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第三十五話 無駄な抵抗

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 感傷に浸っていると最後に残った男が騒ぎ立てる。

 そのまま趣味が悪い装飾が施された短刀で近くにいた騎士に襲い掛かったが、直ぐに制圧されていたな。

 無駄な抵抗をして。

 あんな体で機敏に動けるわけがないのに。

 そんなことを思っていると騎士達が息のある者達全員を拘束し終わっていたのだ。

 その後、作戦は無事に終了したのだ。
 
 今回の作戦で死亡者は出なかった。

 相手方があまり強く無かったからな。

 当然、あの雇われ者は除くが。

 後処理を終える頃には日が上がり始めていたのだ。

 今日は徹夜をしてしまったな。

 まぁ、1日ぐらいの徹夜は何も問題ない。

 全て終わった後、私は屋敷に帰る。

 今回のことがバレると後々面倒くさいと思い、黙って貰うことにした。

 その後、私はいつもの日常に戻る。

 そして、王立学園の2年目が始まったのだ。

 王立学園は特に何も問題無く、1ヶ月が経つ。

 その日、私は何故かバースナ子爵に呼ばれたのだ。

 呼ばれた私は執務室の中にいるんだが、バースナ子爵刃見たことが無い表情を浮かべている。

 本当に何だ?

 私、なにかしたか?

 色々と考えているとバースナ子爵が机の上に新聞が置かれている。

 「まずはこれを読んでみてくれ」

 何だろうと思いながら、机の上に置かれた新聞を読んでみると驚いてしまう。

 な、なんでだ?

 黙ることを褒美としたはずだ。

 な、なのに。

 なんで新聞にあのことを書かれているんだ?

 「このことは本当か?」

 「ほ、本当です」

 「そうか。なら、裏組織の制圧に参加し、居合い切りの範囲に無造作に突っ込んだのか?」

 俺の頷いて答える。

 「バ、バースナ子爵。このことは?」

 「まだリリ達は知らないが、いずれ知るだろう」

 ま、まだマシだ。

 今から言い訳を考えれば。

 言い訳を必死に頭の中で考えているといきなり扉が開いたのだ。

 普通ならおかしい。

 ここの屋敷の主であるバースナ子爵が入室の許可を出してないのに、扉が開くなんて。

 いつもなら誰かを確認するが、私は後ろを振り向けない。

 だって、バースナ子爵が驚いた表情を浮かべていたから。

 後ろを振り向けていない私の両肩に小さく華奢な手が置かれる。

 両肩に置かれている小さく華奢な手は左右で違う人物だと感じることが出来たのだ。

 ひ、冷や汗が止まらない。

 「後ろを振り向いて、クルス」

 そう声を掛けられた私は振り向くしかない。
 
 私はまるで錆だらけのブリキのおもちゃのようにぎこちなく後ろを振り向く。

 後ろを振り向いたが、後悔する。

 だって、そこには目が全く笑ってない笑顔を浮かべているリリ達がいたからだ。

 「クルス。あの件のことを説明して」

 「そうですよ、クルスさん。特に居合い切りのことをきちんと」

 あ、あれ?

 リリは少し気弱だったはず。

 な、なのに?

 何でこんなことに?

 「あ、後は若い者達で」

 バースナ子爵は逃げたのだ。

 執務室に私を置いて。

 まぁ、確かにこれは私が悪いから文句は言えないな。

 私はリリ達にバースナ子爵の執務室の床に正座をさせられる。

 なんで、俺は異世界で正座をしているのだろう?

 てか、リリ達は正座を知っているだな。

 そんなことを思っているとリリ達に弁明を聞かれたが、必死に考えた言い訳は何も意味をなさない。

 本当に無駄な抵抗だったのだ。

 逆に怒らせたまであった。

 その後、俺はバースナ子爵に夕食まで呼ばれるまで、私は怒られ続けたのだ。

 そして、夕食を食べた後もそれは続く。

 結局、寝る前まで続いたのだ。

 最初の方は説教だったが、最後の方は心配の声が多かったが。

 今回はまだ防具が壊れたぐらいだったが、あのことを知られたらヤバいな。

 絶対に隠さないと。
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