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第三十五話 義妹に

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 それなりに日が経った。

 痩せ細っていたセーリは今では走れるぐらいまで回復している。

 だが、セーリは人を簡単に信用しない。

 この屋敷の中で、信用しているのは私と代官と身の回りの世話をしている侍女とよく話す庭師ぐらいだ。

 代官に言われ、あれから少し考えたが、これが1番良い方法だ。

 私にもセーリにもだ。

 私はセーリを応接室に呼び出した。

 「私に用とはなんですか?レークさん」
 
 「これにサインをしてほしいんだ」

 私が机に出した紙を見て、驚きの表情を浮べた。

 「レ、レークさん。これは本気なのですか?」

 「ああ、勿論本気だ」

 私が机に出した紙はセーリを義妹にするために必要な書類の一部だ。

 昨日の内にセーリのサイン以外の場所は埋めておいた。

 後はセーリのサインだけだ。

 セーリは私の目を見てきた。

 「こ、こんな役立たずの私が、レークさんの義妹になってもいいんですか?」

 「ああ」

 「本当にありがとうございます、レークさん」

 セーリはペンを持ち、書類にサインをした。

 書類から目を離し、私の方を見て来た。

 「これからよろしくお願いします、レークさん、ううん、お兄様」

 お、お兄様か。

 悪い気がしないな。

 「改めて宜しく頼む、セーリ」

 「はい」

 セーリは本当に嬉しそうに笑顔を浮べた。

 その後、使用人達を1箇所に集め、セーリが義妹になったことを伝えた。

 その時にセーリの身の回りの世話をしていた侍女をセーリの専属侍女に指名した。

 義妹となったセーリは客室からこの屋敷で2番目にいい部屋に移動させた。

 それから1日が経った。
 
 書類の処理を一旦やめ、気分展開のために庭を散歩していると足音が聞こえてきた。

 走る音が。

 その足音はどんどん私の方に近づいてきた。

 走ってきているのはセーリだった。

 「お、お兄様」

 そのままセーリは私の後ろに隠れてしまった。

 い、一体どうしたんだ?

 少ししてやってきたのは、メスリーだった。

 「来ていたのか?メスリー」

 「う、うん。急にお兄様が3日くらい外に行くと聞いたから、驚かすために何も伝えずに来たんだ」

 「それで、レーク。その子は?」

 「ああ、この子は私の義妹になったセーリだ」

 「セーリ。挨拶を」

 セーリはメスリーを警戒しながら、私の後ろから出てきた。

 「は、初めまして、わ、私はセーリ・ベアードと言います」

 「初めまして、僕はレークの婚約者のメスリー・ナスーリだよ。宜しくね」

 メスリーが微笑みながら、セーリに手を伸ばしたが、私の後ろに隠れてしまった。

 「メスリー。セーリについては色々と説明するから、東屋に向かおう」

 「えっ、あ、うん」
 
 私はメスリーを連れて、東屋に向かった。

 移動している間ずっとセーリは私に隠れて、メスリーに姿を見せようとしなかった。

 メスリーはそれを少し残念そうにしていた。

 東屋に到着したら、使用人に3人分のお茶を頼み、セーリがここに来た経緯を説明した。

 「そんなことが。なら納得だよ。レークに隠れてしまうのは」

 私はセーリの方を向いて、セーリの頭を撫でながら優しい表情を浮べた。

 「セーリ。人を信頼するのは難しいと思うが、メスリーは充分に信頼出来る。私が保証する。だから、一歩踏み出してくれ」

 セーリは私の方を向き、頷いた。

 セーリは私から離れ、メスリーに近付いた。

 そしてメスリーの方に手を差し出した。

 メスリーは少しでもセーリが安心出来るように微笑みながら、差し出された手を握った。

 手を握ったまま、セーリはメスリーの目を見た。

 「メ、メスリーお姉様と呼んでも良いですか?」

 「いいよ。僕、前々から妹が欲しかったんだ」

 メスリーは嬉しさのあまりセーリに抱き着いてしまった。

 セーリは驚いていたが、直ぐに抱き締め返した。

 本当に良かった。

 私の大切な者達が仲良くなって。

 私はそんな幸せな光景を見ながら、兄弟のことを思っていた。

 兄弟。

 紹介する大切な人がもう一人増えたよ。

 会えることを心待ちにしている。

 「お兄様。どうしたんですか?」

 「どうしたの?レーク」

 メスリーとセーリは不思議な表情を浮べていた。

 「少し考えごとをしていただけだ」

 その後は3人で会話を楽しんだ。

 


 

 

 
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