上 下
5 / 65

第五話 蚕

しおりを挟む

 奴隷として過ごして1年が経つ。

 私も十一歳になっている。

 最近になって気が付いたが、この家はあまりお金が無い。

 私が料理が出来ると知ったら、雇っていた料理人を解雇し、私に朝食と夕食をつくることになったのだ。

 最近は料理と掃除と狩猟をしている。

 だから、結構忙しい。

 まぁ、忙しい方が暇をしないから有り難いからな。

 それとお嬢様とは何度か会ってが挨拶を交わすだけだ。

 本当に会話は無い。

 そんなことを思いながら、私は1番手に馴染む拾った斧を持って、森に来ている。

 設置した罠を確認するためだ。

 今日は罠に何も掛かって無かったな。

 だから仕掛け直しをしてから、屋敷に帰る。

 屋敷に帰っていると何かの木の葉っぱを食べている芋虫を見つけたのだ。

 その芋虫は真っ白な色をしている。

 この芋虫見たことがあるな。

 そんなことを思いながら、よくよく観察してみると正体が分かる。

 この芋虫は蚕か。

 まさかこの世界で見ることになるとは。

 そう言えば、蚕がつくる繭から出来る糸はシルクの原材料だったはず。

 もし、蚕の養殖が出来れば、金銭的な問題は解決出来るかもしれないな。

 そんなことを思いながら、上を見上げてみると本で見たことがある蚕の餌となる桑の葉に似た葉がよく見えたのだ。

 そのまま周りを見渡して見ると桑の木に似た木が生えている。
 
 そして、いくつかの葉にも蚕に似た虫がいたのだ。

 この辺に自生していて、蚕もいる。

 なら、可能か。

 私は蚕と桑の葉を持ち帰り、養殖は始める。

 本や博物館でしか見たことが無かった為、色々な失敗をしてしまったが、何とか安定して蚕を繭まで養殖することに成功し、安心することが出来たのだ。

 安心した束の間、次は繭を糸にするまで道具の作成に様々な難関にぶつかる。

 シルクが形に出来たのは蚕を見つけてから半年が経った時だった。

 やっと御館様に報告が出来る。

 掃除を終えた私は完成したシルクを持って、執務室に向かう。

 執務室に入ってからシルクを御館様に見せる。

 シルクを見た御館様は驚きの表情を浮かべていたのだ。
 
 「ク、クルス。こ、このシルクはどうしたんだ?」

 御館様は驚きのあまり冷や汗をかいている。

 「御館様。これは領地内で見つけた物から生産したので、盗んだ訳では無いですよ」

 「そ、それは良かったが、生産したのか?」

 「はい」

 「どうやってだ?」

 私はシルクを生産した方法を御館様に説明していく。

 「にわかに信じがたいが、ここに現物があるから信じるしかないのか。それにしてもクルスはいいのか?」

 「何がですか?」

 「これを見つけたのはクルス自体だ。もしこのシルクを売れば奴隷から解放することも出来るだぞ。いや、私達よりも金持ちになることを」

 「御館様。私はこの家の奴隷です。見つけたのは報告するのは当然ことですよ」

 私の言葉を聞いた御館様は驚いた表情を浮かべた後、嬉しそうな表情を浮かべていたのだ。

 「本当にクルスは」

 その後、私はシルクを作るに必要な全てを御館様に渡す。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

惣菜パン無双 〜固いパンしかない異世界で美味しいパンを作りたい〜

甲殻類パエリア
ファンタジー
 どこにでもいる普通のサラリーマンだった深海玲司は仕事帰りに雷に打たれて命を落とし、異世界に転生してしまう。  秀でた能力もなく前世と同じ平凡な男、「レイ」としてのんびり生きるつもりが、彼には一つだけ我慢ならないことがあった。  ——パンである。  異世界のパンは固くて味気のない、スープに浸さなければ食べられないものばかりで、それを主食として食べなければならない生活にうんざりしていた。  というのも、レイの前世は平凡ながら無類のパン好きだったのである。パン好きと言っても高級なパンを買って食べるわけではなく、さまざまな「菓子パン」や「惣菜パン」を自ら作り上げ、一人ひっそりとそれを食べることが至上の喜びだったのである。  そんな前世を持つレイが固くて味気ないパンしかない世界に耐えられるはずもなく、美味しいパンを求めて生まれ育った村から旅立つことに——。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

孤児による孤児のための孤児院経営!!! 異世界に転生したけど能力がわかりませんでした

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はフィル 異世界に転生できたんだけど何も能力がないと思っていて7歳まで路上で暮らしてた なぜか両親の記憶がなくて何とか生きてきたけど、とうとう能力についてわかることになった 孤児として暮らしていたため孤児の苦しみがわかったので孤児院を作ることから始めます さあ、チートの時間だ

【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー 不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました 今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います ーーーー 間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です 読んでいただけると嬉しいです 23話で一時終了となります

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

めんどくさがり屋の異世界転生〜自由に生きる〜

ゆずゆ
ファンタジー
※ 話の前半を間違えて消してしまいました 誠に申し訳ございません。 —————————————————   前世100歳にして幸せに生涯を遂げた女性がいた。 名前は山梨 花。 他人に話したことはなかったが、もし亡くなったら剣と魔法の世界に転生したいなと夢見ていた。もちろん前世の記憶持ちのままで。 動くがめんどくさい時は、魔法で移動したいなとか、 転移魔法とか使えたらもっと寝れるのに、 休みの前の日に時間止めたいなと考えていた。 それは物心ついた時から生涯を終えるまで。 このお話はめんどくさがり屋で夢見がちな女性が夢の異世界転生をして生きていくお話。 ————————————————— 最後まで読んでくださりありがとうございました!!  

処理中です...