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第三十四話 雇われ者
しおりを挟む先端が開かれたが、戦いはこちらの圧倒的な優勢だ。
それは当たり前だろう。
こちら側は日頃から訓練している騎士団で、相手方は冒険者崩れで構成されている。
だから、相手方は有効な反撃が出来ずにやられていく。
この中で私が1番歳下なのかわからないが、襲い掛かってくる者達もいたが、全て無力化する。
傷一つつかずに。
5分もしないで、相手方は2人を残し戦闘不能となる。
騎士の1人が一歩近づこうとした時に嫌な予感がしたのだ。
私は咄嗟に近付こうとしている騎士の襟足を掴んで、無理矢理止める。
そのお陰で騎士の前進は止まる。
その時、音が聞こえた。
何かが斬れる音の後に重い何かが地面に落ちる音が。
それは目の前の騎士がつけていたフルプレートアーマーのブレストプレートだ。
取り敢えず、目の前の騎士は生きてはいるが危険だな。
会敵して時からあの者だけは違うと感じる。
まさかここまでとは思わなかったのだ。
「や、役立たずが。高い金を払っているんだ。全員殺して、儂を無事に脱出させろ」
「分かっている。させてやるから、黙っていろ」
高い金か。
つまり、雇われ者か。
私は他の騎士に戦意喪失している騎士を預け、斧をおろす。
「雇われ者。それは居合い切りか?」
雇われ者は驚いた表情を浮かべた後、嬉しそうな表現を浮かべる。
「ほぉ、まさか見えたのか?」
「ギリギリだが見えた」
「そうか、お前が中級悪魔を倒した男か。これは楽しいことになりそうだな」
雇われ者はニヤリと笑う。
まさか、この世界で居合い切りを使う者と出会えるなんて。
これは心が躍るな。
だって、居合い切りという技術をこの身で受けることが出来るのだから。
私も雇われ者に続き、ニヤリと笑ってしまう。
その表情のまま、私は無造作に雇われ者に近づく。
雇われ者以外の者達は私の正気を失ったような行動に驚いた表情を浮かべている。
だが、雇われ者だけは本当に嬉しそうに笑っていたのだ。
そのまま私は確実に近付く。
そして、ある距離で居合い切りが放たれたのだ。
それは一瞬の出来事だ。
金属が斬れる音が2つと人が地面に倒れる音が。
私は居合い切りをしたのだ。
その結果、私の防具は突破され下に着ていた服も切れた。
だが、傷は無い。
そして、雇われ者は私の居合い切りによって防具も突破され、腹を横薙ぎ斬られている。
地面に倒れ事切れている雇われ者は満足したような表情を浮かべていたのだ。
そらはまるで、自身の死に様に満足しているようだ。
私はそんな雇われ者を見ながら、斧から血を払う。
どうか、安らかに眠ってくれ。
安心してくれ。
貴方の技は私が受け継ぐ。
そして、この技を最高のものにしてみせる。
そう思いながら、私は雇われ者の剣を魔法袋の中にしまう。
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