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第三十九話 伯爵に

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 説教され続ける。

 夕食の時に何かを言いたそうなバースナ子爵には同情の視線を向けられる。

 その日は夕食と風呂以外の時間は説教され続ける。
 
 1回寝てから朝を迎えても私は説教され続けたが、救いの手がきたのだ。

 いつもなら面倒くさいと思う王城から招集されたのだ。

 しかもそれは王命だった為、私は直ぐに向かうしか無い。

 私はまだ怒っているリリ達にこのことを説明し、直ぐに王城に向かう。

 王城に到着すると私は応接室に通される。

 応接室の中には既に国王陛下が待っていたのだ。

 そして、他には国の重役についている貴族達もいたのだ。

 なんでこんなにもいるんだ?

 そんなことを疑問に思いながら、挨拶を終えた後、ソファーに座る。

 「よく来てくれた。ロガー男爵、いや、ロガー伯爵」

 「はい?」

 私は明らかに疑問を浮かべてしまう。

 「は、伯爵ですか?わ、私は男爵の筈ですよ」

 「前まではな。流石に四天王の1人を1度とはいえ倒した者を男爵のままでいさせる訳にはいかない。そして、上級悪魔に圧勝し、裏組織の殲滅に尽力した」

 国王陛下の言葉に私は納得することしか出来ない。

 「確かにそうですね」

 私はソファーから立ち上がり、片膝をつく。

 「国王陛下。伯爵の地位をお受けいたします」

 「うむ」

 国王陛下は満足そうに頷く。

 「さて、これからは相談なのだが、先ずはソファーな座ってくれ」

 そう言われたので、私はソファーに座り直す。

 「相談ですか?」
 
 「そうだ、遠回しの言い方は好きではない。だから、直接言わせて貰う。ロガー伯爵、独立する気はないか?」

 独立する気か。

 「それは一体どういうことですか?」

 「先に言っておく。バースナ嬢との婚約を解消するという話ではない。ロガー伯爵が独立し、バースナ嬢とリバスタ嬢との婚約を続けるということだ」

 「それはバースナ嬢に嫁に来て貰うということですか?」

 「そうだ。バースナ子爵家には親戚がいるから、そこから養子をとれば、何も問題無い。だから、何も拒むものは無いはずだ」

 確かにな。

 だが、私はリリの婿になるために奴隷から開放されたのだ。

 だから、私は独立しない。

 婿になるのだ。

 「申し訳ございません。私は独立は致しません」

 「やはりか」

 「わかっていたのですか?」

 「まぁ、ロガー伯爵は決意が固いからな。だが、これは伯爵までだ」

 「伯爵までとは?」

 「伯爵家の当主が子爵家の婿に入ることはある。だが、それ以上は無理だ」

 そうゆうことか。

 伯爵以上は婿になれないということか。

 その後、用事もないので、私はバースナ子爵家の屋敷に帰る。

 屋敷に到着すると何故か玄関でリリ達が待っていたのだ。

 「続きをしよっか」

 「覚悟を決めて下さい」

 私は抵抗もできず、説教を受けることになる。

 結局、説教が終わったのは夕食前だ。

 夕食を食べ終えた後、私はリリ達に伯爵になったことを伝える。

 リリ達は喜んでいたが、バースナ子爵だけは違う。

 不安そうな表情では無いが、何かを心配しているような表情だった。

 「クルス。これからどうするんだ?」

 「何も変わりませんよ。これからもずっと」

 「それなら良かった」

 多分言いたかったのはこのことなのだろう。

 まぁ、心配ではあるからな。

 私とバースナ子爵との会話にノラは不思議そうな表情を浮かべていたが、リリは気がついているみたいだ。

 気がついたリリは気がついていないノラに耳打ちをしたのだ。

 耳打ちをされたノラは驚いた表情を浮かべた私を見てきたので、少しでも安心するように微笑んだ。
 
 するとノラは安心したような表情を浮かべてくれる。

 
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