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第十九話 責任

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 あの後、騎士達によって私は悪魔教の信者として疑われたが、魔法具の映像を見せるとその疑いは無くなったのだ。

 騎士達に説明している時、ノラは私から離れることは無い。

 私の説明が終わった後にノラの説明と生贄にされそうだった被害者だと話している。

 それは映像にも映っていたので、直ぐに納得してくれた。

 そして、悪魔教の信者達は拘束され、檻つきの馬車に押し込まれていたのだ。

 ただの敵となった者はノラを睨めつけていたな。

 睨めつけられたノラは私の袖を強く掴んで、体を震わせていたのだ。

 私は袖を掴んでいる手の上に手を置く。

 「大丈夫だ、ノラ」

 声をかけるとノラの震えがとまり、私の袖から手を離して私の手を握ってくる。

 「ありがとうございます、クルスさん」

 ノラは嬉しそうに微笑む。

 私はその微笑みにリリがいるのに見惚れてしまう。

 その後、私達は詳細を説明するために王城に向かうことになったのだ。

 王城に到着するとノラは別のところに連れられ、私は応接室に案内される。

 応接室で待っていると国王陛下がやってきたのだ。

 おいおい、そこまでなのか。

 国王陛下がやってくるほどの案件なのかよ。

 「クルス男爵、詳細を説明してくれ。これは重要なことだからな」

 国王陛下に詳しく説明をしていたら、遅くなってしまう。

 なんか悪魔教の信者達の罪状の意見まで求められたな。

 逆恨みされても困るので、終身刑を望んだ。

 本当は処刑にしたかったが、一応ここまでノラを育てたからな。

 終身刑に関しては国王陛下も同意見だったみたいだ。

 情報を得たいのだろう。

 結局、私が王城を出たのは夕方だった。

 屋敷に到着すると執事がやってきて、私を応接室まで案内したのだ。

 私の自室ではなく、応接室なんだ?

 そんなことを疑問に思っていると応接室に到着する。

 応接室の中に入るとリリとバースナ子爵と何故かノラがいたのだ。

 何でノラが応接室にいるんだ?

 そんなことを疑問に思っているとバースナ子爵がソファーに座るように言ってきたので、私はソファーに座る。

 ノラは顔を真っ赤にし、リリはそんなノラを見て優しい表情を浮かべていたのだ。

 「ク、クルスさん。そ、その」

 「どうしたんだ、ノラ?」

 「せ、責任を取って下さい」

 ノラは耳まで真っ赤になっていたのだ。

 せ、責任?

 何の?

 と、取り敢えず、聞かないとな。

 私がノラに聞こうとするとバースナ子爵が説明してくれる。

 ノラは天涯孤独の身になり、助けた責任を取れとのこと。

 い、いや、私はリリの婿になるだぞ。

 それな私が重婚なんて出来るのか?

 そのことを疑問に思っているとバースナ子爵が説明してくれる。

 婿の場合でも重婚は出来るみたいだ。

 だが、それには厳しい条件がある。

 今回はその条件を満たしているらしい。

 そ、それなら責任を取らないとな。

 ノラの父親だった者を捕らえ、2度も助けたのだから。

 私は黙って、リリの方を向く。

 リリは意図を理解して、微笑みを浮かべながら頷いて答えてくれる。

 リリの許可は取れた。

 なら。

 私はソファーから立ち上がり、ノラの前まで移動する。

 そして、ノラの前で片膝をつき、右手をノラの方に手を伸ばす。
 
 「ノラ。私にはリリと婚約を結んでいるような男だ。そんな私で良ければ」

 ノラは顔を真っ赤にしながら、差し出した右手を取ってくれたのだ。

 「は、はい。こ、こんな私の方こそよろしくお願いします」

 この日、私は2人目の婚約者が出来たのだ。
 
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