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第十八話 ただの敵

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 ノラと副学長が冒険者達が安全確保した部屋の中に入っていく。

 2人が完全に中に入ると何故か冒険者達が扉を閉めたのだ。

 何で閉めたかを問おうとすると私のことを取り囲み、剣を抜いたのだ。

 「何の真似だ?」

 教師達と冒険者達はその質問には答えずにニヤリと笑うだけ。

 そして、服の中に隠していた悪魔教の逆十字架を取り出したのだ。

 これで納得出来た。

 あの優しそうな笑顔の違和感が。

 副学長、いや、悪魔教の信者の違和感にな。

 「悪魔教の信者達か。つまり、ノラは生贄といったところか」

 「そうだ。そして、お前は生贄ではなく、殺害対象だ」

 「私が何をしたんだ?身に覚えが無いんだが」

 「忘れたとは言わせんぞ。お前がお呼びした悪魔様を殺したのだ。不敬にもな」

 悪魔教の信者達は剣を構える。

 「だから、死んでくれ」

 数にものをいわせて、一斉に突撃してくる。

 冒険者達はまだマシだが、他は駄目だな。

 なら、まずは。

 私は突撃し、1人の男の懐に潜り込む。

 懐に潜り込められた男は完全に経験不足のせいで何も反応出来ない。

 なので私は無防備の腹に斧の腹で殴る。

 斧の腹で殴られた男は何も出来ずに壁まで吹き飛ばされたのだ。

 壁まで吹き飛ばされた男はそのまま意識を失う。

 その方法で経験不足の悪魔教の信者の教師を倒していく。

 後は悪魔教の信者の冒険者だけだな。

 そんなことを思っていると連携をとり始める。

 確かに冒険者としては上手く連携が取れてる。

 だが、私を殺せる程ではない。

 悪魔教の信者の冒険者を圧倒していく。

 傷1つつかずに。

 「ハァ、ハァ、ば、馬鹿が。もう裏工作済みなんだよ。お前が俺達に手を出したというな」

 そう言い残し、最後の1人が気絶する。

 そのことを気にすることなく、私は斧を大きく横に構える。

 そして、そのまま振る。

 振った斧は入口の扉を大きな部屋の中に吹き飛ばしたのだ。

 扉が無くなったので大きな部屋の中がよく見える。

 手足を縛られたノラと悪魔教の逆十字架をつけている副学長、いや、ただの悪魔教の信者。

 やっぱりな。

 私は斧を構える。

 例え知り合いの父親だろうとも今はただの敵だ。

 ただの敵は不慣れな動作で剣を抜いたが遅すぎた。

 その時には私は懐に潜り込む。

 そして、そのまま斧の腹で攻撃する。

 ただの敵は何も抵抗出来ずにその攻撃を受け、そのまま地面に倒れたのだ。

 殺しても良かったが、一応ノラをここまで育てた者だからな。

 ただの敵は動けなさそうだったが、口だけは動くようだ。

 「俺を倒しても意味はないぞ。例え、失敗したしても大丈夫のように事前に工作してきた。お前達が裁かれるだけだ」

 「馬鹿だな、悪魔教の信者達は。この魔法具を何だと思う?」

 私は持ってきた魔法具を見せつける。

 「それは保存の魔法具。な、何でそんなものを?」

 「だから、貴方達の裏工作とやらは何も意味をなさなくなったな。お疲れ様だな、悪魔教の信者達よ」

 音が聞こえてくれる。

 鎧に身を包んだ騎士達が走る音が。

 「どうやら貴方達が事前に準備した者達が来たようだ。次会うのは牢屋の中だろう。勿論、私達は檻の外からだがな」

 「く、くそがぁぁぁあああ」

 ただの敵の戯言を無視し、私はノラの元に向かう。

 そして、ノラの手足を拘束していた縄を解く。

 「立てるか、ノラ?」

 その質問にノラは答えずに私に抱きついてくる。

 「クルスさん、クルスさん。本当に本当にありがとうございました」

 そう言いながら、ノラは涙を流している。

 そんなノラを離すことは出来ず、抱き締め返すことよできないので、慰めるように頭を撫でることしか出来ない。

 
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