46 / 65
第四十六話 後処理
しおりを挟む体温を充分に感じた後、私は雫ちゃんと一緒にバースナ子爵家の屋敷まで移動する。
挨拶を終えると雫ちゃんはリリ達に連れていってしまったのだ。
どうやら、色々と聞きたいようだ。
だから、残ったのは私とバースナ子爵だけ。
「あの子が前世で仲良かったのか?」
「はい」
「そうか、良い子そうで良かった」
言わないとな。
バースナ子爵には。
「バースナ子爵。大事なことを伝えたいのですが」
「また、何かあるのか?」
バースナ子爵は疲れたような表情を浮かべていたのだ。
まぁ、そんな表情を浮かべてしまうよな。
色々とあったからな。
「実は勝手に婚約を結んでしまったのです」
「なんだ、そういったことか。それなら構わないぞ」
私は思わず啞然としてしまう。
啞然としている私にバースナ子爵は直ぐに賛成した訳を教えてくれる。
まず、雫ちゃんが私に好意を抱いているのはひと目で分かったみたいだ。
そして、雫ちゃんが異世界人というのも関係している。
雫ちゃんは被害者なのだが、あの異世界人がやらかした影響で、一括りにされる可能性が高い。
なので、保護という観点で私との婚約に賛成なのだ。
確かにな。
私の実力は世界に知られている。
それに、今回のことを解決した報奨と言えば、直ぐに受け入れられるだろう。
納得しているとノック無しに応接室の扉が開けられたのだ。
自然と私とバースナ子爵の視線は開けられた扉の方に向く。
そこには怒った様子のリリとノラがいたのだ。
そんな2人の後ろには手でごめんなさいとしている雫ちゃんがいたのだ。
「ど、どうゆうこと?クルス」
「どうゆうことですか?クルスさん」
「な、何のことだ?」
「「ちゃんづけのこと(です)」」
そ、そこを怒っているのか?
「あ、後は若い者達で」
バースナ子爵は応接室から退室してしまう。
ま、また逃げた。
出ていったバースナ子爵の方に視線を向けていたら、私はリリとノラに詰められる。
「ぼ、僕のことをちゃんづけて呼んで」
「わ、私もそう呼んで下さい」
「わ、分かった。リ、リリちゃん。ノ、ノラちゃん」
それを聞いたリリとノラは嬉しそうな表情を浮かべていたのだ。
その後、色々と話を聞いたが、どうやら私と雫ちゃんの婚約は賛成みたいだ。
あ、リリとノラが私の右手が斬り落とされたことを雫ちゃんに話したら、私はまた正座をさせられ、目が笑ってない満面の笑みを浮かべた雫ちゃんに説教される。
その日から1週間が経つ。
色々の後処理が終わったのだ。
まず、雫ちゃんの処遇は私の婚約者となったのだ。
被害者と私が報奨と望んだ為、そこは特に揉めることは無かった。
次に聖女は元の場所に戻る。
それと一緒に騎士達も帰還したのだ。
帰還する時に雫ちゃんは別れを惜しんでいたが、私との結婚式には必ず出席することを約束していたな。
最後は罪をおかした異世界人の処遇だ。
先に言っておこう。
毒杯を賜ることになった。
本当は極刑という声が多かったが、異世界人ということで恩情で毒杯と決まったのだ。
ちなみに、あの剣士に雫ちゃんを閉じ込めたことを聞くと自分の物にしたかったみたいだ。
昔から好意を抱いて、この世界だから監禁したようだ。
剣士は全てを粛々と受け入れたが、偽勇者と偽聖女は無駄な抵抗していたが、意味はなかった。
処刑場に移動した剣士は自ら毒杯を手に持っていたが、偽勇者と偽聖女は拘束され、無理矢理口を開けさせられる。
そして、異世界人達が毒杯を口につける前にいなくなったしまったのだ。
そう、突然消えたのだ。
何の音もなく。
偽勇者と偽聖女を拘束していた拘束具も残して。
それから必死の捜索を行ったが、何も見つからなかった。
まさか、死ぬような行為をすれば元の世界に戻れるのか?
それが本当だとしても雫ちゃんはそのその選択をしないだろう。
だって、あの世界には雫ちゃんの味方はいないのだから。
自分で言うのは少し自意識過剰かもしれないが、私だけが雫ちゃんの味方だった。
そう言えば、何故社長はあんな割に合わない仕事を受けたのだ?
まぁ、どうでもいいか。
死んだ結果、私はこの世界に転生し、リリとノラに出会い、雫ちゃんに再会したのだ。
79
お気に入りに追加
94
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~
冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。
俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。
そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・
「俺、死んでるじゃん・・・」
目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。
新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。
元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。
明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです
俺の召喚獣だけレベルアップする
摂政
ファンタジー
【第10章、始動!!】ダンジョンが現れた、現代社会のお話
主人公の冴島渉は、友人の誘いに乗って、冒険者登録を行った
しかし、彼が神から与えられたのは、一生レベルアップしない召喚獣を用いて戦う【召喚士】という力だった
それでも、渉は召喚獣を使って、見事、ダンジョンのボスを撃破する
そして、彼が得たのは----召喚獣をレベルアップさせる能力だった
この世界で唯一、召喚獣をレベルアップさせられる渉
神から与えられた制約で、人間とパーティーを組めない彼は、誰にも知られることがないまま、どんどん強くなっていく……
※召喚獣や魔物などについて、『おーぷん2ちゃんねる:にゅー速VIP』にて『おーぷん民でまじめにファンタジー世界を作ろう』で作られた世界観……というか、モンスターを一部使用して書きました!!
内容を纏めたwikiもありますので、お暇な時に一読していただければ更に楽しめるかもしれません?
https://www65.atwiki.jp/opfan/pages/1.html
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる