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第五十六話 告白

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 屑共の後処理を終わってから日が経ち、王立学園卒業が1週間が迫っていた。

 今日は王立学園卒業の前の最後の休日だ。

 そして今私はメスリーとレストランで夕食を食べている。

 来ているレストランは王都の中でも1番に高いところだ。

 しかも個室を予約しているので、2人きりで楽しく会話を楽しんでいる。

 ちなみに、セーリはナスーリ子爵家の屋敷で待って貰っている。

 今日は私の前世を含めても1番緊張する1日になるだろう。

 私は懐に入れた物を確認した。

 しっかりと私の懐にあった。

 これがないと失敗してしまう。

 私が懐を確認している姿にメスリーは不思議に思っていた。

 「どうしたの?レーク」

 「何でも無いよ。それよりもこの後、少しだけ出掛けないか?」

 「僕は大丈夫だけど、お父様がなんて言うか」

 「それは大丈夫。ナスーリ子爵には許可を取っているよ」

 「そうなんだ、じゃあ行くよ。あ、でも、何処に行くの?」

 「それは行ってからのお楽しみだ」

 私がそう言うのと同時にコースの最後のデザートが運ばれてきた。

 運ばれてきたデザートは様々な果物が乗ったフルーツタルトだった。

 私達はそれを食べてから、私がお金を払ってレストランを出た。
 
 「メスリー。手を」

 メスリーの方に左手を出した。

 「うん」

 メスリーは嬉しそうな表情を浮かべながら、差し出した右手を左手で握ってくれた。

 私は魔法袋の中から、使い捨ての転移石を出した。

 「転移石?そんな遠くに行くの?」

 「それなりに遠くだよ」

 質問に答えてから、転移石を砕いた。

 すると、私達を光が包んだ。

 光が消えると、私達は森の中にいた。

 到着した森の夜空には綺麗な満月が浮かび、凄く澄んだ湖がある。

 そして澄んだ湖は綺麗な満月を映し出し、幻想的な風景を作り出している。

 何よりも美しい。

 「綺麗」

 メスリーは私と手を繋ぎながら、呟いていた。

 いや、メスリーはその景色に見惚れていた。

 「メスリー」

 「うん?どうしたの?レーク」

 メスリーは微笑みながら、私の方を向いた。

 私はメスリーから手を離し、メスリーの前で片膝をついた。

 「な、何してるの?レーク」

 私はその問いには答えず、メスリーの目を見た。

 「メスリー。私はあの時、あのダンジョンの中で出会えて本当に良かったと思っている」

 私は懐に手を入れた。

 「だから、これを渡したい。私からの覚悟の証を」

 私は懐から小さい箱を取り出した。

 そして、その小さい箱を開けると、青色の宝石が埋め込まれている指輪が入っていた。

 メスリーがその指輪を見ると、目に涙を溜め、口元を押さえていた。

 この世界では結婚するときに相手の瞳の色の宝石が埋め込まれた指輪を贈るのが一般的だ。

 私は涙を溜めているメスリーの目を真っ直ぐ見た。

 「メスリー。これからは、メスリー・ベアードとして生きて欲しい。セーリの義姉としても」

 私は青色の宝石が埋め込まれた指輪が入った小さい箱をメスリーの方に差し出した。

 メスリーは流れ始めた涙を手で拭き、私の目を真っ直ぐに見てきた。

 メスリーは涙を拭いてが、涙は流れ続けている。

 「うん、うん、僕は、メスリー・ベアードになるよ。セーリの義姉になるよ。レークの妻になるよ。だ、だから、受け取るね」

 メスリーは指輪に手を置いてくれた。

 「ありがとう、メスリー」

 私は立ち上がった。

 私が立ち上がると、メスリーは少し顔を赤くしながら、左手を差し出してきた。

 私はメスリーの左手の薬指に指輪を嵌めた。

 メスリーは嬉しそうな表情を浮かべながら、左手の薬指に嵌められた結婚指輪を眺めていた。

 そんなメスリーを見ていると、メスリーは私に背を向け、澄んだ湖の方を向いた。

 メスリーの金色の髪は満月に照らされ、綺麗だと思った。

 綺麗だと思っていると、メスリーは満面の笑みを浮かべながら、私の方を向いてきた。

 「これからも宜しくね、レーク」

 満月に照らせれた満面の笑みは幻想的な風景よりも美しかった。

 
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