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第五話 蚕
しおりを挟む奴隷として過ごして1年が経つ。
私も十一歳になっている。
最近になって気が付いたが、この家はあまりお金が無い。
私が料理が出来ると知ったら、雇っていた料理人を解雇し、私に朝食と夕食をつくることになったのだ。
最近は料理と掃除と狩猟をしている。
だから、結構忙しい。
まぁ、忙しい方が暇をしないから有り難いからな。
それとお嬢様とは何度か会ってが挨拶を交わすだけだ。
本当に会話は無い。
そんなことを思いながら、私は1番手に馴染む拾った斧を持って、森に来ている。
設置した罠を確認するためだ。
今日は罠に何も掛かって無かったな。
だから仕掛け直しをしてから、屋敷に帰る。
屋敷に帰っていると何かの木の葉っぱを食べている芋虫を見つけたのだ。
その芋虫は真っ白な色をしている。
この芋虫見たことがあるな。
そんなことを思いながら、よくよく観察してみると正体が分かる。
この芋虫は蚕か。
まさかこの世界で見ることになるとは。
そう言えば、蚕がつくる繭から出来る糸はシルクの原材料だったはず。
もし、蚕の養殖が出来れば、金銭的な問題は解決出来るかもしれないな。
そんなことを思いながら、上を見上げてみると本で見たことがある蚕の餌となる桑の葉に似た葉がよく見えたのだ。
そのまま周りを見渡して見ると桑の木に似た木が生えている。
そして、いくつかの葉にも蚕に似た虫がいたのだ。
この辺に自生していて、蚕もいる。
なら、可能か。
私は蚕と桑の葉を持ち帰り、養殖は始める。
本や博物館でしか見たことが無かった為、色々な失敗をしてしまったが、何とか安定して蚕を繭まで養殖することに成功し、安心することが出来たのだ。
安心した束の間、次は繭を糸にするまで道具の作成に様々な難関にぶつかる。
シルクが形に出来たのは蚕を見つけてから半年が経った時だった。
やっと御館様に報告が出来る。
掃除を終えた私は完成したシルクを持って、執務室に向かう。
執務室に入ってからシルクを御館様に見せる。
シルクを見た御館様は驚きの表情を浮かべていたのだ。
「ク、クルス。こ、このシルクはどうしたんだ?」
御館様は驚きのあまり冷や汗をかいている。
「御館様。これは領地内で見つけた物から生産したので、盗んだ訳では無いですよ」
「そ、それは良かったが、生産したのか?」
「はい」
「どうやってだ?」
私はシルクを生産した方法を御館様に説明していく。
「にわかに信じがたいが、ここに現物があるから信じるしかないのか。それにしてもクルスはいいのか?」
「何がですか?」
「これを見つけたのはクルス自体だ。もしこのシルクを売れば奴隷から解放することも出来るだぞ。いや、私達よりも金持ちになることを」
「御館様。私はこの家の奴隷です。見つけたのは報告するのは当然ことですよ」
私の言葉を聞いた御館様は驚いた表情を浮かべた後、嬉しそうな表情を浮かべていたのだ。
「本当にクルスは」
その後、私はシルクを作るに必要な全てを御館様に渡す。
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