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第四話 食料
しおりを挟む修繕が終わってから1ヶ月が経って、あることに気が付く。
全然肉料理が出てこないことに。
スープに小さい肉が入っていることもあるが、そのスープすらも1週間に1度くらいだ。
少し聞いてみるか。
いや、許可を取る方がいいな。
狩猟の許可を。
そう思った私は許可を取る為に御館様のところに向かう。
「御館様。狩猟の許可を頂きませんか?」
「狩猟の許可?」
「はい、そうで御座います」
「クルス。狩猟が出来るのか?」
「罠での狩猟が主になりますけど、出来ます」
「なら、許可を出そう。今は全てが高いから少しだけの肉でも有り難い」
「分かりました」
許可を貰った私は掃除をしてから、街に出掛ける。
街で罠に必要な材料とナイフを購入する。
後は森に行ってから集める。
私は街で購入した物を持って、森に向かう。
罠を設置する場所をさがしながら森の中を歩いていると斧が落ちていたのだ。
なんの変哲もないただの斧だ。
この斧はなんだ?
何気なく、その斧を握ってみると不思議と手に馴染む。
この森には殆ど魔物はいないが、いるにはいる。
だから、貰っておくか。
私は斧を右手に持ち、罠を設置する場所を探すのを再開する。
探していると良さそうな湖を見つけたのだ。
水も綺麗で、周りにも草食動物達の餌が豊富にある。
ここから少し離れたところに罠を設置しよう。
罠に必要な木は近くの木から取り、ナイフで加工していく。
そして、ナイフで加工した木を街で購入した物と組み合わせ、兎用と鹿用の罠をいくつか設置したのだ。
今日はここまでだな。
時間を置かないと罠には掛からない。
また明日来るか。
翌日になり、私は罠を仕掛けた場所に向かっていると何かがジタバタしている音が聞こえてくる。
私は思わず走ってしまう。
掛かったか。
私が仕掛けた兎用の罠には兎が掛かっていたのだ。
良かった。
私は罠に掛かった兎の前まで移動する。
兎は怯えているようだったが、逃すのは無理だ。
私はナイフを右手を持ち、兎の首に当てる。
すまない、けしてその犠牲は無駄にはしない。
そして、そのまま兎の首を切り裂く。
ナイフによって切り裂かれた兎の首からは血が流れていく。
兎は血を流しながら瞳から光を失う。
血抜きと内臓はここでやっておこう。
黙祷を捧げてから内臓を抜いて、兎を罠から出す。
御館様にいい報告が出来るな。
私は兎を持って、屋敷に帰る。
屋敷に到着したら、直ぐに御館様に報告したのだ。
御館様は凄く喜んでくれた。
だが、悩んでいた。
どう料理しようかと。
「御館様。簡単な料理でしたら出来ますよ」
「本当に優秀だな、クルスは。修繕も出来て、料理も出来るなんて」
そう呟いた後、御館様は私の方を向いてくる。
「では、今日の夕食を作ってくれ」
「分かりました」
御館様は頷いた後、何処かに行ってしまう。
さて、料理を始めよう。
兎の肉は臭いから煮込むか。
他はパンと野菜のスープだな。
兎の肉を煮込んでいる間に他は完成させよう。
あ、そうだ。
野菜のスープでいらない場所は兎の肉を煮込んでいる鍋に入れて少しでも臭みを抜こう。
全ての料理が完成したら、御館様に報告する。
御館様は直ぐにやってきて、全部の料理を味見をしてから満足そうな表情を浮かべていたのだ。
料理を盛り付けようとしたら、御館様に止められる。
「待ってくれ。後もう1人来る」
もう1人?
そんなことを思っていると扉が少しだけ開き、見たことが、いや、御館様の面影を感じる少女の顔が見えたのだ。
転生する前の世界では見る機会が無い程の美少女だった。
緑色の髪を腰まで伸ばし、黄緑色の瞳をしていて、歳は私と同じくらい。
「お、お父様。そ、その人は誰?」
「リリ。彼の名前はクルス。我が家に仕える奴隷だ」
リリか。
多分、愛称だな。
ということは御館様の娘か。
「初めまして、お嬢様。私はこの家に仕えている奴隷のクルスと申します」
「ぼ、僕はリリアナ・バースナ。よ、よろしく」
挨拶を終えた後、私はキッチンを後にする。
まさか、御館様に御息女がいるなんてな。
それにしても何故1度も会ったことが無いんだ?
最近は外にいることは多かったが、最初の方はずっと屋敷の中を掃除していた。
なんでだろうな?
そんなことを思いながら、私は小屋に帰る。
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