婚約者も俺様の側室にしてやってもいいぞ」

 そう言い、醜く下品に笑ったのだ。

 殺してやろか?

 くそ餓鬼が。

 リリを側室に、ノラをついでに側室にか。

 本当に。

 体が怒りに支配されていると偽聖女がニヤリと笑い、何かをしてきたが、何もおきない。

 まさか、魅了をかけてきたのか?

 どうやら、私には効かないようだ。

 まぁ、好都合だからいいか。

 少し間をおいたから、少し冷静を取り戻す。

 まだ怒っているがな。

 「さて、ロガー伯爵。婚約を解消してくれ」

 「断る」

 「何?」

 国王陛下は右手を上げる。

 すると周りにいた衛兵と騎士達が私のことを取り囲んできたのだ。

 「もう一度聞くぞ。婚約を解消しろ」

 これは愚かな選択だろう。

 この場にいる者達が全員が敵なのだから。

 だが、この選択に後悔は無い。

 私は言葉で答えず、行動で答えた。

 完全武装して。

 「残念だ、ロガー伯爵」

 国王陛下がそう呟くと周りの者達が一斉に襲ってきたのだ。

 だが、私は真っ直ぐに偽聖女に向かう。

 襲い掛かってきた者達の間を縫うように。

 偽聖女は結界を展開させたが、斧一振りで壊すことが出来たのだ。

 剣士と勇者が前に出てきたが、私の踏み込みに反応することすら出来ない。

 偽聖女の懐に潜り込んだ私は魔法袋からある物を取り出す。

 取り出した物を地面に投げつけ、私は耳を押さえる。

 地面にそれが当たると爆音を出したのだ。

 その爆音を間近に聞いた偽聖女は気絶し、地面に倒れ込む。

 よし、作戦通りだ。

 後は制圧だけだ。

 今頃気がついた異世界人の懐に潜り込み、斧の腹で気絶させる。

 「お、俺様達はゆ、勇者なのに」

 そんなことを言い残していたが、何を言っているんだ?

 「わ、私は一体何を」

 「国王陛下。戻られましたか」

 「あ、ああ。すまない、ロガー伯爵」

 「それは良かったです」

 「本当に助かった。それと儂が正常ではないから、あの王命は無効だ」

 「ありがとうございます、国王陛下。ですが、これからが大変ですよ」

 「そうだな。後処理がある。騎士達よ、異世界人を魔力封じの手錠で拘束しろ。そして、地下牢に幽閉しろ。監視も厳重に」

 多分、魅了に掛かっていた者は阿鼻叫喚になっていることだろう。

 まぁ、あまり私に関係にないことだろう。

 そう言えば、聖女が言っていた子はいないな。

 後で尋問で聞き出すか。
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