魔王の側近はお暇を頂く

竹桜

文字の大きさ
上 下
15 / 17

第十五話 無自覚に寝取られた者達

しおりを挟む

 [勇者視点]

 俺は勇者、いや、元勇者だ。

 魔王を倒すために勇者として、動いていたが破れてしまった。 

 戦争によって捕虜になったが、無事に解放された。

 解放された後、私は直ぐに故郷に戻った。

 私が好意を寄せている病弱な幼馴染みがいる。

 名前はリーフという。

 そんなリーフの元に向かったのだが、久しぶりに帰った故郷には姿は無かった。

 私は直ぐに問い詰めた。

 リーフに関係する者達を。

 問い詰めた結果、私が旅に出て時に迫害し、最後には転移魔法で知らない場所まで飛ばしたみたいだ。

 しかもそれはリーフの両親すらも含まれていた。

 私は怒りに体を支配されそうになったが、それを何とか抑えた。

 ここで、怒りに身を任せたとしても意味はない。

 そして、俺はリーフを探すために故郷を出て、旅に出ることにした。

 宛なんか無い。

 ただ、リーフを探す旅に。

 それから何ヶ月経ったか分からないが、突然空に映像が浮かんだのだ。

 それは調整者と名乗った。

 その映像の後に魔族とまた調整者と現れたのだ。

 英霊と名乗った魔族を見た瞬間、胸の奥から熱さを感じたのだ。

 その胸の奥の熱さを収まると誰のか分からない記憶が流れ込んできたのだ。

 その記憶の中には聞き覚えがある単語があった。

 勇者と古代魔法語というものだったのだ。

 な、なんだこれは?

 そもそも誰の記憶だ。

 そんなことを疑問に思っていると頭の中に声が聞こえてきた。

 「まさか、あいつ、いや、彼奴等まで転生していたなんて」

 聞こえてきた声は俺の声に似ていたが、違う。

 「だ、誰だ、お前は?」

 「俺はお前の中にいる前世の魂だ。一応、あの英霊と名乗った者と同じパーティーに所属していた剣士だ」

 り、理解出来ない。

 前世の魂だと?

 そんなことを疑問に思っていると英霊が調整者を倒し、映像が消え去っていたのだ。 

 「ここまでの記憶を勝手に読ませて貰ったが、お前もか」

 「お前もか?どうゆうことだ?」

 「寝取られだよな。幼馴染みを」

 「寝取られだと。それに幼馴染みだと」

 「そうだ。俺もあいつに幼馴染みを寝取られた」

 頭の中の声は1度声を止めたのだ。

 「それも無自覚にな。だから、あいつを怨めないのだ」

 そうか。

 俺、いや、俺達は無自覚に幼馴染みを寝盗られたのだ。

 あの勇者、いや、英霊に。

 だが、それに反抗することは出来ない。

 あの英霊よりも私はリーフを幸せにすることが出来ないと確信出来てしまったからだ。

 なら、祈るしかない。

 リーフの幸せを。

 俺はリーフを守れなかった男だ。

 守れた者に任せる。

 俺の初恋の相手を。

 祈った私は旅の目的を変わった、いや、無くなったのだ。

 そんな旅を続けていくと私は勇者パーティーの武闘家と再会した。

 そこから仲を深め、結婚することになった。

 結婚式前日にまた頭の中に声が聞こえたのだ。

 「幸せになれよ。俺の魂を持つ者よ」
 
 「ああ。俺よ」

 前世の魂は幸せそうにフッと笑いながら、頭の中から掻き消えたのだ。

 それを確認した私は窓から夜空を見つめた。

 その後、私は武闘家と共に幸せな家庭を築き、人生を幸福に生きたのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

テンプレ通りじゃないかもしれないけれど悪役令嬢ものを書いてみた

希臘楽園
ファンタジー
思いついた構想を軽く書いてみました。 悪役令嬢がライバルとなる娘たちを事前に潰してしまう話です。 キャラの名前は第1作・第2作から転用しました。 メモ書き的な粗い内容ですが、良かったら読んでみて下さい。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

処理中です...