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第七話 お嬢様と
しおりを挟むあの後、私はシルク工場で働き始める。
働き始めたが、屋敷の中にいることもある。
私が勝手な行動をしないように御館様がそう命じたのだ。
そんな中、私はお嬢様と関わることが増えた。
偶にお茶をご一緒することもある。
シルク工場の仕事が終わり、屋敷の中を歩いていると聞き慣れた声が聞こえてくる。
「ク、クルス」
私は聞き慣れた声がした方を振り向く。
そして、姿勢を正す。
「どうかされましたか?お嬢様」
「か、買い物に行きたいから、付き合ってほしい」
「私ですか?」
「う、うん。も、もしかして、仕事残っている?」
「いえ、残っておりませんよ。私で良ければお付き合いさせて頂きます」
「あ、ありがとう。じ、じゃあ僕は準備してくるからさ、先に馬車で待っていて」
そう言いながら、お嬢様は自室に向かって小走りで去ってしまう。
私は1度自室に戻り、執事服に着替える。
あ、私はあの小屋から移動して屋敷の中に専用の部屋に移動している。
あのままでは駄目だと御館様に言われて。
全ての準備、いや、斧を持っていかないと。
万が一のことがあるかもしれない。
お嬢様は御館様にとって大切なお方だ。
何かがあってからは遅いからな。
私は斧を入れている魔法袋を持ち、お嬢様が用意した馬車まで移動する。
馬車に到着したが、まだお嬢様は来てないようだ。
お嬢様のことを待っていると、何処か足音が聞こえてくる。
足音が聞こえた方を向くとシルクで作成されたワンピースに身を包んだお嬢様がやってきたのだ。
「お、お待たせ、クルス」
お嬢様は少し顔が赤かい。
「いえいえ、待っておりません。では、お嬢様参りましょう」
私はお嬢様のことをエスコートするために右手を伸ばす。
「う、うん」
お嬢様は私の右手をとってくれたのだ。
私はお嬢様をエスコートして、馬車に乗り込んで街に向かう。
街に到着したらお嬢様の買い物に付き合う。
その買い物の途中でお嬢様がどれがいいとか聞いてきたが、あれは何だっただろう?
無事に買い物が終え、屋敷に帰ろうとしていると花束を持った知らない男が私達の前にやってきたのだ。
「少しお待ち下さい。私は隣の領地の男爵家の次男です。私はバースナ嬢に」
お嬢様はその男が言い切る前に立ち去ろうとし、私の手を掴んできたのだ。
「ク、クルス。い、行こ」
「お待ち下さい、バースナ嬢」
そう言い、男はお嬢様の腕を無理矢理握ろうとしたのだ。
私はお嬢様に伸ばした腕を掴む。
「お嬢様に触れないで頂きますか?」
私は殺気を込めた視線を男に向ける。
殺気を込められた視線を向けられた男は冷や汗をかきながら、首を縦に振っている。
男の手を離してから、私はお嬢様をエスコートして馬車に乗り込む。
「あ、ありがとう。ク、クルス」
「私は当然のことをしただけです。お嬢様、あの者は」
お嬢様は黙って頷いてくれる。
やっぱりか。
あの男はお嬢様の婿の座を狙っていたのか。
お嬢様は御館様の唯一の子供でシルクの事業という莫大な資産があるからああやってくる者もいる。
御館様はそのことで頭を抱えていたことも記憶に新しい。
だから、私は。
「お嬢様」
お嬢様は私の方を向いてくれる。
「私はただの奴隷ですが、ここに誓います。何があってもあのような者達から守りましょう」
「クルス。本当にありがとう」
そう言い、お嬢様は嬉しそうに微笑んでくれたのだ。
奴隷の身分なのに私はそんなお嬢様の微笑みに見惚れてしまう。
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