9 / 17
第九話 実家に
しおりを挟む[カリーサ視点]
私の名前はカリーサ。
低級魔族のウィッチだけど、才能があったお陰で私は魔王様の側近でもあるグリークス様の秘書官。
秘書官は普通上級魔族だけがなれる役職なので、周りからはただ運に恵まれだけど言われるいる。
それは私も思う。
それでもグリークス様は優しいからそれは私の実力だと言ってくれる。
そ、そんなグリークス様に私がこんな気持ちを抱くのも仕方なかっただろう。
だけど、ある日グリークス様は突然召喚された人間を義妹にしたのだ。
それからグリークス様は仕事を程々にし、定時で上がり、今まで殆どとってこなかった有給を使い始めたのだ。
それだけで分かってしまうのだ。
グリークス様が義妹の人間を大切にしていると。
わ、私もグリークス様の隣に居たら、あんな風にしてもらえるのかな?
だ、駄目駄目。
そんなことを考えては。
私は下級魔族で、グリークス様は上級魔族。
種族の差が凄すぎるから。
そ、それでも心の何処かで思ってしまう。
もしかしてと。
そんなことを考えて過ごしていたら、実家から手紙が来たのだ。
少し用があるので帰省して欲しいと。
それに直ぐ返答しようと思ったが、人間達との国との戦争が始まってしまったので、返答は遅くなってしまった。
全ての処理を終えた後、私はグリークス様に有給申請書を提出し、実家に帰省した。
帰省した実家は特に変わりは無かった。
変化したのは少し裕福になったぐらいだった。
多分、私の仕送りのお陰だと思う。
近況報告をしてから、私に何の用か聞いてみた。
返ってきた返答は縁談だった。
縁談か…
嫌かな。
まだグリークス様の隣で働いていたいから。
それでも詳しく聞いてみたら、もう話が進んでいるみたい。
だったら、一回顔合わせしてから、仕事を理由に断ろう。
その後、私は顔合わせの準備を始めた。
そして、当日になった。
私の縁談相手はウィッチでも上の立場にいる者だった。
後は若い者達と言い、私と縁談相手の家族は部屋から退室しまった。
退室すると同時に私の右手に何かがつけられた。
右手の方に視線を向けた私は絶望するしか無かった。
つけられたのは魔力封じの手錠だった。
私は魔法がなければ、弱い。
だから、簡単に押し倒されてしまう。
目を見て、わかってしまった。
この男は私をこの場で犯すつもりだと。
私が必死に抵抗している時に見えてしまった。
父親が私を犯そうとしている男に似ている男から大金を受け取っているところを。
そして、その近くには私の家族がいることに。
そこで察してしまった。
私は家族に売られたと。
嫌だ。
嫌だ、嫌だ。
「た、助けて、僕を。グリークス様」
私、ううん、僕は無理だと分かりながらもこの場にいないグリークス様に助けを求めてしまった。
そして、涙が止まらない。
男は痺れを切らしたのか。
右手を上に振り上げ、私の顔に向かって、振り下ろしてきたのだ。
それを止める術がない私はただ目を閉じることしか出来なかった。
いつまで経っても痛みが来ることはなく、かわりに大きな音が聞こえた。
そして、僕を押さえつけていた力が無くなり、何かが頬を流れた涙が拭くような感覚だけを感じたのだ。
不思議に思い、目を開けてみると驚きと嬉しさで固まってしまった。
だって、僕の目の前には助けを求めたグリークス様がいたからだ。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説


完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる