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第四十五話 秘密を

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 雫ちゃんが落ち着いてから、一旦私は屋敷に帰る。

 説明をしなくてはならないからだ。

 その時、雫ちゃんはもっと話しそうにしていたが、何とか納得してくれたのだ。

 それを確認した私はバースナ子爵家の屋敷に戻る。

 バースナ子爵家の屋敷に到着すると、何故か使用人達がバースナ子爵に謝っていたのだ。

 「あ、あの、これはどういう状況ですか?」

 私の言葉にこの場にいる者達が私の方を向いたのだ。

 「帰ってきたか。少し厄介ごとがあってな」

 厄介ごとか。

 つまり、魅了のことか。

 「多分、それは魅了が原因だと思います。それに関しては解決してきました」

 私の言葉にこの場にいる者達が驚いた表情を浮かべていたのだ。

 「そ、そうか。クルス、色々と説明を頼む」

 「勿論です。そのためにここに戻ってきたのだ」

 その後、私はバースナ子爵と一緒に執務室に移動し、リリ達を呼んだのだ。

 リリ達が執務室に到着したら、ここまであった出来事を話した。

 全て話し終えた後、執務室は静寂に包まれた。

 その静寂を破ったのはバースナ子爵だったのだ。

 「そうか」

 そう呟いただけ。

 さて、これも話しておこう。

 そう考えた私はある魔法具を隠れて発動させる。

 これで、外部に漏れることは無いだろう。

 「立て続けで悪いのですが、実はもう1つ話しておきたいことがあるのですが」

 「まだあるのか。ここまで話したんだ。話してほしい」

 「分かりました」

 そう答え、私は気持ちを落ち着かせる為に深呼吸をする。

 「実は異世界人はもう1人おりまして、その子とは知り合いなのです。前世の」

 その言葉を聞いた3人は驚きのあまり固まってしまう。

 最初に動き出したのはバースナ子爵だ。

 「ぜ、前世?クルス、どうゆうことか説明して欲しい」

 「勿論です」

 そう答え、私はこれまで隠していた事を全てを話す。

 話し終えるとリリ達は困惑と驚きが混ざった表情を浮かべていたが、バースナ子爵は何処か納得したような表情を浮かべていたのだ。

 「だからか」

 そう呟いた後、バースナ子爵は私の目を見てきたのだ。

 「クルス、話は理解出来た。これから、何も変わらないか」

 「変わりませんよ。私は異世界からの転生者ですが、今はクルス・ロガーなのですから。そして、リリ達の婚約者でもあります」

 「そうか、それならいい」

 バースナ子爵は安心したような表情を浮かべ、バースナ子爵につられ、リリ達も安心したような表情を浮かべる。

 私は雫ちゃんをリリ達に会わせるために1度転移の魔法具を使用する。

 到着したら、直ぐに雫ちゃんのところに向かったが、少し屋敷の様子がおかしい。

 騎士達の視線がやたらと私に集まっていたのだ。

 そのことを疑問に持ちながら屋敷内を歩いていると雫ちゃんを見つけたが、何故かソワソワしていたのだ。

 そして、雫ちゃんの近くにいる聖女は生暖かい視線を雫ちゃんに向けていたのだ。

 察しの悪い私でも分かってしまう。

 ま、まさか。

 色々と頭の中で予想していると雫ちゃんが私の方までやってきたのだ。

 近くにやってきて分かったが、雫ちゃんの顔は少し赤かったのだ。

 こ、これは本当に。

 もしかするかもしれない。

 「え、えっと、山落さん、い、いえ、ロガーさん。少し伝えたいことが」

 「つ、伝えたいこと?」

 「は、はい。じ、実はクラリアスさんから聞いたんですけど、ロガーさんには2人婚約者がいるですよね?」

 私は頷いて答える。

 「や、やっぱりそうなんですね。な、なら、私のことをさ、さ、3番目の婚約者にしてください」

 や、やっぱりか。

 わ、私の予想は当たってしまう。

 何とかして断ろう。

 うん、そうしよう。

 「ま、まだ、早いじゃないか。ほら、色々と出会いがまだ早いじゃないか?」

 それを聞いた雫ちゃんは下を向いてしまう。

 「私、凄く悲しかったです。ロガーさんが私の目の前から居なくなってしまって」

 雫ちゃんは顔を上げ、私の目を見てきたのだ。

 その目は真剣そのものだ。

 「私、ずっと好きなんです。だから、だから」

 雫ちゃんの目には涙が溜まっている。

 私は馬鹿だな。

 重婚出来る世界で。

 雫ちゃんは私のことを前世の時から好きだったのだ。

 なら、受け入れる以外の選択肢はない。

 そう覚悟を決めた私は今にも流れそうな涙を手で拭う。

 「分かった、雫ちゃん。これから私の婚約者になってくれ」

 それを聞いた雫ちゃんは満面の笑みを浮かべていたのだ。

 「喜んで」

 雫ちゃんは私の胸に飛び込んでくふ。

 私は飛び込んできた雫ちゃんを抱きしめる。

 その時の雫ちゃんは本当に嬉しそうだ。

 後で、リリ達を納得させないとな。

 だが、今はこの体温を感じよう。

 17年振りの。
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